第4話 クラスメイトとの戯れ
朝から思いきり泣いたことで少しだけ冷静になった私は、むしろ登校時間が遅れたことで、うっかり家の前で魁くんと鉢合わせすることがなくてよかったかな、なんて思えるくらいには落ち着きを取り戻していた。
それでも、何の気力も戻ってこないことに変わりはなかった。
昨日までとはこんなにも違うのに、でも、実際は教室に入ると、魁くんはいつも通りクラスの男子たちと話してるし、魔耶さんもオシャレトークに盛り上がっていて、何もかもがいつもと変わってなくて、それなのに私には何の色も感じられなくて、まるで私だけが変わってしまったみたいで……薄暗い世界で1人、また心細くなる。
「おっはよー!
突然背中に衝撃があって振り向くと、私に後ろから抱き着いているクラスメイトの
「ちょ、だからやめてよ。その呼び方」
前向きで元気で明るい彼女は、いつも私のことを『姫』と呼ぶ。何度やめてと言っても、聞いてくれない。
でも、今日に限ってはいつもと同じこのやり取りが少しだけ心地よく感じられて、ちょっぴり救われた気がした。
「ん?姫、ちょっと顔色悪くない?目元も若干赤いし……折角の可愛い顔が台無しだよ?」
そう言って私の顔を覗き込んできたのは美岬の親友である
「あー、私も姫みたいに美人で可愛く生まれたかったなー」
そうぼやく彼女を横目に、どうして私はこの2人と一緒にいるんだろうな、ってぼんやりと考える。
『可愛い、美人、か……』
この2人にそうやって毎日チヤホヤされるのも、多少煩わしくは思うけど、心の底から嫌だと思ってるわけじゃない。
自分ではよくわからないし、どうせお世辞だろうけど、私は美人でスタイルが良いらしい。
一応は、背中まで伸ばした髪の手入れとか、登校時は邪魔にならないようにハーフアップにまとめて、身だしなみには時間をかけて努力してる自覚はある。
でもそれも、小さい頃に魁くんが「髪の長い子が好き」って言ってたからで……
彼に選んでもらえないのなら、綺麗とか可愛いとかどうでも良くて、何もかもがくだらなく思えてくる。
「はぁ……」
あっ、と思ったときには、既にため息が漏れていた。
「えっ!?姫、物憂げにため息なんてついちゃって。……あ、もしかしてー、失恋でもした!って感じ?」
デリカシーの欠片もない美岬さんの発言に対し、智香子さんが肘でつついて注意して、それから2人でクスクス笑ってる。
そんな彼女たちを見て、何となく自分だけがこのノリについていけてないという疎外感を覚える。
「……え、まさか、ず、図星、だった……?」
しかし返事をしない私を見て、徐々に彼女たちの顔から血の気が引いていく。
「や、その、ごめんっ!私たち、その、ほんとに悪気がなくってさ!軽い冗談のつもりで……」
そう言って申し訳無さを表現しつつ、謝罪してくる2人。
―――でも、数秒後にはまたいつものような元気さを取り戻しているんだろうな、なんて考えて、でもそこが彼女たちの長所でもあるし、実際私は怒っているわけでもない。
そう。だから、いつものことってだけ。
「でも、信じられないなあ……この間、
「ねー」
そのはずだったけど……
……え……?
夏谷先輩って、誰……?
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