第53話 投げられた賽

 俺たちは、いつものように40階を越え探査をする。

 命令されたのは、鬼の捕獲。


 先日は逃げられたが、今日こそはつかまえる。

 暴徒用にネットを撃ち出す銃だが、先日と違い。今度はワイヤーで編まれている。

 捕獲ということだから、足は撃って良いが、一応テーザー銃やゴム弾装備の銃も用意してきた。


「前回は惜しかったな。ああ。爪で、ロープを切るとはな」

「実物を実際に見て。かわいかったのは、覚えているが。顔が思い出せねえ」

「ああ俺もだ」

「その場なら、分かるし。ものは、生きてりゃ良いんだったよな?」

「ああ。おまえの考えていることなら分かる。精神的に折るなら一番だ。やろうぜ」


 男達は、願望で股間を膨らませながら、探査を進める。


 見つけた? いや?


「あれは? 違うよな」

「ああ。だが、一介のモンスターとも違う」

「とりあえず、捕獲してみよう。結構美人さんだ」

 Mors-01の持つ。死の範囲は半径10m。


 見かけても、その範囲に入らなければ、襲いも何もしない。


 絶えずMors-01の体周辺に漂い。纏う毒も有効範囲は1m無いだろう。

 ただし、待機状態であればだ。


 一度攻撃を受ければ、危険範囲は一気に拡大し、最大半径20mまでが範囲に変わる。


 当然。初見の彼らは、そんなことを知らない。


 スコープは、右足を狙い。

 そして、弾が発射される。

 だが、彼女は物理耐性のシールドを装備。


 弾ははじかれ、同時に、彼女のスイッチが切り替わる。

「アニすんだよ。こいつらぁ」

 そう叫びながら、精神波が展開される。


 一気に、攻撃対象たちに詰め寄り。

 殴る蹴るを繰り返す。

 精神波は、今回彼らに恐怖を付与し、身体的すくみを与えたようだ。


 ある程度、ボコった後。満足をしたのか、彼女は離れる。

「どこかに、あたいより強い。王子様はいないかなあ」

 そう言いながら、彼女は、徘徊に戻る。


 精神攻撃には、いくつかパターンがあり、今回彼らが見たのは地面から、腐った手が生えてきて足首がつかまれ、逃げられないパターンだったようだ。


 ほかにも、逃げようとしたら、周囲がトゲだらけとか。

 崖の上に立っていたとか。

 知り合いや、殺したモンスターがすがりついてくるとか。


 これは、精神波が脳に与える、実験データの収集も兼ねている。

 無論。恐怖シリーズだけでは無く、18禁シリーズもある。


 複数が相手の場合。

 敵同士。目の前に理想の相手が現れ、誘われる。

 そんな夢を見て。

 行為が絶好調の時に、夢から覚める。

 すると理想の相手は、お友達に戻る。


 そんな些細なものだが、本人達は現状を把握した後。真っ青になる。

 本人。そして、相手にとって。

 ものすごく、精神的ダメージが大きいもの。


「男同士? 女? あたしは知らねえよ。そんなこと。敵は等しく敵だ」

 と言うのが、Mors-01の言い分だ。


 そしてどんな敵も、体を冒す毒により、30分以内に死ぬことになる。


 そしてそれは、evo-01を捕まえようとした、いくつかの国で発生し、その国々では、上位の駆除者は消滅し、40階へは到達できなくなった。



 そのタイミングで、いくつかの国から発表された、信じられない報告。

 45階に到達できれば、安全な居住空間がある。

 淡水と海水、小高い山と平野。

 自生する、農作物や果物。

 当然、池や川。海にはよく見る魚などが居る。


 ただし、43階と44階には新型の、モンスターが追加された。

 進化した人類じゃ無ければ、越えるのは難しいだろうと、アメリカがコメントを出していた。


 43階と44階ともに追加されたのは、空と陸のモンスター。

 43階。ワイバーン。個体により5m~10m。後ろ足は鳥のような鍵爪を持ったものと、ブラッドベア 3m~5m。

 44階は、まあ上位種ドラゴンぽい。

 空飛ぶ方は、5m~10mで、4本足。トカゲのような足で、微妙に色が違い魔法を放つ。

 飛ばない方は少し小さく7~8m。見た目はトカゲっぽい。羽は少し退化? 長い尻尾で攻撃と、やはり魔法を使う。

 尻尾の先端は、音速を軽く超えているらしく、進化した人類じゃ無いと、攻撃が見えないらしい。


 そして、噂がこそっと流れる。

 正式な呼び名は不明だが、カエンタケ(Trichoderma cornu-damae)の鬼と呼ばれる鬼の噂が流れた。

 目撃がどこかは不明だが、SNSを通じて姿が流れたらしい。

 写真では無くイラストだが、『otoko, oujisama-doko』とつぶやき徘徊するらしく、名前の由来通り、毒があるから近付いてはいけないと、注意が流れた。

 近くに行かなければ、襲ってこないようだ。


 当然。情報はいつか知るもの。

「シンさん。これは何か違う」

 と佳代が泣いていた。


 確かに、evo-01の時に、私のタイプも出してと、言っていたのは皆聞いている。

「それに、確かに昔。王子様と思っていたけれど、あくまでも、心の中の事。私の心の声を表に出さないで」

 ずいぶんダメージを食らったようだ。


 その横で、凪だけが冷や汗を流していた。


「あっ。シンに電波の事。言うの忘れた」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る