第52話 賽は投げられた
「インパクトポイントの、算出はできたか?」
「はい。すでにできております。アメリカの外れが、ポイントとなっています」
「天罰だな。だが我が国とて、被害は受ける。対策を講じなければならない」
「はい。今海岸線並びに、内陸に段階的な防潮堤を建設しています。これにより、ある程度守れますが、南充市周辺。四川盆地(しせんぼんち)を中心に開発を行い。必要なら遷都を行います。一時避難用の船もご用意できております」
「仕方ない。だが、これで。アメリカの同盟連中は、死に絶える」
「はっ」
「我が国は、アメリカ自体が壁となってくれる。津波の影響はどうかしら?」
「ポイントは北アメリカ大陸西端。ほぼ、海水中に衝突孔(キャビティ)が形成されると考えられます。そのため津波の被害は、主に太平洋西側。キャビティの崩壊。クレーターへの海水の流入と流出があっても、ロッキー山脈とシエラネバダ山脈が防いでくれるでしょう。それに、シミュレーションした感じ、大陸棚縁辺部で砕波が起きるため、残念ながら。思ったより、津波の影響は少ないとも試算されております。ヴァン・ドーン・エフェクト(効果)と呼ばれておるようですな。ユーラシアに影響は思ったより出ないようでございます。残念だ。おっと失礼」
「そうなのね。では、冬の影響について対策を説明して」
「今稼働中が15基。計画中2基を、少し前倒しして稼働させます。原発での電力を利用し、屋内での、疑似太陽によるプラントを計画しております」
「植物と、家畜用マンションね」
「それと雑穀用プラントで、雑穀を促成栽培。エタノールを精製いたします。無論農業用プラントでの堆肥を除きですが。ほかのものも今検証中で、今回沈んでしまうジャパンからの贈り物として、無論。我が国のエージェントが勝手に頂きますが、水槽で栽培が行えるもので。藻から石油が採れるということでございます」
「まあ、数年我慢すれば良いだけ。どうせなら、ユーラシアの東端にでも落ちれば良かったのに」
「Yes, her majesty. The die is cast.」
ここは管理室側の、僕の部屋。いや、すでに僕たちの部屋。
「そう言えばさあ。テレビでやっていたけど、ダンジョン間って電波が通らないから不便だって言っていたよね。ここはどうして、通っているの?」
「不便だから、通して貰った」
「シンさんすごいね。何でもあり?」
「うん。大抵はね」
進化の方向性や、デザインは聞いてくれない。
一応、話は聞いて、くれるけどね。
「じゃあ、あの25階にも欲しい」
「生活するには、あった方が便利だけどね。じゃあ聞いてきてみるよ」
「一緒に行く」
「だめ。君達はこの部屋から出ないで。そういう約束だから」
頬を膨らませる美樹だが、その辺りはきっちりしておかないとだめだ。
実際、僕以外は、部屋から通路側へは出られない。
ペタペタと、白い通路を歩いて行く。
あれ? ちょっと見ない間に、部屋が増えている。
一つの部屋に、入ってみる。
許可がないところは、入れないから入れるなら問題ない。
だが、入るんじゃなかったかもしれない。
この生体モデルは、美樹だよな。
服も着せられず、ただ立っている。
完全クローンじゃないのは、額に生えた角で分かる。
これは、各ダンジョンへ配るためのevo-01モデルかな?
それにしては、数が多い。
「こんな所で、何をしているんだい?」
僕は、振り向きもせず答える。
「ああシン。部屋が増えていたから、気になって」
「好奇心の塊かい。さすがだね。すぐ気がつくとは」
「普段こんなストックを出さないだろう。どうしたんだ。この数」
「ああ実に。腹立たしい。僕の実験をじゃまする奴ら。君達の呼び名では国だったね。そんなのが幾つも出てね。そんな国から、evo-01を引き上げた」
「そうなんだ」
「ああ僕の、evo-01をつかまえ。分解しようとしてね。目的は進化する元。その体液の採取だろう」
「そんなことを? 普通に挑んで、40階に行けば。恩恵を得られるのに。それに確かある程度、レベルアップしないと、体が耐えられないのじゃなかったっけ?」
「そうだよ。だから、彼らがなにを考えているのか。僕には不明さ。だけど、結果的にじゃまをした。彼らはね」
そう言った後、珍しくシンが笑った。
「だからね、僕は彼らに。プレゼントを差し上げた。付いてきてくれ」
そう言うと、スタスタと奥へ行く。
すると珍しく奥に部屋がある。手術室もあるのか?
僕はそう思ったが、『ālea jacta est(アーレア・ヤクタ・エスト)』などという、室名が書かれていた。珍しい。
中へ入る。
中を見た瞬間。ちょっと引きつる。
あー。赤鬼だ。
だがこれ、本人が見たら泣くぞ。
「どうだい。Mors-01。あらゆる死を与えるもの。ガス。液体。精神波。そして、本体は物理耐性と魔法無効」
「良いけど。認識阻害と、日本では使わないでね」
「まあそうだね。余計なものを背負い込んでは面倒だ。だがまあ、目撃情報はでない。出会えば。逃れることは、できない」
見事な。鬼と化した、佳代が立っている。
evo-01の控えめな角とは違い、額から突き出た。大きな30cmは有る角。
耳の上にも15cmほどの角が出て、その3本で、精神的な攻撃波を出すようだ。
そして、爪や皮膚。すべてから、致死性の毒を分泌する。
それと、真っ赤な髪に会わせた、真っ赤なドレス。
シンにとって、佳代はこんなイメージだったのか? それとも初期のイメージが強くて、僕の心。深層にでも、あったイメージなのか?
そういえば、最初会ったとき、赤系の髪だったか?
だとすると、凪さんは。イメージは黒。
だが、氷の魔女という感じだろうか?
今は、はっちゃけて、単なるえっちな子だが。
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