第47話 すこし大事な話

「掌さんがこちら側へ来てくれて良かった。タイミング的にも良いタイミングだ」

 シンと名乗った鬼が、そう言いながら、歩いて行く。


 廊下の両脇には、部屋があり、プレートが掲げられているが、文字? いや記号か? よく分からない。


 その奥に、将の部屋と書かれたプレートがあった。


 いきなり、

「入るよ」

 と言って、入っていく。


 彼にはずいぶん、心を許しているんだな。

「ノックぐらいしてくれ」

 ああ違うのか。奥で将が怒っている。


 中へ入ると、先ほどの部屋。

 応接セットの、ソファーには女の子が3人座っている。


 私たちが入ると、立ち上がり頭を下げてきた。

 あっいや。私にか。

「初めまして、私、佳代です。あっ村井佳代です。よろしくお願いします」

 元気いっぱいに、挨拶をしてきた。なかなか、活発そうな子だ。


「次は私。川瀬美樹と言います。よろしくお願いします」

 そう言って頭を下げてくる。

 こちらも答え、

「将の父。鬼司掌です。よろしくお願いします」

 と返答する。


 次の子は、

「お父様。私は最近チームへ加入いたしました。水上凪と申します。お父様には、これから、将との関係を踏まえ。よろしくお願いいたします」

 そう言ってお辞儀をしてくる。

 思わず、将の方をみる。


 ううむ。微妙な顔をしているな。

 と思ったら、残り二人も手を上げる。

「わたしも」「おなじく」

 ああまあ。ちょっと後で、将と話が必要だな。

「よろしくお願いします」

 とだけ答える。


「さて、紹介は良いかな。掌さん。彼女たちは将の番だから」

「はっ? 3人とも?」

「当然だろう。将は僕の友人であり、希有な能力を持っている。番は多い方が良い」

「えっ。そうなのか?」


 思わず声に出したが、3人とも頷いている。

「そうなんだ」

 一人でも大変なのに、息子ながら将はすごいな。


「さてそんな、些細なことより、少し良くない状況になってきている」

「良くない?」

「ああ魔石が爆発するくらい。だがまあ、少し先だ。ダンジョン内は一層目でも別空間だし、まあ大丈夫。数千年から数万年すれば出られるさ」

「えっ、それってどういう」

 凪が反応し問いかける。美樹と佳代は首をひねっている。


「ひょっとして、隕石が来るのか?」

「計算上はね。少し前に、小惑星帯にちょっとした隕石が突っ込んだ。そこから出た軌道計算によると来るね。まあ300日程度は先だ。それもあって、進化計画を少し強引に前倒ししてね」


「こんな事、聞いて良いのか? 国家。いや世界的大問題じゃないか?」

 父さんが口に出す。

「先ほども言ったが、ここと地球は、空間的に直接的繋がっていない。地球表面に隕石が降ったって、振動すら来ないよ。安心してくれたまえ」

「だけど、地表。地球に居る人たちは?」

「あー。そうだね。能力や力。総合的に判断して、耐えられないのじゃないかな? きっと、人工衛星とか言われている物も消えるのじゃないかな。いや、静止軌道上3万6000km付近の物は場所によって残るかな」


「でも、望みがなくても、知らせてダンジョンへ入って貰えば、助かるんだろう」

「君達の言う国家は、もう動いているようだけどね。いくつかの国では、自分の力ではなく、周りを固めて40階以上へ人を送り込んでいる。当然evo-01は引き上げたけどね。後いくつかの国は、一生懸命。高い軌道へ資材を打ち上げている。宇宙空間へ居住可能な空間を作るようだ」


「25階のように、環境を創れるなら普通に暮らせるじゃないか。そうだよ。そうしてくれれば」

 思いつきで、シンに言ってみる。


「君達は今、80億人近い。それをすべてまかなうのは……。めんどうだ。すべてが有益でもないし。それでまあ、今、優れたもの40階以上へこられた人間に、ご褒美進化と能力を与えている」

「能力?」

「ああ危険察知と、魔力がないと苦しくなる力。必然として、優秀な者はダンジョンへこもる」


「全員を入れようと思えば、どうすればいいんだ?」

「簡単さ。君も分かっているだろう。ダンジョンを増やせば良い。だが管理のためには魔素つまり魔力の元が必要なのさ」

「その魔素は、どうすれば増やせるんだ?」

「そうだね。ダンジョン内で生物が死ねば増やせるね」

 そう言った時の、シンの表情が少しひっかかったが、嘘は言わないからそうなのだろう。多分別の手段があるはずだが、今は聞かないでおこう。


「だけど、大声で言っても信じてもらえないし、証拠が出せない以上。流布は犯罪だよね」

「すぐにどうという事はないでしょうけれど、一つ間違えれば暴動の種になるから、日本でも別件で捕まるかも。国家の安全保障上に関しては優先だから。偽札と同じで適当な理由で大挙して来るかもね」

 凪が、人差し指を顎に当てながら、うーんと言う感じで指摘してくる。


「だけど、すでに知っているところは知っているんだろう」

「そう秘匿しているというのが、ミソよね」

「そうか、そうだよな」


「適当に、知り合いには、ダンジョンへ入って貰うか」

 父さんが諦めたように言うと、みんなが頷く。


 僕はシンに頼んで、各(おのおの)の部屋を取り、居住スペースを広くして貰った。

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