第44話 変化。中と外
最近。世の中がおかしい。
テレビのみならず、様々なメディアが、人類に対して、新たなる分岐点が発生したと騒いでいる。
キーとなるのは、40階以上に現れる鬼。
特異点と呼ばれる鬼は、日本人的美人。
現れると、それを見たものは、生物的進化が起こる。
キャラクターとして、ダンジョン周辺でキーホルダーやまんじゅうが作られた。
おもしろいことに、顔をはっきりと見たという者達が、色々な所からの依頼に対して、モンタージュや似顔絵を描いたが、なぜか、猫になる。
そのため、キーホルダーやまんじゅうの意匠は、にゃんこの輪郭に、顔は『美人』と文字が書かれている。
この認識阻害は、僕がシンに頼んだ。
美樹が、外で活動できなくなるためだ。
逆に、佳代が私のタイプは? と言ったが、シンは鼻でわらい相手にしなかった。
僕は忘れていたが。当初。佳代は、僕のことを馬鹿にしていた。そのせいだろう。
気を付けないと、凪さんタイプが創られそうだ。
凪さんと言えば、小さな頃から美人で目立ち、優等生な振る舞いを強いられた。
それが、子供の頃からのトラウマとなり、ずっと嫌だったそうだ。
おもしろいことに、佳代の行動に憧れているらしく、非常に仲良くなった。
そして、すごくえっちだ。
聞くと、こっちが本当の私と言って、妖艶(ようえん)に笑う。
「ああ。うん。そうなんだ?」
「ここだと、自分が出せてうれしい。そういえば、転移の石板にここが表示されるようになって便利」
「あっ私も」
そう言って、佳代達も手を上げて報告をする。
「そうなんだ。ここに来るのは良いけれど、シンの許可をもらわないうちは、他の部屋には行かないでね」
「他の部屋があるの?」
「ああ。各種生物。系統ごとに分けられた実験室がある。当然モンスターも」
「見たいような、見たくないような」
「ぼくは、しばらく肉が食べられなくなったよ」
そう言うと、状態が想像できたのだろう。
医学部で実習が始まって、一部の学生が陥る一過性の症状だな。
そんなことを言っている、外側。
ダンジョン内。
『目指せ新人類。目指せニュータイプヒューマン』などと、たすきを掛けて。怪しい集団が上層を練り歩いている。
「最近どこのダンジョンでも、あいつらがいるんだってさ」
「それ以外でも、16歳を超えれば、みんなが免許取って入り出したらしいぞ」
「ああどこかの予備校が、音頭とっているらしい」
「専任の駆除者が、結構良い稼ぎになるらしいぞ」
「でも、リスクがなぁ。未成年相手だと絶対面倒になるぞ」
「それに、目標地点が40階以上だろ。普通じゃ無理だ」
「そうだよな」
その専任者たち。
「笑いが止まらん。一人につき基本30万。それプラス、階層×万円だぜ」
「ああ絶対40階なんぞ行けるわけがない。稼げるだけ稼いだらやめるぞ」
予備校関係。
「どうだ?」
「順調です」
「進化に対するリスクと、到達は保証しないとの文言を入れ、怪我に対する免責もしっかり親と契約を交わしているな?」
「その辺りは、きっちりしています」
「よしよし。光熱費その他必要なしで、仲介のみ。良いことだ」
「専任者達の経費も、講師を雇うより安上がりだ。チーム単位だからな」
協会。
「受講者の数が、すごいことになっていますね」
「その割に、ダンジョンからの魔石や、ドロップ品は増えていませんね」
「ええまあ。聞く所によると10階までで、止まっているみたい」
「この騒ぎで免許を取っても、体力はなさそうだし。どのくらい残るのか不明だわ」
「そうですね。高校生はまだしも、浪人生は居着きませんかねえ」
「もう少し様子見ね」
国会。
「ダンジョン教? なんだそれは?」
「人類を、新しい種族へと導く神の管理するダンジョン。だそうです」
「ああ例の話か」
「ええ。GPSは消えましたが、その恩恵は数値で残っています」
「ああ全員がリミット値。160だったそうだな」
「とんでもない事だ。基本能力が底上げされているからな」
「あれだろ、反射神経と動体視力をトレーニングするマシンが、途中でエラーを起こしてしまった様だな」
「光るボタンを押せば、次が光るのですが、スイッチのほうが反応できなくなるとか」
「1分間のトレーニングで、ボクサー上位で150が出せるそうですが、途中で300を越えていたそうです」
「とんでもないな。一般人は?」
「85から90程度だそうです」
「3倍以上ではあるが、それほどでもないのか?」
「いえ。途中で300越えです」
「総合的に、データが欲しいな」
「トップチームに、声をかけてみますか?」
「そうだな」
協会。
「特別依頼? 身体測定? 対象40階以上の駆除者。進化した者対象」
「ずいぶんとまあ、あからさまな。一回拘束時間1日。30万円」
「まあ、対象者に通知を出しておきますけど、進化をうけたかは秘匿なんですよね」
「そうなんだけど、この星マーク。健康診断時の判定で、対象者には付いているの」
「そういえばダンジョンが変化してから、40階を越えた人たちに一瞬義務化して、無くなった奴」
「そう。でもまあ。そういう事だから通知出して」
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