第42話 人類の進化

 これって、強制的な進化だ。

 良いのかな?


 シンが決めたのなら良いが、40階層以上に来られる資質。

 その者達に、強制的に進化を促す。

 そんな、予定なのだろう。


 自分の中で起こる変化を、客観的に観察をする。

 神経系、それに、魔力を効率的に扱うための器官。

 埋め込まれた、魔石周りでも変化が起こっている。

 当然そこから、手足の末端へ。


 人類としての、進化。

 それも、魔力への最適化。

 精神的な、変化も起こっている。

 これは脳への変化が、もたらすもの。

 自身が欲する物を、実現するために変化が起こる。


 開拓者の宴が望んだ物は、従来みんなが思っていた願望。

 凪さんについては、よく分からないが。

 ひかりは、吹っ飛ばされただけだが、魔法回路の強化を考えると、刺された方が良かったのでは、ないだろうか?

 

 当然剛さんも。


 目の前? 鼻先で僕の状況を見ていた、evo-01は、僕の状態を見て首をかしげている。


「どうしたんだ? ちゃんと効き目はあり、強化されたよ」

「あいつらと、反応が違う。さすがは、マスターの友人」

「マスターは、おまえになんと命令をした?」

「40階層以上に来た者達に、変化を与えろと仰っていました」

「やっぱりそうか」


 後ろを振り返ると、開拓者の宴メンバーが固まっている。

 多分僕たちの動きが、見えなかったのだろう。


 ひかると、剛さんを手招きして呼ぶ。

「evo-01。呼びにくいな。導くもの。シンには悪いが、導くものとしてアリアドネと呼ぶか。道筋を示す糸を与えたものだ。でも、もろ神様の名前と言うのもな。アリアにしよう。いいか?」

「うー。マスターの命名は至上ですので、通称と言うことであればそれを登録しておきます」


「登録? 生身ではないのか?」

「基本構成は、生身ですが、記憶回路や演算部にバイオチップ? を組み込まれているはずです」


「そうなんだ。で、聞いていてもよく分からないと思うが、この鬼は人類を進化してくれるみたいだよ。反射や魔力、筋力が強化されたのを確認した」

「そうなの?」「そうなのか?」

「自分の体で試した。大丈夫っぽいよ。40階を越えた人間へのボーナス? みたいなものだよ」


「ふーん? で、どうして抱き合っているの?」

「あっ。別に意味は無い」

 そう言って離れるが、ひかりの目が冷たい。


「刺して、いいのか?」

「やってあげて」

 ふっと、アリアが消え、二人が膝をつく。


 二人とも、頭を抑えてうめいている。

 賢治や湊士さんは、おろおろしながらも、アリアに対して警戒は解いていない。


 思ったより、状態は続き。1時間程度まっていると、二人がふらりと立ち上がる。


「うー。頭痛がひどい。でも、確かに、イメージすれば魔力が通る」

「俺はよくわからんが、試せばわかるか?」

「二人とも、ストレスとか、変な格好をしたくはなっていないね?」

 僕がそう言うと、二人はちらっと、残り二人を見る。


「ならない」「ならないわよ」

「じゃあ良かった。アリア。ありがとう」

 手を振って、送り出す。


「どうする? 今日は戻って、出直す?」

「いや、ちょっと試してみたいし。ひかりはどうだ?」

「うーん。少しなら、大丈夫。私も興味があるし。試してみたい」

「じゃあ。すこし、進んでみよう」


 少し進んで、水場に行くと、ひかりが走って行く。

 様子を見ていると、僕が使っていた雷球を作り、ポトンと水の中に落とす。

 ぶわ゛ぁ゛ーと独特の音がして、落とした辺りが沸騰する。


 あやしい、水生モンスターが浮き上がってくる。

 雷の影響から離れた場所から、バシャバシャと白波が立ち始める。

 モンスターの、意識を解放したときから、共食い状態が起こり、必然的に自身が強化されモンスターが強くなる事となる。


 つまり、40階以降では、モンスターが進化し強化される。

 戦いを、経験したモンスターは、その分戦い方も覚えて強くなる。

 人間は、モンスターを倒し、その時発生する魔力の解放と、構成する魂の一部を吸収して強くなる。


 つまり、各階フロアに、ボスタイプが発生している可能性ができた。

「これは、報告が必要かな?」

 ぼそっと言った言葉を、湊士さんが拾う。


「報告? あの鬼のことかい?」

「それも、だけど。40階以降モンスターが自我を持って、他のモンスターを攻撃している。と言うことは、強い個体が出てくると言うことですよね」

「そうか。違和感があったのは、そういう事か」

「違いが分かりました?」

「ああ。逃げたことと良い。モンスター相手に殴り合いを始めてから、よく目が合うんだ。40階を越えてから、その反応が変わった。30階層台はモンスターの目を見ても、何も見ていない。そんな感じだった」


「そうですね。ダンジョンそのものが、変わってしまいましたね」

「それで僕たちの登録が、石板から消されたのか?」

「そうかもしれませんね」


「ねえねえ見た?」

 ひかりが走ってくる。

 距離を間違えたのだろう。

 その髪の毛は、総毛立っている。

 うん。実に面白い。

 3等身の髪の毛が、走ってくる。

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