第41話 そして奴は現れる

「あまり大差は無い」

 ひかりが、そう言うが、剛さんが反応する。


「だが前回より、モンスターが賢くなっていないか?」

「ああ。反応が。まるで攻撃を、過去に見たことがあるような」

 湊士さんが、真剣な顔で考え込む。

「そうだな。ここに来たチームは、うち以外に何チーム居るんだろうな」

 ぼそっと言った、賢治さんの言葉に、剛さんが答える。

「すまん。情報を聞くのを忘れた」


「この先に、他のチームはいないよ。少なくとも、探査範囲には居ない」


 シンが、記憶を残すタイプを、拡大したのか?

 と言うことは、感情もあると言うことだ。

 意識を与えると、前は勝手に階層移動をしてしまうため、封じていたが、今はシールドで対応できるようになったと言っていた。

 僕の能力を元に、新型となったようだ。


 ワームに注意しながらも、ガンガンと進んでいく。


 すると、周りに石化したモンスターが立っている。

「やばい感じだ」

「ノラのメデューサでも居るのか?」


 ひかりは、探査を全開でしているようだ。

「後ろ、7時何か居る」

 そう言いながら、魔法をひかりが発動。

 賢治さんが、抜刀しながら回り込む。


「げっ。野良のカーバンクル。魔法が反射された」

 すごいな。シールドに空間魔法を、組み合わせているのか。


 何とか、ひかりは自分の撃ちだした炎の槍を躱す。

 すでに、賢治さんが、切り裂く。

「ドロップした?」

「あーある。赤い石」

「ルビーかな? ガーネット?」

「俺に聞くな。戻って調べてもらおう」


 油断したと言うには、わずかな時間。

 石化現象の犯人のことが、みんなの頭から一瞬消えた。


 魔力の流れと、現象の構築。

「何か魔法が来ます。4時」

 みんなの意識が戦闘用に切り替わり、対象の確認と魔法の種類を見定め、方向を確認。

「石化」


 ひかりが、シールドを展開。

 魔法の方向をそらす。

 その間に湊士さんが、殴りに行き、危なく蛇の攻撃を食らう所だった。


「気を付けろ」

 賢治さんが、攻撃に来ていた、伸びている蛇を切り飛ばす。


 その間に、ひかりが魔法をぶち込む。

 その間、剛さんはひっくり返っていた。

 魔石と、宝石を拾っている最中に、攻撃が来たため、そのままダッシュしようとしてそのまま躓き、ひっくり返る。


「剛。『常在戦場』」

「うす。すまん」


 頭をかきながら、立ち上がる。


 そんな、ほのぼのした雰囲気。

 だが僕は、周りの雰囲気が変わったのに気がつく。


 モンスター達が、逃げ出した。

 みんなは、まだ気がついていない。

「みなさん。何か来ました。周辺からモンスターが逃げています」

 そういった瞬間、剛さん達が反応する。

「モンスターが逃げる? どういうことだ?」

「そんなこと聞いたこともない。そもそも、条件反射のように襲ってくるのが、モンスターのはずだ」


 そんなことを、言っていると、空気が変わる。


「あっ。来ましたね」

 みんなが、僕の向いた方を向く。

「美樹? いや角があるな。こいつですか?」

 剛さん達に聞く。


 だが、記憶のせいか、みんなが固まっている。

「将? 初めまして。evo-01と申します。マスターより頂いた番号です」

 そう言いながら、近寄ってくる。


 自然な感じでハグし、両手が僕の背中に回る。

 チクッと、するが集中していないと分からないだろう。

 あっいや、やばい刺された。

 思わず、引き剥がす。


 その時見た、evo-01の目は、瞳が拡大し真っ黒。

 闇が、広がっていた。


 舞台は、小学校の高学年。

 学校から、みんなの荷物を抱えて、河原へやってくる。

 日課のような、行動。


 石を投げたり、鬼ごっこをする彼らを見ているだけ。

 やがて、遊び疲れた彼らは、自分の荷物を持ち、僕の荷物を川へと放り込む。

 そして、今日はみんな、その場で解散したようだ。


 僕はすくっと立ち上がり、川の表面を凍らせる。

 足下のみ、氷を強化して割れないようにして川面を眺める。

 浮いていたランドセルは、すぐ目の前。

 凍っているため、動きは無い。


 僕は、ランドセルに手を伸ばし、その奥にいるものに、雷撃を食らわせる。

 まるで、逆回転のビデオのように、川の中から美樹が飛び出してくる。

「さすがですね、マスターの話では、例外なく効くという話だったのですが」

「幾度か、シンのおかげで、精神的にも進化をしたからかもね」


「私の針。進化の種は、物理的にも変化をするはず。精神的な、影響も自己啓発程度では問題ないはずなのに」

 そう聞いて、自身をスキャンする。


 そのすきに、もう一度刺してくる。

 面白そうなので、もう一度うけてみる。


 おっ。スキャンに引っかかる。

 神経細胞が、すごい勢いで増殖し、僕の力なのか? アポトーシスを始める。

 意識的に、その自己防衛とも思える、自己防御を禁止する。

 おっ。

 アポトーシスが止まった。


 すると、重い感じの頭痛が始まり、ひどくなっていく。

 だけど、今、魔法を使っているためか、それに対する負荷が減る。急激に強化されているのだろう。

 面白くて、計算をしてみたり、空間認識。

 いやなことを思い出して、かなり薄くなったが精神的な負荷をかける。


 反射的、行動。

 逆にゆっくり、負荷をかけながら体を動かす。

 そんなことを、していると、頭痛とともに全身に痛み。


 そして、目の前の景色が、ひかりに包まれ、何かに繋がる。

「これはダンジョン?」

 今まで、漠然と使っていたダンジョンへの干渉。

 それが、分かる。

 まだ理解はできないが、その辺りの情報も知識として流れ込んでくる。

 これは、シンにとっては予想外なのか、意図的なものか?


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