第39話 とりあえず鬼を探す

「あー言った通り。メンバーになったんだよ」

 そう言っても、じっと見つめてくる。


「将は誘っても、一人が良いって。言っていたじゃない」

「いや、まあそうなんだけど。彼女たち。あー。お金に困っていて、鍛えてあげて、そのまま仲間になった感じかな」


「やっぱり、そっちから攻めるべきだったのか?」

 ひかりちゃんではなく、剛から言葉がくる。


「どういうこと?」

「いや、ずっと仲間に誘っていたのは、知っているだろうが」

「ええ」

「どうすれば入ってくれるかと、みんなで相談していてな」


「私は、習ったのに誘われなかった。美人じゃないから?」

「えっ。そういう訳じゃないけど、すでに、開拓者の宴のメンバーでしょ」

「しまった。抜けていれば、わたし誘われていたの?」

「おいおい。ひかり。物騒なこと言うなよ」

 剛の顔がかなり焦っている。


「まあ、こんなことを言っていても仕方が無いでしょう。先へ進むんでしょう?」

「ああ、まあそうだな」


「後衛が、一人減っていますから、僕がフォローします」


 そして進み出したが、剛さんは、変わらず殴り合いをしている。

 問題は、ぱんつにコートの湊士さんまで殴り合い。


 賢治さんは、切って切って切って、あれは、太刀筋を極めようとしているのか?

 刀が折れれば、躊躇無く投げ捨て、背中の背負子から一本新たなものを取り出す。


 ひかりは、うん。いつも通りだが、早くなった?

 発動時間、魔法の収束。

 無駄がずいぶん無くなり、威力も上がっている。


 なんだ、結局強くなっているじゃないか。


 後衛で見守りながら、みんなを見て安心する。


 湊士さん。気配まで見てるのか、後ろから来たモンスターを、振り向かず攻撃した。


 トロール、3体登場。

 みんなが、各個撃破するようで、走り始める。

 1匹目を、剛さん。

 さすがに、身長差があるため組めないが、あっという間に相手の足を取り、引っくり返す。

 体を強化しているのだろう。3mほど飛び上がって、膝をトロールの顔へ落とす。

 それだけで、消えていった。


 2匹目は、湊士さん。

 躊躇無く、膝へキックを食らわせへし折る。

 落ちてきた、顔をアッパー気味にぶん殴る。

 その2発で、トロールは消えていった。


 3匹目は、賢治さん。

 すすすと、歩み寄り。軽い感じで刀を振るう。

 堅いはずの皮膚と脂肪。そして骨を? あれは関節だな? すっぱりと切り落とす。降りてくるトロールの顔。

 躊躇無く、口から刀は入り、脳天から抜ける。

 

 そしてひかりちゃんは、相手が居らず走り抜ける。

「ちぇー。なんだよ」

 そう言って、背中側で手を組み。石を蹴るふりをする。


 まあみんな、見ていないが。


 まあ、心配していたが、言動以外は、みんな前より強い。

「みんな、強いね」

「当然。あの鬼娘をぶっ倒す」


 そして、40階。

 ミノタウルス君登場。


 彼らの皮膚は、さらに硬く、動きも素早い。

 そして、定番の斧が頭上から降ってくる。


 それを身体強化した剛さんが、そっと横から押して流す。

 斧を引き抜く、わずかな間に。間合いを詰めて、膝を壊しに行く。

 左手にペシッと払われ、ふっ飛んだ。


「あっ。あーあ逝っちゃったか。惜しい奴を失った」

「まだまだ」

 剛がそう言って、立ち上がる。

 恐ろしい事に、4~5mくらい飛んだ。

 あれだけ飛んで、擦り傷程度。

 剛さんモンスター並みの強さじゃないか?


 湊士さんは、その間に対峙して、横薙ぎにくる斧に対し、突っ込んでいく。

 フッと飛び上がり、一瞬で抜ける斧を踏み台にして、飛び上がる。

 躊躇無く目を殴る。

 暴れて、逃げようとするが、湊士を引き剥がせない。

 首に、足をかけ鼻の上に座った感じでガンガン殴る。


 そのすきに、賢治さんが攻撃。

 トロールではできた、関節での切断ができないようで、ガンガンと刀が折れて、

「賢治さん。刀の先が飛んでくる。危ないからやめて」

 そう言ったが、

「よけろ」

 ただそれだけ。


 何かモードに入っているのか?

 そのすきに、ひかりが背中側から、ああ。

 前に教えた、内部からの破壊ね。

 発動寸前に魔力干渉が発生する。


 あーこいつ。シンめ組み込んだな。

 前に言っていた、魔法防御。

 やっぱり組んだのか。


 呆然としている、ひかりをちょっとどけて、干渉してくる障壁を干渉して壊す。

 燃やし尽くす炎を内部で発現させる。


 口や鼻から、高温の蒸気が噴き出し、上に乗っていた湊士さんが、叫びながら飛び降りる。


 周囲に、おいしそうなにおいが充満して、ミノタウルスは消えていく。


「ひどい。お尻が焼けた」

「装備をきちっとすれば、問題ない」

 そう言われて、湊士さんは、ちょっとむくれる。


「参った。将ちゃん。あれなあに? 魔法発動寸前に干渉されて潰された」

「分かっているじゃないですか。干渉されて潰されたんですよ」

「ちがう。あんたに何回もやられて知っているけど、相手はモンスターだよ。それに前はそんなもの使わなかったし」

「多少、モンスターも、進化したのかもしれないですね」


「そりゃ。報告が必要な案件だな」

「そうですね。まあ41階に行って、認証しましょ」

 ドアをくぐり、石板を見つける。

 手をつくと、認証できて、行き先の階が頭の中に浮かぶ。


 そのリストの枠外に、ぽつんと見慣れないものが。

『コントロールルーム。将の部屋?』

「何じゃこりゃ」

 思わず叫んでしまった。

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