第36話 チーム合同作戦

 デートも終わり。

 だがなぜか、僕たちが行くと中島さんが隠れるようになってすぐ、特殊依頼担当窓口成瀬さんから話が来る。


「トップチームが40階に挑んでいます。ところがですね。全く攻撃が効かなくなってきたと」

「えーと。この前まで、50階を越えて活動していましたよね」


「そうなんですが、原因はよく分からないのですけど、飛べなくなったということです。転移の石板に触っても、41階以降が消えてしまったらしいのです」

「ふーん。不思議だね」

 まあ。シンが何かをやったのだろうが、すっとぼける。


「それで、お願いとは?」

「現在のトップチーム。開拓者の宴(カルマ)。そこのチームAと一緒に潜っていただけません?」


「ああ。あそこか。山田さんのところだよね」

「そうですね。本人は鉄壁の守護神と名乗っているそうですが」

「剛さんだからかな?」

「さあ? で、どうでしょう」

「良いですよ。待ち合わせは31階ですか?」

「そうです。では、OKなら明日9時に31階へお願いします」


「えっ? もう決まっていたの?」

「ええ。将さん。あっ失礼。導師なら受けるだろうと、おっしゃって」

 いつの間にか、名前呼びになってる。

 美樹達2人は、そこに気がついた。


「明日9時か、待ち合わせどうする?」

「テイクアウトで何か買って、将の部屋。直接31階へ行けるでしょ」

「そりゃ当然」


「ねえねえ。他のダンジョンは行けないの?」

「行けるよ。世界中。転移の石板でも、行きたい階を選択してそこで、2秒くらい意識すると、目的の場所を選択できる。場所っていうのはダンジョンね」


「じゃあ、よそへ行っても1階から行かなくて良いの?」

「余所で入るときには、知っての通り、登録されていないから1階からになる。やるなら、こっち。城東ニュータウンダンジョンから飛んで、飛んだ先ですぐ登録する。すると、そこまでの階にどこでも飛べるようになる。基本的にモンスターの配置もあまり差は無いしね」


「じゃあ、15階を回れるね」

「そうだね」

「お金がないときには、回ってみよう」

 しっしっしという感じで、佳代が笑っている。


「えっ。お金無いの?」

「いんや。前は無いときがあったけれど。今は大丈夫」

「そう。良かった。学校は?」

 そう聞いた瞬間。二人の動きが止まる。


「今は、きっと休講なのよ」

「うんうん。多分」

 2人をじっと見る。

「今回終わったら行きます」

「同じく」


「きちっと、卒業はしてね」

「はーい」

 そう言って、テイクアウトで買えるものを探しに行く。


 それを見送る、影が一つ。

 将さん。あんな人畜無害な顔をして、拘束したり、ムチを使ったりするんだわ。

 ごめんなさい。私には、ハードルが高すぎなの。

 一人そうつぶやきながら、涙をこぼす。中島理子(さとこ)23歳。

 美樹のコレクションにより、将に不名誉な烙印が押された。瞬間である。


 きゃいきゃい言いながら、色々なものを買い込み、収納していく。

 無論。各種チューハイも。


 その晩。

「でっ、その開拓者の宴(カルマ)ってどんなチーム?」

「知っているのは、僕と行動範囲がかぶるAチームだけだけど、中くらいの盾を担いだ人が、トップの山田剛さん。元々は、柔道とラグビーだったかな? それと、近距離アタッカーが二人と弓。そして、魔法使いがいる」

 そう言って僕は、にまっと笑う。


「あそこだけなんだよ。真面目に魔法を使ってくれるのは」

「将って魔法好きだよね」

「そうだよ。モンスターが使えるのに、おかしいって言って、最初にシンに頼んで改善してもらったものなんだ。それを、ちょっと仲良くなった塩田さんに言ったら、真面目に練習してくれて。今どこまで使いこなしているのか、楽しみなんだ」

「塩田さんって、男? 女?」

「うん? ひかりさん。女の子だよ。背のちっちゃな。最初はボウガンとかも使ったんだけど力が無くて。コンパウンドボウも取り回しが難しいらしくてね。困っていたところへ、僕から情報を渡されて、喜んでくれたなあ」


「むむ。奥様聞きました? 将がこんなにしゃべるなんて、そのひかりって言う子。気になりませんこと」

「気になるなあ。でも、将だから色っぽい話にはならないと思うけどな」

「でも、相手はどう思っているか、分からないじゃ無い」

 そう言って、美樹の眉間にしわが寄る。


「眉間。しわが寄ってる。明日会えば分かるだろ」

「そうだけど」

「じゃあ、美樹は気にしとけ。今晩、将の相手は、あたしに任せておいて」

 うれしそうに、佳代が宣言する。


「いや。それは話が違うし」

 表情が一瞬で無くなった美樹が突っ込む。そして、やいのやいの、言い合いが始まる。


「二人とも、仲が良いなあ」

 そう、思ったつもりが、声に出たようだ。

「将。聞いて良い? そのひかりって、男女関係には、なってないよね」

 美樹に聞かれ、思わずビールを吹き出す。


「なってないよ。明日見たら、たぶん安心するから」

 そう。彼女は、152~3cm位。

 童顔で、ぱっと見、中学生に見える。

 昼間に歩いていると、「学校はどうしたの」と言って、補導されそうになる為。身分証明は必携らしい。

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