第24話 ソロじゃなくなった

「一番の苦労は、単純に筋肉量を増やすと、なぜか将が嫌がるからね、見た目は筋繊維を増やさず、筋繊維を構成する細胞レベルに魔力感応型強化因子をまあ、ミトコンドリアのように詰め込んだ。これは3号で達成した技術だ。実際はミトコンドリアよりもっと細かく、見た目は筋繊維束に紛れ分からないだろう。エオシンに同じように染まるからね。病院とか呼ばれる施設でバイオプシーをとられ、検査を受けても分からないはずだ。安心したまえ。だが、透過型電顕用にサンプルを使われると、通常の2重染色では酢酸ウラニルにも酢酸鉛にも反応しないから注意しておくれ」

 シンさんの説明を受けているが、よく分からない。


 実際違和感も全然無い。

 佳代と二人。並んで体の動きを確かめている。


「まあそのおかげで、君たちにも将と同じ魔石を埋め込んである。そうしないとダンジョン外に出たときに、因子が働かず非常に動きにくくなる。いや普通に戻る。それを補う為の装置だ」


「シンできたって?」

「ああ。将どうだね。見た目はかわらずだろう」

 部屋に入ると、ベッドに腰をかけ、2人が体の動作を確認している。


「うわっ。なんで裸なんだ」

「服を着ていちゃ、よくわからんだろう。変なことを言うやつだな」

 あれ? どうして恥ずかしくないんだろう? 将さんが来たのに。


「あれ? 恥ずかしがっているの僕だけ?」

「番として、邪魔そうだったから、将に対して余計な感情は抑制してある。君は慣れろ。だが、君相手の交尾では、最高の快楽を得ることができるようにしてある」

 真顔のシンが、そう説明してくる。


「なにしてんの? 二人の了解は得たの?」

「なぜ? 君のために立候補したんだ。問題は無いだろう」

 あー、シンはそうか。この二人も単なる生物なんだ。


「あー、ごめんね」

 2人に向かって謝る。


 何だろうこれ? 将さんに意識を向けてもらうだけでうれしい。

 あっやばい、体が勝手に反応しちゃう。

 横を見ると、佳代も同じなのだろう、もじもじしている。


「まあ後は、将と一緒にトレーニングをして、使えそうか2人を試してくれたまえ。ああそうだ。2人用の装備も創っておいた。それに、君と同じで外でも魔法が使えるから」

「と言うことは、また魔石を組み込んだのか?」

「そうだよ。直径20kmの隕石3つ分。3人が同時に暴走すると、この星はなくなるね」

 そう言って、シンは右手をぱっと広げる仕草をして楽しそうに出て行った。


 その瞬間、佳代さんがすがりついてきて、俺の胸に顔をスリスリし始める。

「あっ佳代、ずるい」

 そう言って、美樹さんもすがりついてくる。


「ちょっとまって、先に服と装備を」

「いやだ」

「いやです」

「ああ。ちょっと……」


 うん。仲良くはなったよ。

 体力もあるし、僕に対して異常な執着もあり、献身度合いもすごい。シンがいじり、感度?をあげていたおかげで、なんとか勝った。

 これは、シンの思うままだろう。



 装備をつけてもらい、ちょっと広い演習場へ向かう。

 佳代が、僕の部屋にあったガンブレードに、異常に興味を示していたのであげた。

 シンとお遊びで作ったものだ。

 二人とも、亜空間収納を使えるので収納してもらう。


 2人同時に来てもらい、状態を見る。

 あの3号?達よりも少し落ちるが、メデューサ辺りと殴り合いをしても勝てるだろう。

 ただ蹴りとパンチが、素人のそれだ。

 パンチは拳を固めた状態で、腕だけを振り回しているし、蹴りは膝が伸びてスピードが遅い。

 普通は、太ももが先に振り上げられて、その後膝から先を振るのが基本。

 体術は今一のようなので、空手と合気道辺りを習得してもらおう。



 実際相手をすると、すごい。

 わずかな見切り? で、すべて躱され、パンチを打っても手を添えるだけで流される。

 途中で、腰から先に動けとか、色々言われるけれど、できない。


 畜生。強いぜ。

 子供の頃から、美樹にちょっかいをかけてくる奴を、退治するのに結構けんかをしたけれど、完全に別物。達人級だ。

 2人を相手にしながら、バランスが悪いとか、重心を考えろとか、的確な指導が降ってくる。

 3年前、あの見た目で達人だったのか? なら弱っちいと思って手を出していたらボコられていたのは私? ああゾクゾクする。

 それに、体力は? 私もあるな。改造を受けているのか?


「よし。じゃあ次は魔法を使ってみよう。魔法はダンジョン内だとイメージをダンジョンが魔法に変えてくれる。だが外だと自分で発動させないといけない。より詳細なイメージをしっかり固めて使うようにね。みんなが、使っているのは多分プロット辺りだけど、もっと詳細に練り込んでね」


「プロット? 練り込む?」

 二人が首をひねる。

「ああごめん。例えばだね」

 そう言って火を浮かべる。


「この火が飛んでいって、相手に当たりダメージを負わせる。そんな感じではなく、温度はどのくらい? 速度は? ダメージもどんな感じで与えるのか? 表面を燃やすのか、刺さって内から燃やすのか、鋭く突き抜けて抜けたところを燃やすのか? そんな感じ。わかる」

 二人とも、理解してくれたようだ。


 一応、チームでないが、メンバーになったことを協会へ登録しに行く。

 何かあったときに必要な、連絡用の届けみたいなものだ。

 登録用紙を書いていると、担当外なのに特殊依頼担当窓口成瀬さんが、めざとく見つけてきた。


 しまった、見られた。

「あれー登録窓口に鬼司さんが? ぼっちはやめたの?」

「なにげに、ひどくないですか?」

「幾度も言ったのに『良いんです。僕は一人が好きなんです。』って言っていたのに、まあ、仲間が増えると多少安心…… 女の子。それにこの二人って、弱っちいのに。もっとまともな人がいるでしょう? 鬼司さん、人が良いからって寄生されちゃあだめですよ」

「大丈夫です。鍛えますから。それに彼女たち、強くなれます」

「そう? なら良いけどだめそうなら言ってね。マッチングも私たちの仕事だから」

 そこへ一人やってくる。


「成瀬さんの仕事じゃなく、私の仕事です。マッチングのご用命は、総合受付の中島理子(さとこ)23歳へお願いします」

「良いんですけど、藤本さんが困っています。自分たちの所は良いのですか?」

「あーもお。真面目くんなんだから。ちゃんと相談してね」

 そう言い残して、解散する。

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