第23話 提案の中身と進化

「こんな個体を創っているのは、さっきも言った通り、将も27歳となり寿命が短いホモ・サピエンス・サピエンスだからな、つがいとして優秀な物を創ってみようと私が思ったからだ。種は子孫を残すそれが命題だ。どちらかでも良いが、番いになってもらおう」


 シンがそう言った瞬間。二人が手を上げる。

「えっ。いいの?」

 この状況で、二人ともおかしくなっているんじゃないか? そんな考えが頭に浮かぶ。

 だが二人は、手をあげたままじっと僕を見てくる。


「よかろう。二人とも候補にしよう。ただ二人とも普通だからな。どうしようか?」

 シンがすっと手を振ると、寝転がっていた二人の偽物? 3号と4号が動き始める。


「3号はさっき言った通り。4号、いや佳代と言ったな。では、簡単にK-1号と呼称しよう。将、戦ってみてくれ。残念だが、消しても良いから」

 シンはさらっと言うが、見ている本人達。心にダメージを負うのでは? だが、そんなことを考える暇も無く、狭い室内での戦闘が始まる。



 あれ、自動で障壁? シールドが僕の体の周りに展開される? なんだこれ?

「なあシン、勝手にシールドが展開されるんだが?」

「ああそうだね。この前のようなことになると嫌だから、機能をつけた」

「いつの間に?」

「あの後すぐ、君の仮眠中に。あれを観察していて、僕はなぜかすごく不愉快になったのさ」

 ああ。シンの優しさなんだな。

 僕は納得をした。


 トラウマで、体が動かなくって、ふがいないところを見せた。

 それで僕を守るために、断りはなかったが機能を追加してくれた。

 ふふっ。うれしいね。


 そう思いながらも、攻撃を受けそれをいなす。



 わあーすごい。

 私と、佳代の偽物。

 服を着ていないのが、ちょっと気になるけれど、反射、攻撃。

 あんな風に、動けるのね。

 所々で、目で追えないくらい、激しく二人が入れ替わり、将さんへ向けて攻撃を仕掛ける。

 でもその二人を、全く相手にしていないような将さんの動き。

 すごい。


 おわーすげっ。

 俺たちでも、鍛えればあそこまで動けるんだろうか? 無への導師相手にあそこまで。服を着ていないせいか、動きがわかりやすい。

 足からのひねりを、的確に拳まで伝えて突きを出す。

 でもその瞬間、すでに意識は防御へと振っているんだろうな。

 すごいすごい。

 でも、そのすごい攻撃を、導師はさばいていく。

 うわー。あそこまで行きたい。

 かっこいい。あれが上級ランクなんだ。


「かわいそうだけど、もう良いかな?」

「ああ良いよ。被験者、いや協力者が手に入ったからね」

 そう言って、シンが笑う。


「お休み」

 そう言って、無へと帰す。


「「あっ」」

 二人ともが、同時に声を上げる。


「ああごめんね。消すこともなかったんだけど。本人が居るのに失礼かと思っちゃって」

「いいえ。まあはい」

 二人ともが、少し落ち込んでいる。


「どうしたというのも、おかしいけれど、どうしたの?」

「あの、さっきの戦いで体の使い方とか参考になったので、練習相手にちょうど良いなと思っただけで」

「あっあたしも。そう思った」


「ふむ。じゃあ将とすればいい。君たちは拳で語るとか言うのが、あるのだろう。僕にはよく分からないが、仲良くなるためには近道じゃないのかね?」


「シンが言っているのは少し違うが、少し合わせても良いかもね。君たちは僕とつが…… パートナーとなってくれるんでしょう。よろしくお願いしましゅ」

 そう言って頭を下げる。

 がっ、かんだぁ。


「「こちらこそ、おねがいします」」

「でも、いいの? その……将さんて、ソロだったんでしょう?」

「はうっ」

 なぜだろう。胸にダメージが。

 川瀬さん。美樹さんの笑顔が胸に刺さる。


「ああ、その点は大丈夫。君たちのレベルを引き上げるからね」

 シンさんがそう言って、怪しく微笑む。


「レベルを引き上げる? 将さんの所まで?」

「良いじゃないか。おねがいするぜ。いや、お願いします」

「よかろう。実験室の方へ移動しよう」

「「実験室?」」

「当然だろう。君たちは、ただの人間だ。そんなもので横に並ぶなどできやしない。分かったかね」


「うわぁ。ひょおっとして…… あたしら改造される? んだ」

「そう…… みたいね」

「何をしているんだね。行くよ」

 シンさんについて、部屋を移動する。


 廊下には扉が並び、今出た部屋にだけ『まさるのへや』と書かれているが、他はよく分からない記号が書かれている。


 一室に、入ると

「さあ脱ぎ給え」

 シンさんが淡々と告げる。

「「えっ」」

「着ている物を、脱いでそこのベッドに寝たまえ」

「脱ぐ、ですか?」

「当然だろう。施術の邪魔だ。不安なら将を呼ぶが」

「いえ。大丈夫です」

 佳代と二人脱ぎ始める。

 お互いに、さっき見たのと同じだと思わず見比べてしまう。


「基本的に、私は君たちにあまり興味は無い。あまりつまらないことをすると、さっきのモデルを基本にすることになる。気をつけたまえ」

 そう言ったときの、シンさんの目が笑っていないことに気がつく。

 彼にとって、特別は将さんだけなんだ。

 佳代もそれに気がついたようだ。こっちに一瞬目配せしたが、慌ててベッドへ寝転がる。


「さあ、始めよう」

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