第22話 相談と提案

「おいこれ。美樹じゃねえか。どういうことだよ」

「どういうことも、これはまあ、彼女のクローン状態かな。創っても創っても将が消しちゃうから」

 

 言い合っている2人? を横目に、私はクローゼットにあった将さんのコートをつかみ、転がっているクローンへかぶせる。


 近くで見ても、私そっくり。

 それに、あの胸の感じ。きっと、全く一緒なんだわ。

 ああ、力なく転がっている私。なぜかしらゾクゾクする。

 どうして? 意識はないのに暖かい。


 生きてる。

 確認をすると、呼吸があるし、脈もある。


 うわあ。本当に私。

 そう思いながら、顔を思わずなでる。

 ふふ。ぷにぷに。

 ああ胸も、こんな。



 美樹が、変なことを始めた。

 呼吸や、脈をとっているようだが、とうとう真剣に胸まで揉み始めた。

 何やってんだ?



「あー楽しんでいるとこ悪いが、どうかね。できばえは」

 そんな声が聞こえて、はっと気がつく。


 顔を上げて、周りを見ると、全員が私を見つめてる。

 私の両手は、寝転がっている私の胸を絶好調に揉んでいる。

 そっと手を放して、服を掛け直す。


 ニコッと笑顔で、

「大変よろしゅうございます」

 なっ、何を言っているの私。


「ほんとか?」

 何を食いついているの、佳代。

 めくらないで。

 揉まないで。

 ああっ、下まで。

 生え方まで、よく見れば一緒じゃない。


「なあ、シン。僕はさ、あまり女の子と付き合いがないから、知らないけれど、こんな感じなのか?」

 僕は椅子に座って、紅茶を飲みながら。シンは、椅子に座り、例のチューブ入りの飲み物を飲んで、見たことないほど、あきれた顔をしている。


 いま、佳代と呼ばれる子が、大事なところをめくろうとして、美樹ちゃんに止められている。


「本人じゃないから、良いじゃないか。見たかったんだよ」

 そんな台詞が、吐かれる。

「ばっ。だめに決まっているでしょ。佳代の変態」


「ああ。まあ止めようか」

 そう言うと、シンから精神波が撃ち出される。

 その瞬間。二人の動きが止まる。


「「えっ」」

「体が動かない」


「僕の作品で、遊んでほしくないな。これは、将のために創ったんだ」

 いや、やめて。

 そんなことを言われたら、僕が思いっきり変態に見られる。


「いや、美樹さんを、気になるとは言ったけど、おもしろがって創ったのはシンだよね」

「ひどいね。君が喜んでくれると思って、番(つが)いになる個体を創ろうとしたんじゃないか。これは、オリジナルと違って、いろんな因子が組まれているんだよ。ゴブリン達の繁殖能力。オーガ達の強靱な肉体。今は柔らかいけれど、魔力を込めた瞬間、下手な金属などより硬度は上がる。だが、生体ベースだから柔軟性もあり脆くはならない。そして、君と同じく魔力回路を組み入れた。多分ドラゴンくらいなら余裕で倒せる。どうだい。それが、3号さ。1号で君が感動してくれた、母性回路も埋め込んでいる。強くて優しい。興味が出るだろ」

 そう言って、ニヤニヤしている。


 ああ。そういう内容を聞けば、興味はある。


 だが。


 横に、本人と観客がいて、わーいとは言えんだろう。


「あのー、今の本当ですか?」

「今のって言うのは、どれだい。すべて本当さ。強いよ」

「あっいえ、そうじゃなく。まっ将さんが、私を気に入っての所です」


 一瞬、躊躇するが、

「本当です。こんな形ですいません」

 はっきりそう言うと、彼女は真っ赤になる。


「なっ。美樹ずるい。おれも無への導師は好きだったんだよ。何度も言っただろ」

 二人とも、体は動かないようで、口だけだが言い争っている。


「佳代ったら、なに言っているの。将さんの初めてをじゃましたとき、あんなヘナチョコは嫌いだって言っていたし、2度目のときも、教科書通りに問いかけず、さっさと助けろって、もっ文句を言っていたじゃない」

「だー。それはそうだけど、その後に聞いた、強さに憧れたんだよ」

「じゃあ強ければ、誰でも良いんだ」

「ちっ、ちげーし」


「ふむ。おもしろい。仲がよい状況だったが、好みの雄が混ざると輪が壊れるのか?興味がわいた。君は対象外だったが、スキャンして見よう」

 シンがそう言うと、天井から光の帯が降りてきて、佳代と言う子を包む。


「それ」

 そう言うと、黒いスーツを着て戦う連中が、玉から出てくるような感じで、スキャンされた佳代と言う子ができあがる。

 倒れかかったので、思わず支える。


「ぎゃー。私。服。早く。はずい」

「わー佳代だ。見せて。隅々まで。さっきのお返し。あらぁー、結構薄毛なのねぇ」

「美樹。見るな。将さん抱えられていると、なぜか私の体が反応して…… ぬれ。だめ。どこかへ下ろして。下ろしてください。お願いします」

 気の強そうな彼女なのに、そう言って、少し上気しているが、泣きそうな顔になる。

 うわー女の子の、こんな顔始めてみた。


「ふむ。将まだ放すな。君たちに提案しよう。乗らなければ、記憶を失ってご退出願うが、どうかね」

「なに? 何でしょう。あたしは何でも聞くから、将さんもう放して」

「ふむ。君はどうだね」

「喜んで」

 きっとこの、謎体験の衝撃で、もう壊れているな。僕は女の子の意外な一面を見たよ。

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