第21話 秘密の部屋へ

 真っ赤になっていると、意外な方からフォローが来た。

「あーうん誰でも。初めてはあるんだし大丈夫。私たちも経験無いし」

「ちょっと、佳代」

「うん? まさか、美樹あるのか? いつ誰とどこで。はけ。私が知らない間に」

 そう言って、美樹ちゃんの襟元を握って、詰め寄る佳代?さん。


 すっと間に入り、止める。

「そんなんじゃ、しゃべれないから。手を放して」

「ちっ」

 とか言って佳代?さんが離れる。

 間に入ったとき、前後で気持ちよかった。

 もっと、軽装備にしとけばよかった。


「もうっ。佳代ったら、経験なんて無いわよ。ただ、将さんにいきなり暴露するからでしょう」

「あっああ。そうかすまん」

 うん? 将さん。名前呼び? 良いのか?

 そこに気がつき、また俺の体温は上昇する。

 血圧の乱高下で、かなりのダメージを食らいそうだ。


 ただまあ、ダンジョンで大声出していると意外に響く。

 まずいことに、声を聞きつけて人が集まってくる。

「やばい。人が集まってくる。場所を変えよう」

「えっ周りに人なんか?」

 そんなことを言っている間に、両側から声が聞こえ始める。

 やばい、広間の方には、食いかけが転がっている。


「ちょっとごめん」

 そう言って、二人の腰に手を回して飛ぶ。


 飛んだ先は、ダンジョンにある。俺の自室。

 シンが用意してくれたもの。


「うわっ。なんだ今の?転移?」

「きゃっ」

 すぐに、腰から手を放す。


「ごめん。ここには人が来ないから。御茶でも入れよう。そこの椅子を使って」

 まあこの部屋、見た目は普通だから、問題はないだろう。


「どうして、こんな部屋。何もないところで、転移して。おかしいだろ」

 聞こえないふりをして、キッチンへ行く。


「この部屋、なんだ? 一体どこだ。此処」

 佳代が、そこら中の扉を開ける。

「ちょっと、やめなさいよ」

「だってよ、気にならないか? あたしらダンジョンにいたんだぞ。あれが転移でも、もし自宅まで飛んだのなら、常識がひっくり返る」

「だけどね。佳代。そこは、クローゼットでしょ。何を漁っているの」

 黙ったまま、手にもつ物をこっちに見せてくる。


 1mちょっと位の、ガンブレード。

 佳代の目がキラキラだけど、

「ちょっと、やめなさいよ」

 そう言って止めるが、他にも、やばそうな武器が並んでいるようだ。

 佳代の手が止まらない。


「そこはあまり、漁ってほしくないし、危険だから遠慮してくれる?」

 そう声をかけられ、「ひっ」と佳代が変な声を出した後、「ドパン」と轟音が響き渡る。


 天井に当たった弾は、不思議なことに、跳弾せず埋まっていたが、天井が自動的に修復していく。

 その光景を、二人して呆然と眺める。

「怪我はない? 紅茶だけど大丈夫?」

 お茶請けに、クッキーも出す。


「クッキーに合わせて、セイロンだよ」

 そう言われて、ばつが悪そうに、佳代もテーブルにやってくる。


「あっ。あのさ。ごめんなさい」

 見た目と違い、殊勝に頭を下げてくる。

「ああ良いけど。人の家へ来て、いきなり家捜しは、あまりしない方が良いよ」

「ふっ、普通ならしねえし」

 そう言って、うつむく。


「あっ。おいしい」

 美樹、川瀬さんは、クッキーにかじりついている。


「あのそれで、ここは一体どこなんだ?」

「僕の部屋」

「だあー。それは聞いた。聞きたいのは、ダンジョン内か外かと言うことだよ」

「狭間」

「へっ?」

「ダンジョンでも、地上でもない。詳しくは言えないけどね」

 僕が格好をつけて、そんなことを語っていると来るんだ。


「将。2号を消しちゃうなんて、ひどいね」

 シンが、無遠慮にドアを開けて入ってくる。

 当然僕たちが来たのは、見ていただろう。

 やると思ったよ。


 ただ、その小脇に抱えた、やばそうな物は何だ? どう見ても女の子。

 それも、わざわざお尻側を、こちらに向けて抱えてやがる。


「シン。勝手に彼女たちを連れてきたのは謝るが、それは何だ?」

「うん? 3号さん。ちょうど良いから、彼女にも感想を聞こう」

 何を言っているんだ? 俺の中で血の気が引く音が聞こえる。

 嫌われる以外の道が見えない。


 口をパクパクしている2人に、シンを紹介する。

「こいつは、シン。……」

 なんて言えば、良いんだ?


「ああ、僕はこの星の管理人さ。よろしくね」

 そう言って、にこやかな表情を2人に向ける。

 相変わらず、目は笑っていないレベルだけどね。


「あっ。ああどうも」

 そう、村井さん。佳代さんの方が言うと、

「よろしくお願いします」

 そう言って、美樹さんの方も、頭を下げる。


 なんだこいつ。頭に角が生えている。

 モンスターじゃねえか。

 小脇に、抱えている女。死んでいるのか?


 えっなに? 鬼? 将さんは平然としているけど、小脇の女の人。大事なところが丸見え。

 死んでいるの?


 2人はそれぞれそんなことを考えているが、挨拶をされて、返事をなんとか返す。

「「管理人てなに?」」

 当然頭は、ぐるぐるだ。


「よいしょ」

 管理人さんは、おもむろにソファーへ、小脇に抱えた女の人を転がす。

 仰向けだけど、足が片足落ちているから、大事なところが…… って、あれ見たことある顔。……もしかして私……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る