第2話 初ダンジョンと出会い
モンスター駆除従事者となり、初ダンジョンへ行くことになった。
試験は結局、3回目で合格したよ。
ミスったのは、銃刀法関係と、あの内容で、引っ掛け問題があるんだよ。
僕は素直だから、困っていると助けるにチェックを書いてしまった。
要救助意思がない場合、他人の獲物を横取りする行為となるらしい。
重傷で、「助けて」が言えない場合は、どうすんだよ。
それで免許を貰って、防具や武器を見に行き、値段を見てパニックを起こし、逃げ帰る。
この歳で、さらに親のすねをかじって初級装備を購入。
そして今、この地に立つ。
「ゲート付近で、立ち止まらないで」
そんな声が、背後でする。
「すみません」
そう答え、押し出される感じで、初ダンジョン第1歩を踏み出した。
通り過ぎながら、
「邪魔なんだから」
「でもあれって、初心者だよ。仕方ないよ」
「ああ、記念すべき第一歩。邪魔しちゃったわね。ひゃはは」
そんな、声が聞こえる。
まあいい。
無事ダンジョンへと入った。
まずは、スライムとゴブリンの魔石。1年以内に100個だ。
スライム100円。ゴブリン300円。
昔は、1000円くらいだったのに、施設管理費のようなものが引かれて、こんな値段になったようだ。
どちらも弱いとはいえ、命がかかって危険なのは違いないのに。
ぶちぶち、独り言を言いながら歩みを進め。
およそ5分くらいかな? 初スライム発見。
特殊警棒で、核を体から押し出す感じで攻撃を加える。
この警棒。先端がとがり、そこから3cm位の所に2cm位の長さで、8方向。放射状に棒が出ている。
これで核を押し出す。
最初は、ぶすぶすと突き刺しても、うまくいかなかったが、左手を添えてまっすぐ突き出せば、綺麗に採れるようになった。
夢中になってやっていると、早くも日が暮れて来る。
ダンジョン内は、なぜか外と、壁の明かりがリンクしている。
夜間はライトが頼りの為、天井からスライム落下してくるのに、注意が必要らしい。どうやら、光を求めて降って来る様だ。
「この位で帰ろう。えーと7、8。8個か、倒すのは慣れたが、うじゃうじゃいる訳じゃないしこんな物かな」
家へ帰ると、問いかけがくる。
「どうだった、初ダンジョンは?」
「歩き回って疲れた。洞窟じゃなくてフロアタイプだから、結構広くて」
「どのくらい、倒したんだ?」
「スライム8匹」
そう言うと、父さんの目が、わずかに細くなる。
「そうか、まあ初めてだし。先は長いな。怪我だけはするなよ」
「そうだね」
ダンジョン内の怪我は、保険が使えない。
危険な所へ行っての怪我だから、免責事項に入っている。
無論、高額な専門の保険はある。
有名チームや、公的機関はかけているようだが、個人では厳しいと思う。
さて今日は、1階にいるのはスライムだけだから、2階に行ってみよう。
2kmほどの距離を歩き、階段を下りる。
「見た目は一緒だな」
人の歩いた道を外れて、周辺を探査する。
2階は気を付けないといけない。
下ばかり見ていると、上からゴブリンの攻撃が来たりする。
まるで、テレビでタレントさんがしている、磯での魚取りの様に、岩の下など周辺を見ていく。
「いた」
そっと近づき、警棒を構える。
その時、顔に影が落ちる。
ふと見上げる。
逆光だが、小さい子供? いや、不味いゴブリンだ。
岩の上から、こっちを見下ろしているが??
向こうもこっちを見て、首をひねっている。
あれ? 知能レベルは低く、人を見ると無条件で襲ってくるんじゃなかったのか?
少し不思議な見つめ合いをしたが、足元のスライムが逃げる。
本当は良くないのだろうが、意識をゴブリンから外し、スライムの核を抜く。
相変わらず襲ってくる気配はないが、移動を始めても付いてくる。
やがて、ふっと姿が消える。
少し経って戻ってくると、躊躇いなく近づいて来て、掌を僕に見せる。
掌には、魔石? スライムの核か。
「くれるの?」
そう聞くが、当然返事はない。
だが、ぽいと投げ渡して来ると、また姿を消す。
それを拾い上げて、ウエストバッグに入れると、僕は首を捻りながらもまたスライムを探す。
やがて、ゴブリンは3匹に増えていて、ポイポイと核を足元へ投げて来る。
拾い上げて、「ありがとう」と言うと、また全員が散らばって行く。
やがて、腰に付けたウエストバッグには核が50個以上貯まり、僕は焦り始める。
これって、まずいんじゃないだろうか?
いや規定では違反じゃないが、おすすめしないと言われていた、買取を疑われそうだ。
その頃、周辺でも初心者組が、首をひねっていた。
普段姿を見ると問答無用で襲って来ていたゴブリンたちが、駆除従事者には見向きもせず。
スライムを見つけると、素早く核を抜き取って走っていく。
そんなおかしな光景が、いたるところで目撃されて、それは速やかに報告される。
「ゴブリンが、スライムの核を抜き取っていくですか?」
協会担当者も、首をひねる。
だがそんな異変も、何かの前触れかもしれない。
報告書が作成されて、速やかに上へとあげられる。
夕方になり、理解できるか不明だが、ゴブリンにお礼を言って帰る事にする。
あれからすでに、30個以上も核は増えた。
昨日の8個と合わせれば、既定の100個を達成する目前だが、どう考えてもまずい。
計数カウンターに20個のみ流して、家へと帰る事にした。
その日、ほとんどの駆除従事者が、1個か2個だったのに。
とびぬけた、20個という数字。
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