【episode.4】ピクニック〜一眼レフ〜

優太はあっという間に6年生になった。

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中学校に上がる前に家族でのんびり出かけようということで、今日は正樹と優太と犬を連れてピクニックにやってきた。

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そういえば、犬の名前は「ぶう」に決まった。

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息子がつけたのだが、どうやら好きなアニメのキャラクターの名前らしい。

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確かに見た目がなんだかぶよぶよしているので、しっくりくる名前だ。

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優太が気に入っているから良いだろう。

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3人と1匹で散歩をして、公園に着いた。

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桜はちょうど、見頃を迎えていた。

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桜満開の景色に、優太も正樹もとても嬉しそうにはしゃいでいる。

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ぶうも、心なしか嬉しそうな表情をして辺りをぴょんぴょん飛び回っている。

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そんな家族の姿を見て、幸せを実感した。

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桜の木の下にビニールシートを敷いて3人と1匹で座る。

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今日のお弁当は正樹が作ってくれた。

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綺麗な色をした卵焼きや、形がそろったハンバーグなど、私が作るよりはるかに見た目も綺麗で味もピカイチだ。

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ピクニックのお弁当を作ってくれる優しい夫がいてくれて、本当に幸せだ。

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色とりどりに並ぶお弁当を眺めて、また幸せを実感した。

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そして、、

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「じゃーん!」

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鞄から一眼レフカメラを取り出した。

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最近カメラにハマり始めて、ついに買ってしまったのだ。

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いよいよ、これを初めて使う時がやってきた。

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私にはどうしても今日、このカメラで撮りたいショットがあるのだ。

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それは、正樹とのツーショットだ。

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普段、正樹は恥ずかしいからと言って全然写真を撮ってくれない。

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優太と3人の写真は沢山あるのだが、2人だけだと写るのが恥ずかしいようだ。

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パシャ。パシャ。

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優太の写真はもちろん沢山撮る。

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正樹の写真もこっそり撮った。

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ぶうの写真だってばっちり撮った。

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あとは、夫婦のツーショットだけだ。

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優太も写真を撮りたいと言うのでカメラを渡した。

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そんな時、ぽつ、ぽつ

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雨だ。

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雨が降ってきてしまった。

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慌てて荷物を片付けて、近くの建物に雨宿りする。

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かなり激しく降ってきてしまった。

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帰るしかない。

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ツーショットは撮れなかったが、今回は諦めよう。

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雨が少し弱くなった。

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「今のうちに帰ろっか」

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正樹がそう言って歩き出した瞬間、雨でぬかるんだ土を踏んでバランスを崩した。

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助けようと、とっさに正樹に手を差し出したが、私も滑ってしまい2人で泥だらけの地面の上にダイブした。

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豪快に転んだ私たちは、全身泥だらけになった。

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頭も顔も、洋服も何色を着ていたか分からないくらいに泥まみれだ。

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「正樹、顔もう誰かわかんないよ!

誰?!笑」

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「いやそっちこそ!誰?!笑」

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お互いを見合って爆笑した。

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泥だらけの姿にテンションが上がり、海で水をかけ合うカップルのように泥のかけ合いっこが始まった。

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優太とぶうを見ると、彼らは泥の被害を受けないように私達から離れた所に避難していた。

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子供たちの方が冷静だ。

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「今度こそ帰ろっか」

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泥人間と化した大人2人と、優太とぶうで並んで帰り道を歩き始めた。

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ツーショットが撮れなくたって、幸じゃないか。

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今日はたくさんの幸せを実感した1日だった。

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後日、この日に撮った写真を現像して1枚ずつ見返していた。

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最後の1枚を見て私は急いで優太の部屋へ行った。

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「優太!この写真って、、」

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それは、私と正樹が泥だらけで笑い合っているツーショットだった。

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満面の笑みの2人が写っている。

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「お父さんとお母さんが楽しそうだから、撮っておいた」

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優太、、

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「優太、大好きー!」と叫びながら抱きつく。

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我が子ながらファインプレーすぎである。

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その写真を写真たてに入れて、リビングに飾った。

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はぁ、幸せだ。

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また今日も幸せを実感した私であった。

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#シャイな正樹

#息子のファインプレー

#幸せを実感

#たくさんの幸せ

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