第15話

国からの避難指示もあり、本州に住んでいる国民は全員緊急避難することが決まった。

.

.

.

九州と中国地方の一部は未だ復興の最中であり、海外はこんな事態にも関わらず紛争が行われているため、安全な避難先とは言えない。

.

.

.

この事から、沖縄と北海道の2県のみが避難先となった。

.

.

.

.

沖縄では、現在アメリカ軍のミサイル発射実験が行われている最中だったが、日本の緊急事態ということで実験は一時停止され国民の受け入れ態勢が整えられた。

.

.

.

.

避難先は政府からの振り分けにより、僕は北海道へ、侑斗と侑斗の家族は沖縄への避難となり、僕たちは離れ離れになってしまった。

.

.

.

.

.

.

.

避難する日の朝

.

.

.

.

僕たちは一緒に空港にいた。

.

.

.

.

「侑斗、また会おうな。」

.

.

.

.

正直、侑斗と離れるのはとても不安だった。

何があっても侑斗がいつも近くにいてくれたおかげで、今の僕がある。

.

.

.

.

「当たり前だ。隕石騒動が終わったら、またテニスやろう。次に日本一なるのは俺だけど。」

.

.

.

.

離陸の時間が迫り、僕たちは握手をして別れた。

.

.

.

.

握手をした侑斗の手には力が入っていた。僕も侑斗の手をぎゅっと握り返した。

.

.

.

.

.

僕が乗った北海道行きの飛行機が離陸した。

.

.

.

.

ふと、離陸した飛行機の機内で侑斗と握手をしたのは何度目か考えていた。

.

.

.

.

テニスの試合では試合後に必ず相手と握手をする。僕と侑斗は何十回も試合をしてきたので、何度あいつと握手をしたか数えきれない。

.

.

.

.

試合以外であんな風にあいつと握手するなんて、、

.

.

.

.

この騒動を乗り越えたら、侑斗と試合してまた握手するんだと、右手を見つめた。

.

.

.

.

窓から地上の景色を見下ろす。

これから消えてしまう東京を目に焼き付けた。

.

.

.

.

.

---------

.

.

.

.

.

落下の1週間前には国民の非難も完了し、隕石を迎える体制が整った。

.

.

.

.

地球に落下する隕石は、今度こそこれで最後だ。

.

.

.

.

今回を乗り越えればまた元の日常に戻れる。

.

.

.

.

僕たち日本国民は、隕石落下直前にも関わらず希望を持っていた。

.

.

.

.

.

.

.

.

そんな中の出来事だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る