第4話 in bloom

「………………」

照也は焦燥していた。

今日、照也はクラス内で謎の「ゴメンナサイ!」の絶叫によりクラス全体の注目を浴びてしまった。


繊細でコミュ障の照也とすれば人から注目を、視線を浴びるということは真剣を突き刺された如くの苦痛を伴う。


明日から、どの面を下げて学校に行けばいいのか、目立つということをしたくない照也には、明日の学校を休むという選択肢はない。

ゴメンナサイ事件後、学校を休んだとなれば、もう二度と学校には行けなくなる。

つまり、次回登校時に周囲の注目を一身に浴びることを意味するからだ。


照也は如何にして、学校に行くか、必死に考えた。

1、何食わぬ顔で登校。

2、むしろこれを機会に「みんな、昨日はゴメンね!」と言い、脱コミュ障を図る。

3、心の壁を分厚くし、みんなの視線をシャットアウトする。


このあたりが、現実的な線だろうか。

しかし、2は不可能だ。それが出来ているならそもそもゴメンナサイ事件は起きていない。

となれば1も無理となる。そんなメンタルがあればコミュ障になんてなっていない。

であれば3か。

いや、3はより一層の隔絶であり鎖国。3の鎖国を図ってしまったら、いかなるペリーも黒船も開国を実現することは不可能になる。


となると、未知の4を見つけるしか方法はない。

候補の考えはいくつかあるんだ。


4、全力で壁に手をぶち当て、大怪我を負う。こうすればみんなの注目は僕自身ではなく、僕の手に行く。

−いや、やはり僕に注目が集まるのは困る。それにそもそも手を怪我したらギターが引けなくなってしまう。


5、何食わぬ顔で学校には行く。そして1時間目終わりに気付かないふりをしてiPodのイヤホンをあえて外して音楽を再生し、音漏れから……

−いやいや、注目を浴びるし絶対に無理だ。決行を決意しても、直前で尻込みする自信がある。というか、この方法はなんの解決になるんだ。


まだまだ、作戦はあるはずだ。どうしたら学校に行けるか。絶対に作戦はあるはずなんだ。


考えろ。考えろ。思いつけ。思いつけ、僕。



***

と、している間に朝が来た。

解決策を見いだせなかった照也はその日、学校を休んだ。


最も取ってはいけない方法だった。

事件翌日に休むということは、照也自身があの事件を気にして、意識しているということを指す。

つまり、もう二度と学校には行けなくなるということを指している。




in bloom / NIRVANA

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