耳長人についていく
俺は耳長人たちが使った不思議な技について気になり、彼らの後に付いていくことにした。
ゴブリンは良いのかと思われるかもしれないが、現状ただ闇雲に探しても見つかる気配はないし、それなら新たに見つけた知的生命体について知っておくことの方が有益だった。
(それにこの耳長人たちを観察すればゴブリンとも出会えるかもしれないしね)
動く木を消し炭と化した彼らは動く木の残骸をそこら辺に落ちている石などを使って、削り始めた。
俺はなぜそんなことをしているのか分からず、草陰からじっと見ているしかなかった。
しばらくはそんな彼らの奇妙な行動を見ている時間が続き、そろそろ飽きてきたかな?と思った頃、動きがあった。
彼らの内の一人が何やら歓声を上げ、動く木だったものの中に腕を突っ込んでいった。
何を見つけたのだろうと彼らに気づかれないよう、音をたてず、ゆっくりと近づいていき、歓声を聞いて集まっていた彼らから丁度死角となる位置で立ち止まった。
彼らは俺が近づいていることなど全く気づかずに、歓声を上げていた一人が手にしている宝石のような緑色に輝く石に注目していた。
(あれはなんだろう?)
樹木の中から宝石が出てくるなんて聞いたことがないから宝石などではないだろう。
もしかするとこの世界では樹木の中から宝石が出てくるのかもしれないが、彼らの喜びようからは宝石や現金を手にいれた人特有の金銭欲のようなものが感じられなかった。
どちらかというと欲しかった鞄や家電を手にいれたような物欲に近しい感情が見えた気がした。
(宝石でないなら、あれは樹液の塊かなにかだろうか?)
緑色の樹液など聞いたことがないが、俺が知り得た知識からはこれくらいしか想像できなかった。
俺が宝石のようなものについて、あれこれ思考を巡らせている間に耳長人たちは動く木からは少し離れてしまっていた。
(いかん、今は彼らを追うのを優先しよう)
俺は急ぎつつ彼らに見つからないよう追跡を開始するのだった。
◇◇◇
彼ら耳長人たちを追跡して辿り着いたのは樹木をくり貫いて造られた集落であった。
彼らはそこに辿り着くや否や各々別々の樹木へと足を向けて進んでいった。
(おのおの別々の樹木を住居にしているのか)
俺は驚くのも束の間、進んでいく彼らを前に誰についていこうか考え、動く木との戦闘で司令塔をしていた人物についていくことに決めた。
彼(見た目で分かりづらいが喉仏があった)は集落の中でも中心部に聳え立つひと際大きな樹木でできた住居へと向かっていた。
そこが彼の家なのだろう。
俺は気づかれないようある程度距離を保ったままついていった。
彼が住居前まで来ると俺は家の中に侵入する穴か管がないか周りを調べ始めた。
(雨どいや通気口の類は見当たらないな)
目に見えるところでは雨どいや通気口などの侵入するのに適した場所は見当たらなかったが、彼が入って行った扉の裏手側に丁度窓が設置されていた。
幸いなことに鍵は掛かっていなかった。
(ここからなら侵入できそうだ)
俺は窓を少し開けるとするりと住居へと侵入したのだった。
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