目標は決まったが
さて、目標は決まったが具体的には何をすれば良いだろうか。
鉄製の鏃を作った種族の集落に行くことは決定事項だとしても、その肝心な集落場所がわからなければ意味がない。
とはいえ、ゴブリンが持っていたことから、ゴブリンの生活圏内に重なるように存在しているか、あるいは接しているのかのどちらかだと思われる。
(なら、まずはゴブリンを観察してみるのが良いかもしれない)
ゴブリンの生活圏内あるにせよ、隣接しているにせよ、ゴブリンが鏃を持ってたのだから、鏃を作った種族はゴブリンと何らかの接触を行っている(十中八九敵対的な接触だと思われる)はずであり、ゴブリンを観察していれば、自ずと件の種族と会えるのではなかろうか。
という訳でゴブリンを探しが始まった。
ついでに森探索も行おうと思う。
◇◇◇
ゴブリンを探して森を探索していると様々な前世では見かけなかった動植物を目にすることができた。
最初に目撃したのは馬と鹿の合の子のような動物で、馬の頭に鹿の角を生やし、鹿の胴体に馬の足を生やした何とも奇妙な姿であった。
その動物は俺をすぐに視認したが、何でもないことのように早くも興味をなくし、足元の雑草を
俺はその、のんびりとした自然のままの姿を何時間でも見ていたかったが、目的を思いだし森探索に戻った。
次に見つけたのは蛇であった。
体の色は鮮やかな赤色をしており、所々に黒色の斑点が点在していた。
大きさは先程の馬と鹿の合の子よりも一回りから二回りほどの大きく見え、何かの動物番組で見たアナコンダよりも威容を誇っていた。
その蛇も俺に気づいてはいるものの全く興味を示さず、
蛇のすぐ後に出会ったのは、木であった。
木なんて森のどこにでも生えているだろうと思われるかもしれないが、この木はそんじょそこらに生えている木とは訳が違った。
なんと、自力で根っこを土から引き上げ、森の中を歩いていたのだ。
初めの
だが、この木は違う。
少なくとも自力で歩行可能な植物など前世では見たことも聞いたこともなかった。
これぞまさにファンタジーといった光景は俺の変容した精神にもワクワクとした高揚感を与えてくれた。
そんなワクワクとした気持ちをぶち壊す存在が現れた。
そいつらはゴブリンのような笹状の長い耳を持つ人間で、男とも女ともつかない中性的な見た目をしており、手には弓と石製の鏃のついた矢を持ち、腰には黒々とした輝きを放つ石をはめ込んだ木の棍棒を下げていた。
俺はとっさに草むらへと隠れた。
今までの動植物は俺に興味を示さなかったが、ゴブリンは俺を突くという興味があるとしか思えない行動を取っていた。
現れた耳長人間が俺に何らの興味を示さないという保証はどこにもなかった。
俺は草むらから彼らを観察することにした。
彼らはゴブリンではないし、鉄製の鏃をつくった存在でもなさそうだったが、ゴブリンとの接触(一方的な襲撃ともいう)を除けば、初めての知的生命体との接触である、できるだけ慎重にいきたかった。
彼らは動く木に近付くと内二人は手持ちの弓で矢を射かけ始め、内三人が腰の石をはめ込んだ木製こん棒で動く木に攻撃を始めた。
残った一人は彼らのまとめ役なのか指示役なのかはわからないが、全体を見ながら指示を出していた。
耳長人間たちと動く木との戦闘が完全に耳長人たち優位に傾いていった頃、司令塔の耳長人が懐から何か模様が描かれた紙を取り出して口元に近付けると何やら口ずさむと途端に紙がボロボロと崩れ去り、塵と化していった。
(何が起こったんだ!?)
俺は目の前で起こった不可解な現象に驚いたが、すぐさま、それどころではない事態に直面することになった。
何やら口ずさんでいた司令塔役の目の前に人の頭ほどの大きさもある火の玉が出現したのだ。
司令塔は俺があっけにとられている間に、火の玉を動く木へとまるで超能力のようにまっすぐに射出して当てると、動く木をあっという間に炭屑へと変えてしまったのだった。
(あの不思議な技は何なのだろう?)
後からわかったことだが、それが俺の初めて見た魔法というものであった。
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