第2話 『この世界がギャグ世界であってください。そして私の前髪を戻してください。お願いします。』by春
「ねー、賀美ちゃん聞いてよー。昨日学校から帰って鏡を見たら少し前髪が伸びてたから少しだけ切ろうと思って自分で切ったら失敗しちゃったよー」
「うん、知ってる。春が教室入ってきた時五度見くらいしたもん」
「え、賀美ちゃん私のことそんなに見てたの、照れるよー」
「そりゃ見るでしょ。だって昨日まであったはずの前髪が全部なくなってるんだよ。見間違いかと思って何回も見たよ」
「私も最初はね、眉毛が出るくらいまで切るつもりだったんだよ」
「それがなんで前髪全部に繋がるの?」
「最初は予定通りに眉毛まで切ったのそれでね、鏡で確認するじゃん? そしたら私の前髪がぱっつんになってて嫌だったから縦にハサミを入れて髪を切ったんだけどそしたら次はなんかイメージ通りに前髪がならなくて次は横にハサミを入れてまたぱっつんになっちゃってぱっつんは嫌だからまたハサミを縦に入れたんだけど変なふうになっちゃって」
「ちょっと待って、え、てことは自分で切った前髪が気に入らなかったから何回もきってたら前髪が全部なくなっちゃったってこと?」
「そう、夢中になりすぎて気づいた時には私の前髪がお亡くなりになっちゃってたの」
「ぷっ! あはははっ」
「あー、賀美ちゃん親友の失敗を笑うなんて酷いー」
「ごめんごめん。いやーあまりにも面白すぎてさ」
「もー、そんなに笑わないでよー、これ本当に恥ずかしいんだからね」
「だ、だって普通二回くらいやってダメだったら美容室行くもん。それなのに自分が気に入らないからって前髪全部切るまでやるって。あはははっ」
「笑わないでよ! あーあ、この世界がギャグ世界とかだったら次の話の時には直ってるのになぁ、もうやだ」
「確かにギャグ世界なら戻ってそう。でも残念だね。ここはギャグ世界じゃないからあと三ヶ月は春のおでこ見放題だよ」
「そんな長い時間自分のおでこを晒すなんて無理だよー。斯くなる上は賀美ちゃんの前髪ちょうだい!」
「痛い痛い痛い、ちょっと春やめて後ろ髪引っ張らないで」
「お願いだよー、その肩まで伸びてる長い髪を十センチだけちょうだい」
「十センチって流石に無理。三センチくらいならあげてもいいけどあたしの髪をつけることなんてできないでしょ」
「できる。なんとかして付けるから三センチだけでもちょうだい」
「仮にあたしの髪をつけられるんだったらまずは自分の髪で試しなさい」
「えー、じゃあ今日帰ったら試してみるからできなかったら賀美ちゃんの後ろ髪ちょうだいね」
「え、やだ」
「なんでよー」
「なんでもだよ。さ、とりあえず帰るよ。また外が暗くなり始めてるから」
「あーあ、今日自分の前髪がくっ付かなかったら数ヶ月はおでこを晒すことになるのかー。チラッ、チラチラ」
「そんな目で見てもあたしの後ろ髪はあげないからね」
「賀美ちゃんのけちー」
春と賀美の放課後談話 はなさき @Mekuru153
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