姉妹校交流会編

五十 知らせ

 一月。年が明けて、寒さは日増しに強くなっていた。テレビでやっている夕方の天気予報では、お天気キャスターが毎日のように「明日は今季一番の冷え込みです」と言っている。

 雪が降ることも多く、最近の彩芽はいつも踏みしめられて固く、黒くなった雪の上を歩いて登校していた。

「おはよー! うー、寒いー」

 教室は既に暖房が入っており、室温はいい具合に温まっていた。

「彩芽、おはよー。早くこっち来なー」

 クラスメイトの一人が、天井にある暖房の吹き出し口の下から手招きする。

「あー、あったかい⋯⋯」

 先ほどまで寒い中を歩いてきた彩芽にとって、そこは極楽そのものだった。

「そういや、もうそろそろ交流会の時期だよね」

 クラスメイトが思い出したようにつぶやく。

「あー、もうそんな時期かー」

 もう一人のクラスメイトが答える。

「交流会?」

 彩芽は首をかしげた。

「あ、そっか、彩芽は中等科からだっけ。うちの学校、京都に姉妹校があってさ。毎年交流会やってるんだ。初等科・中等科・高等科で日程分かれてるんだよ」

「へぇ〜、そうなんだ。それって、どこでやるの?」

「だいたい毎年、どこかのホテルのホールを借りてやってるよ。今年はどこになるんだろー?」

 彩芽はすっかり忘れていたが、胡蝶館女学校は世間的にはお嬢様学校といわれている。

 彩芽の脳裏には、入学式の日に見た、高級車の行列が浮かんでいた。

 その時、教室の扉が開いて、担任の藤宮ふじみやが入ってきた。

「皆さん、おはようございます。配布物があるので、一枚取って後ろに回してください」

 藤宮は手に持った束から紙のようなものを何枚か取り、一番前の席へと置く。

 彩芽も一枚取り、後ろへ回す。

 見ると、手元の紙はバースデーカードのような形をしていた。

 開いてみると、「第103回 姉妹校交流会 招待状」とあった。日付は今月の十四日。土曜日だった。

「もうすぐ、姉妹校交流会がやってきます。新しい生徒会長のお披露目も兼ねた、とても重要な行事です。当日参加できる人は、今配った招待状を忘れずに持ってきてください」

 噂をすれば、だ。

 今回は、彩芽にとって初めての交流会となる。

 参加しないという選択肢はなかった。

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