四十九 報告
次の日。
四限目の授業が終わり、昼休みとなった。
雪組は、ランチトートを持って教室を出ていく者、財布を持って学食へ向かう者と様々だった。
「蘭ちゃん、お昼食べよう」
「そうね。今、準備するわ」
蘭が昼食の準備をしかけた時だった。
雪組の教室の扉が開いた。
見ると、そこにはひかりが立っていた。
「ひかりちゃん、どうしたの?」
彩芽は驚いた。同じクラスではないひかりが、雪組へやって来た理由が、分からなかった。
「お昼、食べにいきましょう」
ひかりは手に持っていたランチトートを掲げる。
昨日までとは違い、晴れやかな笑顔だった。
「いいよ! どこ行く?」
「中庭で! 北大路さんも、一緒に行きましょう」
「え、ええ」
蘭は、明らかに様子の違うひかりに戸惑っているようだったが、ランチトートを持ってついてきた。
三人は昨日と同じように、中庭のベンチで弁当を広げた。
「九条さん、北大路さん。突然呼び出して、すみません。今日は、報告したいことがあります」
「報告したいこと?」
「⋯⋯上手くいったのね」
蘭は微笑んだ。彼女には、既にひかりの言おうとすることが分かっているようだった。
「はい、そうです。昨日、先生に報告したら、先生が話を聞いてくださって。初等科に入学してからずっといじめられていると話したら、先生は真っ青になっていました。先生は、私がいじめについて話したことを、褒めてくれました」
ひかりははにかみながら言う。
「そうだったんだね。夏木さんたちは?」
「先生が夏木さんたちにも確認したら、いじめを認めたそうです。それと夏木さんたち、初等科の頃からいじめていたことを話したみたいで。先生はいじめに厳しい人なので、夏木さんたちは退学になったそうです。あと、生徒会長は辞退することにしました」
「えっ」
彼女があまりにさらりと言うため、彩芽は驚いた。
「やっぱり、こんなやり方でなってはいけないと思うんです」
ひかりの声に怯えはなく、とても穏やかだった。
彼女の顔を、冬の弱い日差しが照らしていた。
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