生徒会長選挙編

四十四 選挙管理委員会

 二学期の期末試験も終わり、十二月が間近に迫ってきた。

 季節はすっかり冬になっており、生徒は皆、コートやマフラーで防寒をしている。

 彩芽が息を吐くと、吐息が白く見えた。今朝は一段と冷え込んでいる。

 底冷えのする下駄箱には、蘭の姿があった。

「おはよう、蘭ちゃん。寒いねー」

「おはよう。そうね、早く教室に入りましょう」

 二人は連れ立って階段を上っていく。

 教室の引き戸を開けると、暖かい空気が流れ出してきた。

「はぁ〜、あったかぁ〜⋯⋯」

 彩芽はつぶやきながら、机にカバンを置く。

 その時、教室の戸がノックされた。

 戸にはまったガラスには、数人の影が透けていた。

 扉の近くにいた生徒が、引き戸を開ける。

 外から生徒たちが入ってくる。全員、生真面目そうな生徒だった。

 生徒たちは黒板の前に立つと、「おはようございます。選挙管理委員会です」と挨拶をした。

「もうすぐ、生徒会長選挙が行われます。十一月二十七日──明日から三十日まで、立候補を受け付けています。選挙演説は十二月一日の放課後に、講堂で行います。投票は二日の放課後で、体育館で行います。開票は九日の放課後、講堂で行います。皆さん、ぜひ投票してください。もちろん、立候補もお待ちしています。以上です」

 一人の生徒がお辞儀をすると、脇に控えていた生徒が雪組の生徒に紙を手渡す。それは、生徒会長選挙の流れが書かれた資料だった。

 全員に資料が行き渡ると、生徒たちは一礼し、去っていった。

 扉が閉まると生徒たちは皆、選挙に立候補するか、投票するか、ということを話し始めた。

「彩芽、どうするの?」

 隣の席の生徒が話しかけてきた。

「うーん、とりあえず演説聞いて、それから決めようかな。その日、特に予定もないし」

「立候補しないの?」

「私が!? 無理無理、向いてないって!」

 彩芽は顔の前で手を振る。

「そうかなぁ? 彩芽ならいけると思うけどなー」

「そんなことないよー」

 彩芽は苦笑しつつ、答える。

 その時、担任の藤宮ふじみやが教室に入ってきた。おしゃべりをしていた生徒は口を閉じ、他の席にいた生徒は慌てて自らの席に戻っていった。

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