四 やっと分かった?
彩芽の叫び声があまりに大きかったので、蘭本人も振り返った。
彩芽は蘭に駆け寄り、興奮した様子で話しかける。
「蘭ちゃんだよね? 小さい時、よく一緒に遊んでた! ねぇ、私のこと、覚えてる?」
蘭は、やっと思い出したか、という顔で「ええ、そうよ」とだけ返した。
「知らない子ばっかりで不安だったけど、知ってる子がいてよかった。一年間、よろしくね!」
「⋯⋯あなた、わたくしを友人だとみなしているわよね?」
「え? うん」
彩芽はきょとんとしていた。なぜそんなことを聞かれるのか分からない、という表情だった。
「昔ちょっと仲が良かったからって、友人ぶらないでくれるかしら」
蘭は吐き捨てた。クラス発表を見た時よりもさらに冷たい目だった。
「えっ⋯⋯でもそれって、また仲良くなれるチャンスがあるってことだよね?」
「はぁ?」
蘭は大きな目をまんまるにしている。まさかこのように返されるとは思っていなかったのだろう。
「私たち、一回離れ離れになったよね。でも、また会えた。もう一回友達になろうよ。今日から!」
彩芽は右手を差し出す。握手のつもりだったが、蘭はそれを無視して「⋯⋯勝手になさい。行くわよ、
霧島は蘭の後ろをついていくと思いきや、主人の方に向かう様子はない。
彩芽が声をかけようとした時、霧島が口を開いた。
「蘭様はあのようなご様子ですが、実際はとてもお優しい方でいらっしゃいます。彩芽様、お嬢様をよろしくお願いいたします」
穏やかな口調だった。霧島は彩芽に頭を下げると、蘭の後を追った。
少し遠くで、「何をもたもたしているの、霧島!」と急かす声がした。
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