第4話(4)革命的戦術?

「あ、新たなポジション……?」


「そうよ!」


 ななみの問いにフォーが頷く。


「ど、どういうこと?」


「それは今から説明するわ! まずレム!」


「あ、ああ……」


「アンタは『ゲームキーパーソン』よ!」


「ゲ、ゲームキーパーソン……?」


「そう、良いチームには必ず良いゴールの番人がいるものよ。現代サッカーでは、守りはもちろんのこと、正確なキックなどで攻撃の第一歩も担う……」


「ふ、ふむ……」


「さらに最後方からゲームの流れを観察することが出来る……これはまさしくキーパーソン以外の何者でもないわ!」


「ほ、ほう……」


「だから、ゲームキーパーソン、略してGKに任命するわ」


「おおっ! 分かった!」


「それならゴールキーパーのままで良いじゃない……」


 拳を握るレムを見つめながら、ななみは小声で呟く。


「次に、クーオ、アンタは『ガーディアン』よ!」


「ガ、ガーディアン……?」


「そうよ、ゴール前に絶対的な守護者として君臨するの!」


「ぜ、絶対的な……」


「ゴール前に侵入する敵は容赦なく潰しなさい!」


「おおっ! 分かったべ!」


「……反則はダメよ?」


「ははっ、それくらい分かっているべ」


「ふふっ、なら良いわ」


「はっはっはっ!」


「二つ名じゃないんだから……別にディフェンダーでもセンターバックでもストッパーでも良いでしょうに……」


 機嫌良さそうに笑うクーオを見つめながら、ななみがまた小声で呟く。


「……そして、ゴブとルト!」


「お、おう!」


「はいっす!」


「アンタたちは左右のサイドを任せる。重要なタスクをこなしてもらうわ」


「タ、タスク?」


「使命ってことよ」


「し、使命っすか……」


「そう、現代サッカーではサイドの重要性が年々増している……サイドの攻防を制すものがゲームを制すと言っても過言ではないわ!」


「……」


「………」


 フォーの説明にゴブとルトがごくりと息を吞む。


「そんなアンタたちは『エレベーター』よ!」


「エ、エレベーター?」


「そうサイドを絶え間なくアップダウンして、ボールを運び、繋ぐ……そんな様はまさしくエレベーターよ!」


「エレベーターか!」


「ガンガンアップダウンするっすよ~!」


「なんかあんまりスピード感が感じられないんだけど……」


 盛り上がっているゴブとルトを見つめながら、ななみがまたまた小声で呟く。


「そして、スラ!」


「は、はいラ~!」


「アンタは『プロバイダー』よ!」


「プ、プロバイダー⁉」


「そう、攻守の繋ぎ役だけに留まらず、相手からボールを奪って味方に供給したり、チャンスを提供したりするの!」


「な、なんかかっこいいラ~」


「かっこいいだけじゃなく、とっても大切な役回りよ。チームの要と言ってもまったくの過言じゃないわ!」


「うわ~」


「まあ、なんかそれっぽいことを言っているけど……」


 目をキラキラと輝かせるスラを見つめながら、ななみがまたまたまた小声で呟く。


「そして、トッケ!」


「zzz……」


「寝るな!」


「う~ん?」


「アンタは『イントルーダー』よ!」


「うん?」


「相手ゴール前の危険なエリアに侵入するの!」


「……要は隙を突けってことかみゃあ?」


「大体そんな感じよ!」


「ああ、それなら得意みゃあ」


 トッケが頷く。ななみがまたまたまたまた小声で呟く。


「まあ、役割としては分かりやすいのかな……?」


「以上!」


「ちょ、ちょっと待て!」


 レイブンが声を上げる。


「なによ?」


「ワ、ワシのポジションは⁉」


「そんなのどこでも良いでしょ」


「どこでも良いことはないじゃろう!」


「アンタが言うことをしっかり聞くとは思えないのよね……」


「偏見じゃ!」


「う~ん、じゃあ『タイラント』で良いんじゃないの?」


「なに?」


「フィールド上に暴君として君臨しなさいよ。得意でしょ?」


「ワ、ワシは言うほど暴君ではないぞ⁉」


「フィールドでは聞き分け良くする必要はないのよ」


「!」


「エゴイスティックに振る舞ってもらって構わないわ。それでチームの勝ちに繋がるのなら……あ、暴力プレーは駄目だからね」


「う、うむ……」


「じゃあ、ミーティングは以上!」


 フォーは部屋から出ていく。


「既存のポジションをちょっと言い換えただけじゃないの? 大分中二病的な感じがしたけど……大丈夫なのかしら……」


 ななみが不安そうに首を傾げる。それからしばらくして……。


「……試合終了! またアウゲンブリック船橋の勝利だ! これで練習試合5連勝だ!」


「す、すごいわね、フォーちゃん!」


 ななみが興奮気味にフォーに声をかける。フォーは胸を張る。


「まあ、アタシにかかればこんなものよ」


「それにしてもすごいわよ、未経験者なのに……」


「はっ? 失礼ね。数百試合以上経験しているわよ」


「え? す、数百試合⁉」


「そう、FI〇Aやウイ〇レでね」


「ええっ⁉ ゲ、ゲームの知識……?」


 ななみは唖然とする。

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