13.「だい、じょうぶ…です…。」

「だい、じょうぶ…です。」


「クソッ、どういうことだ!?」



"このような事態はデータにはありません"


"おそらく『強化』に体が拒絶反応を示したのでしょう"


"その大きな一因として、リョウ様の異世界産の魔力が挙げられるます"


"緊急でステータスアップが必要でしたら、『DPショップ』にてステータスアップの飴等をご購入いただくことで一時的に解決出来ると考えられます"


"このような事態は異例中の異例ですのでモンスターが拒否されるのでしたら、『強化』は控えることをお勧めします"



 蹲るアインスの背をさすりながらアシストさんの説明を聞いていると、どうやら原因は俺のようだ。『救済措置』とやらがどんなものかは分からないが、少し不安になってきた。

 暫くすると、が良くなってきた。一時は本当に死にそうだったから、一先ず安心…だな。


「大丈夫か…?」


「ご心配をおかけしてしまい、申し訳ありません。今は一層生命力が増したように感じてます。」


 アインスは乱れた髪を一瞬で整え涼しい顔で立ち上がった。アシストさんから受けた説明をそのまま話すと、一応納得はしたようだが、『強化』は続けて欲しいと言われてしまった。俺の力が体を巡る感じが嬉しいとか…少し言い方を考えて欲しい。

 …念のためステータスを確認しておくか。



アインス Lv.1

種族:海人

職業:ダンジョンサブマスター、ボスモンスター

状態:通常

HP:8500/8500

MP:24000/24000

物攻:B

物防:B

魔攻:A+

魔防:A

スキル:≪賢者の書≫ ≪翻訳≫ ≪アイテムボックス≫ ≪鑑定≫ ≪転移≫

称号:なし

加護:なし



 状態異常は無さそうだな…って、HPが1000も増えてる!?なんか物防も上がってるし。俺が使ったのは1Pだけの筈なんだが…。残DPを確認しても大きく減った様子は無い。これも異世界産の魔力ってやつのの影響か?というか、あっちの世界に魔力あったのか…。


「なあ、アインス。本当に平気か?体に変なところとか無いか?」


「…主はお優しいですね。本当に何もありませんよ。先程は少し驚いてしまっただけですので。」


 驚いたで済ませるなよ…。嬉しそうにしているアインスから視線を召喚台へと戻す。

 てか、このDPがお得になるのって、自分にも適応されるのだろうか。でも、『強化』はするなって言われたしな…。



"リョウ様ご自身の『強化』でしたら、問題ないかと思われます"



 あ、そうなの?じゃあ、試しにMPを上げてみようかな。念のため1Pだけ…。



リョウ=ウグイモリ Lv.1

種族:半人

職業:ダンジョンマスター

状態:通常

HP:30/30

MP:5/5

物攻:E

物防:F

魔攻:G

魔防:F

スキル:なし

称号:【異界の者】

加護:なし



 あれ…?変わってない。失敗か?



"いえ、確かに『強化』は正常に行われました"


"おそらく、上昇した数値が小さかったため、表示される際に切り捨てられたのでしょう"



 まじかよ。試しに更に『強化』を続けると、10Pで1上げることが出来た。本来の100倍かかってることになる。逆にアインスの『強化』は100分の1で済んでる。

 まあ、俺が戦う予定は無いから良いんだが、不安っちゃ不安だな…。



***



「まさか、あんなに高値で売れるなんて…。」


 両手にかかるお金の重さでリリアは思わず顔をにやけさせてしまう。

 その理由は例のダンジョンで手に入れた透明なコップだった。透き通ってて綺麗とはいえ、5000リルにでもなれば良いかと思っていたので、買取所で100000リルと言われた時には何の冗談かと思った。けれど、ギルドの受付嬢の目利きは確かだ。市場にはいくらで売られるかは知らないが、少なくとも自分が普段使っているような店には並ばないのだろう。そう思うと少し惜しくもあるけど、高級なものを使う趣味はないし大商人や貴族に売れるような伝手も無いのでこうする他無いのだと自分に言い聞かせる。

 これでは、新しいダンジョンを発見した際の報告報酬の2000リルが霞んでしまう。冒険者の義務とは言え、あのダンジョンのことを話してしまうのはもったいなく感じたが、あのコップのようなアイテムがぽんぽん出てくるとは思えないし、自分たちは運が良かった方だろう。これで、一週間は身入りが無くてもどうにかなる。

 パーティで山分けしやすいように硬貨を両替してもらうと、ケビンとシーザーの休んでいるであろう宿へ歩き出した。

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