6. その人物は俺の姿を認めると、恭しく首を垂れた。
その人物は俺の姿を認めると、恭しく首を垂れた。
年齢は外見から判断すれば二十代前半だろうか。腰まである長く美しい銀髪は一つに束ねている。じっと彫刻のように動かないその横顔は今まで見た全ての人間よりも美しかった。
数秒間の放心から気がつくと、慌てて彼に駆け寄る。
「えっと…とりあえず、そんなにかしこまらないで楽にしてくれ。」
「お気遣い感謝致します、我が主。」
こちらを見つめる翡翠色の瞳は真っ直ぐ俺を貫いていた。
そこには見下したり試したりするような色合いは無く、純粋な好意を感じる。
"『サブマスター召喚』の成功、おめでとうございます"
"ご存知の通り、DPによって召喚された生物はダンジョンマスターの配下となります"
"配下はDPを用いることで『強化』や『蘇生』が可能です"
"配下はダンジョンマスターの下す如何なる『命令』にも背くことは出来ません"
"ただし、物理的に不可能な『命令』や配下が心情的に強く拒否する『命令』を強行し続けると、忠誠度が下がったり、『強化』や『蘇生』の成功率に悪影響を与える可能性が高くなりますので、お気をつけください"
配下…そうか、彼はこのダンジョンのモンスターなんだ。
コアと一体となりダンジョンを持ちダンジョンモンスターを従える存在。ようやく俺はそのダンジョンマスターとしての最低ラインに立てたようだ。
"彼のステータスを確認してみましょう"
ステータスの確認…これって他人のものも見られるのか。配下だからか?いや、『ステータス鑑定』機能のおかげかな。
"ダンジョンマスターの『ステータス鑑定』機能は自身のダンジョン内にいる全ての生物に対して必ず完全に機能します"
"サブマスターのステータスを表示します"
名無し Lv.1
種族:未定
職業:ダンジョンサブマスター
状態:通常
HP:7500/7500
MP:24000/24000
物攻:B
物防:C+
魔攻:A+
魔防:A
スキル:≪賢者の書≫ ≪翻訳≫ ≪アイテムボックス≫ ≪鑑定≫
称号:なし
加護:なし
先程確認した自身のステータスと似たような画面がスクリーンに写る。といっても、その数値は俺のものとは雲泥の差があった。
いや、強っ!何の訓練も受けていない生身の人間である俺と比べちゃいけないんだろうが、文字通り桁が違い過ぎる。HPやMPもそうだが、魔攻の評価A+って…!
能力値はH〜S+で評価され、
H < G < F < D < C < B- < B < B+ <
A- < A < A+ < S- < S < S+ <<< N.D.
の十五段階となっている。
N.D.はこの世界のシステムでは測定出来ないほど並外れていることを表す。一応設定されてはいるもののこの評価が使われたのは、五千年前、神が気紛れに地上の生物に似せた器に受肉したものを測定した時のただ一度であったという。ただの言い伝えだとは思うが、この世界ならあり得ないことはないのだろう。
後はスキルか。≪翻訳≫、≪アイテムボックス≫、≪鑑定≫はまあいい。いや、それらも彼の高い魔力を持ってすれば大変有用なスキルなのだが、それらが霞んでしまうこのスキル。
≪賢者の書≫:この世界に存在する全ての魔法に高い適性を持つ者のみが得られる先天性スキル。MPの消費を抑え、新たな魔法の習得や上達に補正がかかる。
具体的にはスキルの熟練度にもよるが、初期段階でMP消費は約三分の一、習得・上達にかかる補正は約五倍だそう。
一周回って楽しくなって…は来ないわ!頼もしいけどな!
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