【呪術配信】底辺呪術師(天才)、チャンネル登録者数300万人の美少女配信者を怪物から助けるシーンが拡散されて、大人気ペア配信者デビューしてしまう
第19話 呪術配信#3|戦闘マシーンと化した桜守惣司がぐう畜過ぎるwww【切り抜き】
第19話 呪術配信#3|戦闘マシーンと化した桜守惣司がぐう畜過ぎるwww【切り抜き】
古い家屋によくある急こう配の階段だ。
民家の階段が急なのは工費をケチるためというが、城の場合は襲撃の際の足止めになるからと聞いたことがある。
この領域にも、そんな意図があるのかもしれない。
階段を駆け上がり、二階へ出る。
そこに、また別の怪幻がいた。
「ひぃ、ひぃ、桜守くん、どう、したの? わぁ⁉ なにあれ!?」
「
「なにそれ?」
「江戸中期の妖怪画集に描かれている妖怪だ」
確か、音色を満足に聞いてもらえなかった琴が付喪神になったという話だったはずだ。
弦が貼られているべき場所に白い毛がふさふさに生えていて、デメキンのような目玉と、びっしりそろえた臼歯が頭の方に付いている。
「なんだか、悲しい音色だね」
・敵にまで情けを掛けれるアリスちゃん優しい
・もしかしたらあの花魁さんが使ってた楽器なのかも
・
・本当に思いを伝えたい相手の心には響かなかったんか……そんな悲しい話ある?
優しい人たちだ。
けど、怪幻ってのはそんなに甘い奴じゃない。
「うるさっ!?」
アリスが突然、両耳を塞いだ。
理由は簡単。
琴の怪幻の音色が止んだかと思うと、悲しい調べから一転、和ロックのような激しい曲を奏で始めたからだ。
アンプでも繋がれたかのような爆音が鼓膜を打つ。
三半規管を強く揺する。
・音割れwww
・うるせぇwww
・音量注意!
・忠告ありがとう! 遅いけどw
・怨霊注意!
・だれがうまいこと言えとw
耳が壊れるほど強烈な旋律がアリスの平衡感覚を奪う。
糸が切れた人形のようにふらりと崩れる彼女の隙を、すかさず襲い掛かろうと、前方から駆け寄ってきている。
「破」
だから、弾き飛ばした。
・は?
・いま何があった?
・明らかにリーチより遠いところにいた怪幻が吹っ飛んだんだがwww
・桜守さん遠当てもできるのかよwww
・法力ってやつか?
「法力じゃないな。俺、肉とか普通に食うし」
・なんだその理論w
・迷言でたwww
・語録に突っ込んどけ!
・じゃあどうやったんだよwww
「いまのはただの猫だましです」
・ね こ だ ま し で す
・いまのは法力ではない。猫だましだ。
・猫だましで化け物がやられるわけないだろ!
・やられとるやろがい!
・音系のモンスターを音技で倒すぐう畜
・鬼! 悪魔!
・ね、ねこだましは衝撃波だから……(震え声
誰が鬼悪魔だ。
どう見たって正当防衛だっただろ。
と俺が言い返せば「そうじゃない」だとか「ズレてる」とかのコメントが流れていく。
「先を急ぐんで、またちょっとコメント返せなくなります」
・そういや戦闘中によそ見してんじゃねえよw
・あんまりにも自然に会話に入ってくるから気にしなかったけどおかしいだろwww
・戦闘に集中してもろて
・余裕綽々で草
・戦闘より追跡の方が神経使うんだな……
・ただの戦闘マシーンじゃないか!
なんかコメントの流れる速度が上がった気がする。
たぶん気のせいだ。
◇ ◇ ◇
少し進むと、また階段があった。
さらに進むと、また階段にぶち当たる。
階段を上ると廊下の先に階段があって、その先にも階段は続いている。
「桜守くん、どうしたの?」
「同じところをぐるぐる回ってる気がする」
確認するためにも目印を刻んでおくべきだ。
懐から、式神を作ったあまりの和紙を取り出し、亜音速で振り抜き柱に傷を付ける。
「あ」
悪気は無かったんだ。
ただちょっと傷を開こうとしただけで。
それを、力加減間違ったね。
柱がすっぱり両断されてしまっている。
「まあいいか。どうせ潰す領域だし」
・とにかくヨシ!
・どうして……いやマジでいまどうやって柱叩き斬ったwww
・仕事雑で草ァ
と、ちょうどその時だ。
(ん? なんだこれ……白煙?)
斬りつけた柱の切れ目から、ドライアイスをたいたようなスモークがあふれてきた。
不思議に思って柱を叩き割ってみれば、そこに、大きな煙管を抱えたタヌキがいる。
「なんだお前は、
あっちはたちの悪いトリックオアトリートみたいな話だった気がするが、こいつもそうなんだろうか。
ごめん、タバコは20歳になってからなんだ。
だから拳で解決しようとして、気づいた。
畳からふすまがどんどんどんと突きあがり、広間を迷路のように作り変えていく。
「桜守くん! これって花魁の怪幻が逃げるときに使った妖術だよ!」
「わかってる! 二度同じ手を食うかよ!」
呪術配信第二回で作ったアリス用の「
ちょうど、こういう場面での活躍を期待して。
貫け。
「
音すら置き去りにして、青白い光の灯った和紙がタヌキの怪幻へと飛び掛かった。
淡青色の残光が尾を引く先で、痩躯の狼が鋭い牙をぎらつかせ、タヌキの喉元を、引き裂いた。
・おおおお!
・新種の式神だ!
・速ええええええ
・後出しから先制攻撃でとどめ刺したwww
・空気の壁をぶち破る音がしたなwww
・ソニックブームだ!
・※なお末端構成員である
息の根を止められたタヌキの怪幻が、黒い霧になって消滅する。
展開されていた迷路の術は不完全に終わり、両目に映る景色が姿を変える。
気が付けば、俺は再び、最初にこの領域に踏み込んだ時と同じ部屋に立っていた。
「その女の、何が気に入りなんした」
花魁の怪幻もそこにいた。
「あちきの何が、気に食わなんした」
瞳に涙をためて、締め出すように声を絞っている。
「お答えくんなまし!」
二つ間違えてるぞ。
俺はお前が愛した藤吉郎じゃない。
だから俺に聞いても意味がない。
そしてもう一つは、
「いや、アリスはただの商売仲間だぞ……?」
人をカップルみたいに表さないでくれる?
「ちょ、ちょっと桜守くん! アタシは本気なんだけど!?」
「そうか、応援だけはしておいてやるよ」
「なんで他人事なの! 意中の相手は桜守くんなんだけど――」
ぼふんと音がして、アリスに渡していた「
見ればカンザシを逆手に持った花魁の怪幻が、いつのまにか近間に忍び寄っていて、カンザシの先をこちらに突き立てている。
「ふ、ふふふ」
肩を震わせて、花魁の怪幻が冷笑を浮かべる。
「分かりんした。この女狐がいなくなれば、あちきが一番になれる。ずっと隣で生きていける。そういうことでありんしょう?」
違うぞ?
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