第8話 スクール水着でランドセル背負ってるオッサン

「ちょっと待てよ。あんたは俺達に合う装備を選べるのか?」


鮫島は尋ねた。

確かにそうだな。


「大丈夫よ。私はこう見えても凄腕の職人なのよ」


「凄いな!」


思わず感心してしまった。


「フフン♪ そうよ。凄いのよ!」


胸を張っている。

なぜかボンテージにチリチリパーマでふとった姿の女店主。

凄いのは認めるが、見た目が残念過ぎるだろう。


「それじゃあ、お願いします」

「任せておきなさい!」


自信満々のようだが、本当に大丈夫なのか?


「まずは、そっちの剣士の子ね」


愛奈を連れて行った。


「あなたにはこれね」


渡されたのは革製の鎧だった。


「軽装タイプね。動きやすいわよ」


愛奈は試着してみた。

うん、似合ってるな。


「どう?」

「似合っているよ」


俺は素直な感想を述べた。


「そうかな?」


嬉しそうだ。


「次に、これに着替えてくれるかしら?」


愛奈にも渡される。


「あの、下着もですか?」


なんとまぁ、セクシーな白下着。


「当然じゃない」

「でも、こんなの恥ずかしいですよぉ」


顔を赤らめる。


「いいから早くしなさい!」

「はいぃ!」


愛奈は慌てて更衣室に入って行く。……なんかドキドキするなぁ。

しばらくして出てきた。


「どう?」


先程までの可愛らしい感じとは打って変わって大人っぽい雰囲気になっている。


「とても綺麗だな」


正直に言った。


「ありがとう」


照れている。


「その下着には魔力が込められているの。鎧の下に装着しておくと便利よ」


「そうなんだ」


「さすがは防具屋さんですね」


「当然よ」


ふんぞり返っている。


「次は戦士さんね」

「よろしく頼む」


レオンは頭を下げた。


「あなたは戦士だから、この装備が良いでしょう」


渡されたのは金属のプレートが付いた皮の服だった。


「防御力は高いけど重いのが難点ね」

「なるほど」


そして俺の番だ。


「あなたにはこれね」


渡されたのは……スクール水着だ。

しかも旧型。

紺色の生地に白いラインが入っている。

背中の部分には平仮名で名前が書いてあった。

マジで!?

これが勇者の装備なの!?

せめて普通の制服とかにして欲しかった。


「ぷっ、嶋野さんだけ……」


愛奈が俺を笑う。


着ては見たが、女子用だ。

股の辺りがもっこりしててハズイ。


「どうしたんだ?」


不思議そうにしているレオン。


「実は……」


俺は事情を説明した。

すると……。


「なんだってぇえええ!」


激怒されてしまった。


「お前! ふざけるんじゃねえぞ!」


鮫島までキレ出した。


「いくらすすめられたとはいえ、女子用のスクール水着でランドセル背負ってる奴と異世界で戦いたくねーぞ!」

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