第4話 キョロキョロ

急いで着替えを済ませ、今春から通う高校に向かう。

自転車を漕ぎ、電車に乗っている時にふと目が会う女子がいた。

「あの子、なんだかおどおどしているなぁ。」

目の向こうにいる女子はなんだか落ち着かない様子で、周りをキョロキョロ見ている。

電車は朝のラッシュから少し外れているので、自分も女子も座っており、反対の人が認識できるくらいに空いている。

高校のオリエンテーションは中学校の制服で来て欲しいとの案内なので、制服を着ている。一方の女子も中学校の制服を着ていた。

『もしかして、向こうも高校のオリエンテーションなのかなぁ。』

翔はそんな事を考えいたが、流石に初対面の女子と話す勇気はないので、目的地の駅まで寝て過ごした。

そして、高校に着き、体育に集まる。

体育館の入り口には、新入生歓迎の横断幕があり、その中を通る。

座席は男女で分かれているくらいで、自由席になっている。

僕はあまり、目が良くないため、前から3番目の席に座った。まだ、生徒はまばらで左右の隣の席は空いたままだった。

そして、時間になるにつれ、段々と席が埋まっていく、時折話し声が聞こえるのは同じ学校から来た生徒たちで、笑い声が聞こえる。

「隣いい?」

ふとした時に、話しかけられた。

「はい。どうぞ」

僕はそう返答し、顔を上げた。

その生徒は、身長も背格好も似ていて髪は長く目は隠れていたが、美形で中世的な顔立ちなのはわかった。

「何処中ですか?」

ふいに興味が湧いた僕は隣席の男子に声を掛ける。

「あぁ、僕は他県だから県内じゃないんだ。」

ボソボソといった声でそう言った。

「僕も他県からだから一緒だね。」

「そうなんだ、僕は同じ中学の人居ないから1人で進学して、ちょっと緊張しているんだよ。」

「同じだね。僕も出身中学の人誰もいないから緊張してた。」

そんなやりとりがいくつか交わされ、次第にお互い声が弾むようになる。

「まだ、名前言ってなかったね。僕は、高輪勉。よろしく。」

「こちらこそ、望月翔です。よろしく高輪。」

「一緒のクラスだといいね。望月。」

「そうだね。何かの縁で話せたから一緒だといいね。」

新しい学校で、初めて顔見知りができ、何とか高校でも過ごせそうと思っていた。

『電車の子も話せる友達とか出来たのかなぁ。』

ふと、電車でキョロキョロしていた女子の事を思い出していると

「これから新入学生のオリエンテーションをはじめます。」

とアナウンスがあった。

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