第3話 人生を変える本
ここはどこだろう。
気を失ってしまっていたようだ。
でもさっきまでの場所じゃない。いや、むしろこの世ではないのかもしれない。そこはそう思わざるを得ないほどの暗闇だった。永遠に続いている暗闇。
そして、気が付くとそこには女性が立っていた。
艶のある黒髪と、吸い込まれるような瞳を持った、美しい女性だ。
彼女が店長の女性なのだろうか。
彼女は僕の語彙力、いや、この世のすべての単語をもってしても彼女の美しさは表現できないだろう。筆舌に尽くしがたい、というやつだ。
確かに彼女は立っている。
地面があるわけではない。
それでもそこに立っているのだ。
彼女は言葉を発しなかった。思考を巡らすように、僕の頭の中で美しい女性の声が響いた。
「ここはあなたの精神の中で最も深い場所です。」
「本には不思議な力があります。それは人の人生を変える力。その本と出逢う前と後で、その人の人生を変えてしまう。それほど大きな力です。」
「本来、決闘書店ではあなたの人生を変えた本、つまり精神の最も奥に存在する本の主人公となって、この場所で相手と決闘を行っていただきます。ですが、あなたには相手がおりません。あなたの相手はあなた自身。己との闘いに打ち勝った時、あなたはより良い人生を送ることができるでしょう。」
彼女はそう言って僕に1冊の本を渡してきた。この表紙は見覚えがある。
『変身 著:カフカ』
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