第2話 己との闘い
「『水沼様、決闘のお申し込みを受理しました。ですが、あなたには心から決闘を望む人物がいらっしゃらないようです。』だってさ。なんで水沼って名前知ってんだ?お前のアカウント、本名じゃないよな?」
当然だ。SNSを本名でやるほどの勇気は、僕にはない。
「うん。しかも決闘を望む相手がいないってどういうことだろう?なんでそんなことがわかるの?会ったことがあるわけでもないのに。もしかして心でも読まれてる?」
「まさか(笑)」
松本くんは冗談だと思ったのか、大声で笑い飛ばした。
でも、僕は少し動揺した。だって本当にいなかったから。このDMはいたずらで、当たったのは偶然だと思う。所謂コールドリーディングってやつだ。
人生で嫌いな人が1人もいなかったわけじゃない。
だけど命を懸けてまで殺したい人はいない。
読書で白黒つけるっていうのはよく分からないけど、決闘って普通、命がけでやるもの。そこまでのリスクを背負ってまで殺したい人間がいる人のほうが少数派だろう。
むしろ自分のことが嫌いな人間のほうが世の中多いんじゃないか?
僕みたいに。
「なんかまた来たぞ」
松本くんは画面をこちらに見せてきた。
『あなたは自らのことを嫌っているようですね。ではあなたに闘ってもらう相手はあなた自身にいたしましょう。決闘を乗り越えた先により良い人生が待っていることを祈っています。』
「なんなんだこいつ。ただのいたずらかよ。」
松本くんは少し不機嫌そうに言った。たぶん彼の思っていた以上に退屈な結果だったからだろう。
でも僕は違った。
「どうして?」
そう呟いたとき、僕は深い闇に包まれた。
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