三章-③






 綾人以外の三人がお互いの気持ちを確かめ合ってから四日が過ぎた。

 元の世界とは違い、新たな世界には三人を止める者は何人なんぴとも居らず、三人は進むところまで進み、同室で暮らすようになっていた。

 三人は訓練や世界について調べること以外では大体一緒に行動していた。

 しかし、その中でも陸だけは偶に別行動を行なっていた。

 ただ、それは綾人の行動パターンを把握するため。

 陸の計画が次の段階に移り、その情報が必要になったのだ。

 この四日間の間、陸は自分で綾人の行動を見張り観察して情報を得ていた。それと共に、美羽と千佳の証言によってある程度の行動パターンを把握することにも成功していた。

 その中でも、陸は綾人が必ず夜に行う自主訓練に目をつけていた。

 陸はそれを第二王女に伝え、最終段階に移行することを決める。





 陸は部屋を出ると、日に一度ある第二王女との密会を行うため、美羽と千佳とは別行動を始める。


 「おはようございます」

 「ああ」


 陸がいつもの部屋に入ると、そこにはいつも通り第二王女が先に着いており、丁寧に挨拶される。

 陸は無愛想に返していつもの席に座る。


 「早速本題に入りますが、何かわかりましたか?」


 陸が座ると同時に、第二王女が進捗を尋ねる。

 それに対し陸は。


 「アイツの行動パターンは把握した。後は実行に移すだけだ」


 と、準備を済ませたことを伝える。

 第二王女はその報告を受けると、目を鋭く細めて陸に決行日を尋ねる。


 「それでは、いつ決行になさいますか?」

 「二日後だ」

 「理由を聞いても?」

 「二人の欲を爆発させるためだ」

 「…………わかりました」


 第二王女は陸の発言に一拍置いて了解を示す。

 陸の発言から体を重ねていることを理解し、昨日も行っていたことを察する。

 一瞬胸を刺す痛みを覚えるが、それを理解していたため、第二王女は態度に出すことなく対応し続ける。

 その後、話すことがなくなったため、第二王女はそこで話を終わらせようとするが、陸によって止められる。


 「それでは、あとは――」

 「ああ、ちょっと待ってくれ。一つ頼みがある」

 「何でしょう?」

 「えっと…………ここだ。ここの部屋を当日使わせてくれ」


 陸は地図を取り出し当日に使用する部屋を貸すよう第二王女に頼む。

 第二王女はそれに対し深くは聞かず、頼みを引き受ける。


 「わかりました。あとは用があればミアにお伝えください。それでは」

 「ああ」


 第二王女は挨拶して部屋を出て行く。

 陸は少し部屋に残り時間をずらし出て行き、いつも通りの行動を行った。



十一



 二日後。

 陸と第二王女が計画を実行する。

 といっても、実際は陸と美羽と千佳。

 三人は日々激しく求め合っていたが、二日前から陸の提案により自重するという体でお預けをしていた。

 そのせいで、三人ともが発散できず悶々とした二日を過ごした。

 二日と短く感じるが、17歳の性欲は計り知れない。

 それに、今まで興味があれど行っていなかったことで、それが物凄い快楽を得ることだと知り、タガが外れていたのを辞めさせられるのだ。

 訓練で多少は発散できようが、それは微々たるもの。

 そのため、三人は借りた部屋に到着すると、鼓動を早め密着し始める。


 「ここで何するの?」


 美羽は陸の腕に胸を押し付けながら期待するように尋ねる。

 千佳は美羽が言葉を発すると同時に逆の腕に抱きつく。

 そんな二人のせいか、自分の性欲のせいか。はたまた両方か。陸は気分が昂まり二人を連れてベットまで歩き。


 「な、なに?!」

 「きゃっ!?」


 二人を強引に押し倒す。

 美羽と千佳はそれに驚くが、陸の顔を見て察する。

 陸は二人のことを気にすることなく最初に目についた美羽の唇を奪う。


 「ん…………んぅ……」


 二人は唇を重ねすぐに離し、お互いの唇を挟み合い、また離す。


 「私も」

 「あ……」


 千佳はそんな二人のキスを見て我慢できなくなり、陸の顔を美羽から離し。


 「ん…………んあっ…………んちゅ……」


 陸の唇を奪うと舌を捩じ込み激しく貪り始める。

 美羽は強制的に離され、千佳と陸の激しいキスを眺める。が、それは一瞬。

 体を起こすとすぐに陸の後ろに回り、陸の下着の隙間に手を入れ熱く盛り上がった部分を優しく撫で始める。

 陸は美羽のその行為を受け入れながら、千佳とのキスを続け、密着する美羽の太腿に右手を這わせる。

 美羽は陸の右手が太腿に触れるとゾクゾクし始め、それが股に寄っていくとその衝動を増幅させていく。

 そして。


 「んっ…………」


 甘い声を陸の耳元で溢す。

 陸はそれを聞くと更に興奮し、気持ちを昂らせていく。

 千佳は美羽の声を聞くと、陸の顔から手を離し、服の裾に手を侵入させ、腹筋を撫で始める。

 少し経つとそこから上に優しく手を這わせ服を持ち上げ、指先に突起を感じると、その周辺を優しく円を描くように撫で始める。

 陸はその瞬間に少し体を震わせる。

 千佳も美羽も、その反応に少しの嗜虐心と愛おしさを感じ気持ちを昂らせていく。

 そして――――。



十二



 俺は日中をいつも通りに過ごし、夜中に行う訓練を始めていた。

 夜中に行う理由は、日中は誰かが監視しているため、本気で訓練を行うことができなくなったからだ。

 恐らく騎士団長が部下に命じてやらせているのだろう。

 そんなわけで、夜中に訓練を行うことも日常になってしまった。

 訓練を開始して二時間。

 俺はいつもの時間通りに訓練を切り上げ、自室に帰り始める。

 すると、いつもは聞こえないはずの女の嬌声が微かに聞こえてくる。


 「はあぁ…………窓ぐらい閉めろよな」


 愚痴を溢しながら歩みを進める。

 ただ、そこで予想外なことが起きる。


 「だんだん大きくなってないか? もしかして、それは無いよな…………」


 歩みを進めるごとに大きくなっていく嬌声に違和感を感じるも、帰路であるため進んで行く。

 俺はいつもの通り道に一つの部屋があることを思い出し、そこを使っているのではないかとなんとなく察する。

 建物の壁に沿って右に曲がる。

 すると。


 「……んぁ…………あっ…………う、ぅん……」


 という女の嬌声が部屋の窓から聞こえてくる。

 しかし、そこで違和感を感じて窓を凝視して、俺はあることに気づく。


 「窓が、開いてない?」


 その事実を知り、俺はある可能性を抱く。

 第二王女と前田陸の策略。

 あくまで可能性ではあるが、かなり高い確率で当たっていると確信する。

 ただ、その可能性を考えた瞬間にあることが頭をよぎる。

 俺はそのせいで少し気分を悪くしたが、まだ確認を行っていないため気を取り直して声の聞こえる窓に近づいていった。

 だんだん窓が近くなってくると俺は《真実の瞳》を発動させ、窓から中が見えるタイミングにチラッと中を覗いた。

 脳内に流れる情報は止まることなく流れ続ける。

 しかし、それが俺の気分を害していく。


 「知人のそれを見せられるなんてな…………気持ち悪るっ…………」


 窓から離れながら一言呟く。

 窓の中で見たものは、美羽と千佳、そして前田陸の情事。

 聞こえてきた嬌声は幼馴染二人のもので、それをわざと魔法で外に拡声していた。

 そこで俺は完全に第二王女と前田陸の策略であることを確信する。

 目的は俺の嫉妬心を呼び覚ますとか、絶望させるとかそんなとこだろう。

 劣等感と嫉妬心を抱える前田陸が考えたに違いない。

 優越感でも感じたかったのだろう。


 「気分を害したことには成功してる。か…………」


 俺は少し落ち着き、冷静に考え始める。


 「ただ、何故これを見せたのか。だな…………」


 第二王女ではしないであろうことに頭を巡らせる。


 (わざわざこんなことしなくても良かったはずだ。適当な日に招待状でも送り、やって来たところで俺の計画を知っていたと告げて《勇者》を渡すように言えばすぐに終わる。その際に周りに騎士でも配置してれば完璧だ)


 第二王女側になって考えることで、疑問を解決しようと試みる。

 その結果、案外早く結論に辿り着く。


 「もうすぐ終わるから前田陸の考えを聞き入れた…………これだな。ははっ、もう終わるか」


 結論を出してスッキリさせると、俺はすぐに考えることをやめた。

 それから部屋に到着するとシャワーを浴びてすぐに眠りについた。

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