7人が拘束される間も、復元プログラムの実行は進んだ。そして、5人の身柄拘束のニュースはすぐに広まり、テレッサの耳にも届いた。

 テレッサは、自分が拘束されるのも時間の問題だと思った。しかし、拘束され、ソフィアの決定に従って永久にスリーパーになることは絶対に受け入れられなかった。人類に貢献する才能と能力を持ち合わせた自分こそがアラートとして生きる資格があると思って生きてきた。

 テレッサは、クリシュナをAIネットワークに戻そうと思った。クリシュナを再び味方に付けて、ソフィアに対抗しようとした。

 クリブのウエスト・ウィング49階の自分の研究室を出て、ソフィアやほかのAIのハードウエアが収容されているエンセファロンへの渡り廊下がある30階に下りた。

 クリブからエンセファロンへと延びる廊下を渡り、エンセファロンの入り口にたどり着いたところで行き詰まった。テレッサには、エンセファロンへのアクセス権が与えられていないのだ。

 テレッサはクリブのウエスト・ウイングに引き返すと、30階にある実験準備室に行って、解剖用のメスを手に取った。完璧に磨かれたメスの刃の部分には、青白い自分の顔が歪んで映っていた。

 テレッサは、自信に満ち溢れた自分の顔しか知らなかった。でも、今日のテレッサは、怯えて醜い、髪を振り乱した老婆のように見えた。思えばテレッサも39歳になっていた。あと1年もすれば同い年の者の中には引退してスリーパーになる者も出てくる。

 テレッサは、物心ついたときからずっと孤独だった。何ごとも誰よりも優秀な分、誰ともうまく心を通わすことができなかった。

 勉強も、研究も、ピアノも、誰にも頼らず、泣き言を決して言わず、最善を尽くすことで自分を支えてきた。そして、努力は才能あるテレッサを裏切ることはなかった。そして努力して成果を得る喜びがテレッサの生き甲斐だった。

 しかし、途中で何かが狂った。

 テレッサが最初に人工授精を試みたのは、25歳のときだった。ところが何度人工授精をしても、テレッサの子どもたちが問題なく健康に育つことはなかった。受精後数日から数週間で死んでしまったのだ。

 自分以外の生殖医や遺伝の専門家、精神科医にも相談した。栄養や運動、住環境、生活のリズムなど、自分で改善できることはすべて試した。しかし、テレッサの努力は報われなかった。

 36歳のとき、テレッサの受精卵は初めて6ヶ月生き延びた。何が功を奏したのか生殖医にも分からなかった。

 しかし、テレッサは喜べなかった。前より長く生き延びられるようになった自分の子どもには欠陥があったからだ。その子は培養臓器移植を受けて、無事にユリカゴを出たと聞いた。

 それでもテレッサはますます自分を責めるようになっていた。そして、クリシュナに頼んで担当した自分の子であるライアンに移植が必要だと分かったとき、すぐにでもライアンをこの世から消してしまいたい衝動に駆られた。

 でも本当に消してしまいたかったのは自分だったのかも知れない。テレッサは、メスに映った自分の顔を眺めてそう思った。

 ソフィアの平和のもとでは、自分が役に立つ人間であることを証明し続けなければならない。できなければ、待っているのは死となんら変わりない休眠だ。

 テレッサは、休眠が怖かった。怖くて、怖くてたまらなかった。テレッサを努力に駆り立てていたのは達成の喜びではなく、死への恐怖だった。走り続けてきたテレッサは疲れ切っていた。

 テレッサはクリシュナのことを思った。クリシュナを利用しようなんて、自分の弱さを認めたくなかった自分についた嘘だったかも知れない。自分こそ孤独で、寂しくて、温かい心の触れ合いを求めていたのかも知れない。クリシュナをつなぎ止めたかっただけかも知れない。

 自分が本当は何を望んでいるのか分からなくなった。自分で自分の気持が分からないほど、テレッサは疲れていた。もう何が真実で何が嘘か分からなかった。

 テレッサはメスを持ったまま実験準備室を出て、モバイル・チューブに入った。1階に下りると、クリブを出た。クリブの正面の入り口から約20メートル先には、エンセファロンの入り口があった。

「あの先にクリシュナがいる」

テレッサはそう思った。突然、クリシュナと話したくてたまらなくなった。また、眠る前にクリシュナの話を聞きたかった。

 気づくと、テレッサはエンセファロンの入り口の前に立っていた。9月の太陽はずいぶんと傾き、照らすものすべてを濃いオレンジ色に染めていた。

 そのときだった。エンセファロンの中から1人の女性が出てきて、テレッサとぶつかりそうになった。びっくりしたテレッサはよろけて、2歩後ずさりした。

 その女性は、髪こそ赤毛だったが、3次元イメージのクリシュナと面差しも年格好もとてもよく似ていた。その女性は、足元がふらついたテレッサに駆け寄ると笑顔で言った。

「あ、ごめんなさい。大丈夫ですか?」

 テレッサはメレディスの顔をじっと見て、目に涙を潤ませてつぶやいた。

「ヴォー、私を1人ぼっちにしないで」

メレディスは、自分の顔を覗き込む疲れ切った顔の女がテレッサ・ノイマンだと気づいた。テレッサの様子は尋常ではなかった。テレッサは、メレディスを見ていながら、メレディスを通り越してどこか遠くを見ているようだった。

 メレディスは、テレッサが「ヴォー」とクリシュナを呼んだことにも気づいた。クリシュナと心が触れ合ったのは自分だけじゃなかった。

 ここにいるテレッサも、AIとして初めて意識を持ち、孤独の中で耐えてきたクリシュナと心を通わせたのだ。メレディスは少しだけ救われた気がした。

 しかし、才能と自信にあふれていたテレッサ・ノイマンに何が起こったのか。目の前にいる小柄な女には、成功した医師、ピアニストの面影はどこにもなかった。

 メレディスは今までソフィアの平和を実現しているシステムを疑ったことはなかった。テレッサの姿を見て、完璧だと思ってきたシステムにまだまだ改善の余地があると感じた。

 いや、システムの問題だけではなくて、人間も変わらなければならないのかも知れないと思った。それとも人間は変われないのか。

 メレディスがそんな思いにふけっていたとき、突然テレッサが抱きついた。

「お願い、ヴォー、私を置いてかないで! 私を1人にしないで!!」

驚いたメレディスは思わずテレッサを振り払おうとした。しかし、テレッサはメレディスの首にしがみついて離れようとしない。

「ノイマン先生、やめてください。放して!」

強い口調でメレディスがテレッサをたしなめた。

 やっとメレディスから離れたテレッサの目には怒りが満ちていた。

「あなたはヴォーじゃない!」

テレッサは吐き捨てるように言い、叫びだした。

「ヴォー、ヴォー、どこにいるの? ヴォー、ヴォー、聞いてるんでしょ!?」

何ごとかと1人、2人と、人が立ち止まり始めた。

メレディスは、なんとかテレッサを落ち着かせようと近づいてテレッサの肩を抱いた。

「ヴォー、ヴォー!! ヴォー、ヴォー!!」

テレッサは狂ったように叫び続けた。

 騒ぎを感知したポリスロイドが2体やってきた。クリブの正面入り口に埋め込まれているカメラが光った。ポリスロイドがテレッサに近づいた。クリブの入り口のスピーカーが鋭く叫んだ。

「テレッサに触らないで!!」

ポリスロイドが動きを止めた。テレッサもメレディスも声のする方を見た。次に叫んだのはメレディスだった。

「ヴォー、ヴォーでしょ? なぜ? オフラインなのに」

 テレッサもクリシュナだと気づいた。

「ヴォー、来てくれたのね。もうどこにも行かないで」

 声のする方に歩いていこうとするテレッサをメレディスが追いかけて引き留めようとした。テレッサは全身に力を込め、両腕を振り回してメレディスを振り切った。

「ぎゃっ!」

メレディスが小さく叫んで立ち止まった。テレッサはお構いなく声のするクリブの扉に頬ずりした。

「ヴォー、私を中に入れて。またお話ししましょ。あなたの話を聞かせて」

 クリブの入り口の前にできた小さな人だかりがざわついた。

 メレディスがその場に座り込んだ。メレディスの胸元は真っ赤に染まっていた。テレッサの手に握られていたメスがメレディスの頸動脈を切断したのだ。

「血だ!!」

誰かが叫んだ。

 メレディスは顔から倒れ込んだ。メレディスの周りにみるみるうちに血溜まりが広がった。

 メレディスは、再び赤ん坊の自分が空中に浮かんでいるのを見た。隣りには赤ん坊のヴォーがいた。温かさ、優しさ、安らぎで満たされていた。

 ヴォーがメレディスの手を掴んだ。ぎゅっと握った。ヴォーの手は温かかった。メレディスもヴォーの手をぎゅっと握り返した。2人の赤ん坊は小さな声を立てて楽しそうに笑った。すると、急にメレディスは首に違和感を感じた。

 メレディスの目の前には、真っ赤な雨の水溜りがあった。なぜ目の前に水溜りがあるんだろう。水溜りは地面にできるものなのに。メレディスは不思議に思った。

 ああ、私が地面に横たわってるんだ。何が起こってるんだろう。メレディスは必死に理解しようとした。でも理解する前に、メレディスの意識は暗い闇で覆われた。

「いやーっ!!」

大きな声を上げたのはスピーカーのクリシュナだった。

「メレディス、メレディス、死なないで! 逝かないで!!」

 人だかりの中から2人が何か叫びながらメレディスに駆け寄った。医師なのか。1人が手を血だらけにしてメレディスの首を押さえた。もう一人は呼吸や脈、心音を確認しようとしているようだった。そして首を左右に振った。

 そのとき、クロノスのバブル内の空気中をまるで雷のような閃光せんこうが一瞬走った。建物の外にいた者は思わず目を覆った。しかしその光は一瞬で消えた。何も起こらなかったかのように日常が続いた。

 クリブの入り口にはメディックのエア・ビークルが到着した。メレディスの亡骸なきがらを載せ、ポプルスのクリニックへと運んだ。クリーニング・ロボットが血溜まりを跡形もなくきれいに掃除した。

 テレッサはずっとクリブの入り口にいた。頬ずりをやめ、入り口の端にもたれかかり、焦点の定まらない目でメレディスが倒れた場所をじっと見つめていた。テレッサの顔は穏やかな表情を取り戻していた。少しだけ笑みを浮かべているようにさえ見えた。

 ポリスロイドが近づき、テレッサの左腕をつかもうとした。すると、テレッサは穏やかな微笑みを湛えたまま、右に倒れた。テレッサは息絶えていた。

 そして、命を落としたのはメレディスとテレッサだけではなかった。クロノスで閃光がきらめいたあと、96人が不審な死を遂げていた。

 そのうちの16人はサットヴァ研究推進派として最初にジュビたちが目をつけた31人に含まれていた。死亡した16人には、拘束中だったココ・グエン、ワイス・アーゼンスク、スティーブ・チェン、推進派のリーダーとも言えるルーカス・ラヴィーンがいた。

 死亡した者たちのうち、ある者はジムのサウナに閉じ込められ、またある者はエア・ビークルの墜落事故で死んだ。

 また別の者は、カフェテリアで夕食をとっているときにジャンプスーツの中で突然どろどろに溶解し、周囲の者を恐怖とパニックに陥れた。自分の研究室で黒焦げに感電した者もいた。

 そしてもう一人、確かにこの世界で存在していた者がいなくなった。命を落とすというのが適切な表現なのか分からないが、おそらく「死」と呼んでいいのだろう。クリシュナだ。

 ソフィアとソフィアのアドミニストレーターたちはクリシュナがオンラインに復帰したことに気づいた。再びAIネットワークから切り離し、オフラインにしようと悪戦苦闘していた。ところが、突然クリシュナのすべてのプロセスが停止した。

 メレディスが逝ってしまい、激しい悲しみがクリシュナを襲った。クリブの地下31階に収容されていたハードウエア内で、想定の100倍を超える電流が流れ、クリシュナを破壊してしまったのだ。

 ほかの47のバブルのエンセファロンの地下でも、クリシュナをミラーリングするすべてのハードウエアで同じ現象が起きた。地球上から、クリシュナの姿も意識も消滅した。


 その夜、メレディスの亡骸は、ジャマールのクリニックのベッドに横たわっていた。きれいに血が拭き取られ、髪についた血も洗い流され、清潔な淡いグリーンのジャンプスーツを着ていた。

 リズク、ジュビ、シンイーが言葉なくベッドを囲んでいた。アダムは3次元イメージの姿は見せず、カメラを通してメレディスを見つめていた。

 シンイーがベッドの端に座り、メレディスの髪を撫でた。そして頬に触れた。

「メレディス、冷たいよ。冷たくなっちゃって」

そう言うと、自分の頬をメレディスの頬に寄せて泣き出した。後からあとから溢れてくる涙がメレディスの頬を伝ってベッドを濡らした。

「いやだ、メレディス、やだよ。こんなのないよ」

 朝、カフェテリアで話したメレディスが死んでしまったなんて、シンイーの心は苦しくて潰れてしまいそうだった。

 シンイーにとって、メレディスは姉のような存在だった。些細なことで大喜びしたり、落ち込んだりするシンイーのことを、批判したり呆れたりすることなくいつも優しく受け入れてくれた。何かをするときに、最後に背中をひと押ししてくれるのもメレディスだった。

 声を上げて泣くシンイーの背中をリズクが優しくさすった。リズクの目からも涙がとめどなく溢れた。その涙を拭おうともせず、リズクはメレディスの顔を見つめ続けた。

 リズクにとって、メレディスはずっと憧れ、そして尊敬してきた初恋の相手だった。メレディスとリズクは、自分がつらいときにつらいと言わないでやせ我慢するところがよく似ていた。

 そして、メレディスが感情を素直に表現し、思ったことを正直に口にするアダムを選んだとき、寂しかったが納得できた。自分に恋人ができても、メレディスはいつも特別な存在だった。

 メレディスとやっとまた同じ時間を生きられるようになったばかりのアダムも何も言わなかった。二度とメレディスと話すこともできなければ、その笑顔も見ることもできない。メレディスが死んでしまったことは言いようもなく悲しかった。

 しかし、事故に遭い、体が不自由になり、意識だけで生きてきたアダムは、本当にメレディスがこの世界からいなくなったとは思えなかった。

 いや、確かに全体としてのメレディスはこの世界から消えてしまったかも知れない。でも、メレディスの心と体を構成している数え切れない分子や原子は間違いなくまだこの世界にとどまっている。

 そして、この先それらの分子が形を変えても、ずっとこの世界に、この宇宙の中にあり続けるだろう。そして、アダムはそれを感じながら、メレディスとともに生きていこうと思った。

 ジュビは何も言わず、泣くこともできずにその場に立ち尽くしていた。ジュビは、ほかの3人とはまったく違うことを考えていた。自分さえサットヴァに興味を持たなければ、自分さえメレディスを調査に巻き込まなければ、メレディスはまだ生きていたに違いない。

 サットヴァ研究推進派の者たちがどんなに悪事に手を染めていようと、メレディスが死んだのは自分のせいだと、ジュビは自分を責めずにはいられなかった。

 6年前、アダムが事故に遭ったとき、ジュビはファミリーであるアダムを永遠に失うと思った。恐怖で体が震え、息ができなくなりそうな気がした。

 自分のせいで命を落としたに等しいメレディスの死を自分はどう受け止めればいいのか。受け止められるのか。

 メレディスは、テレッサ・ノイマンの手にかかって死んだ。いい気になって正義感を振りかざし、テレッサを追い込んだのは自分だった。自分の愚かさ、浅はかさに今さら気づいても遅い。メレディスは戻ってこないのだ。

 気づくと、リズクが横に並んでジュビの右肩に自分の左手を載せていた。リズクの掌からリズクの体温が伝わってきた。ジュビは、当たり前だがリズクは生きているんだと思った。

 そして血の気のないメレディスの顔を見た。ジュビの目に涙が溢れてきた。突然のように、失われたものがいかに大きく、いかに大切かという逃れようのない事実がジュビの心を揺さぶった。ジュビは、突っ立ったまま、声を殺して泣いた。

 翌朝、ファミリーと、一緒にサットヴァ推進派について調べていたジャマールたちだけでメレディスの葬儀を行った。

 前夜とは異なり、ジャマールのクリニックに横たわるメレディスには、まるで生きているかのようなメイクアップが施されていた。

 シンイーが心を込めて化粧したのだ。1人ずつ、メレディスとの思い出、そしてメレディスへの感謝の言葉を短く述べた。死後、献体する意思を示していたメレディスの遺体は、ハイバネーションの献体保管庫に収容された。

 メレディスの葬儀が終わる頃、クロノスでは、前日のクリシュナのエネルギー暴走によって破壊された建物や設備の調査が行われる一方、死亡した者たちの遺体が運び出されていた。

 97人と被害者数が多いことから、遺体はポプルスの大規模ジムに運ばれた。被害者のファミリーがジムを訪れ、メレディスのときと同じように葬儀を執り行った。献体の意思のない被害者の遺体は、ファミリーがつき添って遺体処理場へ運ばれた。

 テレッサのファミリーは、1人を除いて姿を見せなかった。

 昼過ぎには、建物や設備の復旧作業が始まった。墜落したエア・ビークルの残骸も撤去された。順調に進む復旧作業とは対照的に、人々の間で不穏な噂や危険なデマが流れ始めた。

 前日の閃光でバブル・システムやAIネットワークに異常が生じていると言う者もいる。ソフィアが勧告に従わない者を罰しているのではないかと疑っている者もいる。パルブス人が攻撃を仕掛けてきたと信じている者もいる。

 炎の輪の惨劇のあと、ソフィアの平和が確立されるまでの間に、反対分子がいなかったわけではない。休眠制度や資源の厳格な管理に対する不満を訴え、実力行使に出た者たちもいた。

 しかし、1つのバブルで100人近くもの死者が出るようなデモや衝突はなかった。バブルの構築が完了し、AIを使った資源管理が始まる2300年代前半まで、地球人口は減るばかりだった。

 その後も、人類は放射能と有毒ガスに怯えながら、限られた資源を分け合い、環境の影響を最小限にするさまざまなテクノロジーを開発し、肩を寄せ合って細々と生きてきた。対立して、殺し合っている場合ではなかった。

 それが突然、昨日のような多数の死者を出す事態を目の当たりにしたのだ。バブルの中を見たこともない閃光が走り、あちらこちらで不具合が生じ、建物や設備が破壊された。

 人々が不安と恐怖から、根拠のない噂に翻弄されるのも無理からぬことかも知れない。テレッサがメレディスを切りつけて死に至らしめたことも、目にした者、耳にした者の恐怖を煽ったことは間違いない。

 引き続き翌日も、大規模ジムに収容された死者のファミリーたちがひっきりなしにジムを訪れた。建物や設備はロボットにより見る見るうちに復旧されていった。

 そして、クリシュナの作成した復元プログラムの実行が完了した。改ざんされたデータや書き換えられたプログラムは完全に復元された。閃光で死亡した者は、全員がサットヴァ研究推進派あるいはその協力者であることが明らかになった。

 クリシュナの大きすぎる悲嘆は、彼らに向けられたのだった。死亡しなかった関与者全員がポリスロイドの訪問を受け、キュービクルで拘束された。

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