後日談

後日談 海水浴 part1

◯ last episode より少し前のお話


ざばぁーん。


砂浜に押し寄せる波と燦々と輝く太陽。


8月下旬の残暑のなか、俺たちは海に来ていた。


「ねぇねぇ、おにぃ!スイカ割りやろうよっ!!」


「え~、どこまで泳げるか勝負したい~~!」


「ちょっとお姉ちゃん!日焼け止め塗り忘れてる!!」


メンバーは、俺と愛菜さん、星野、麻里奈の計四人。


この四人の組み合わせというのは、初めてな気がするが先に海に行くことになった経緯を話したい。






「そう言えば、わたしって夏らしいこと一回もしてないかも……」


もはや、日課になりつつある愛菜さんとの通話。

週3のペースで電話がかかってきて、完全に愛奈さんの暇つぶし兼お喋り相手に認定されてしまっていた。


「祭りは諸事情でこれなかったし、大学の友達とどこか遠出したりしないんですか?」


「友達は、彼氏と一緒に遊んでばっかだもん……」


「あぁ……なんかすみません」


完全に地雷だった様子で、通話越しでも唇を尖らせながら拗ねている愛菜さんが容易に想像できた。


「うわーん。たーくんにイジメられたぁ…!満華ちゃんに報告しちゃうもん!!」


「別にいいですけど……」


「あ〜!自分が彼氏だからそうやって、余裕ぶってるのいけないんだぁ〜〜!」


「余裕ぶってるわけじゃないです」


だって、仮に愛菜さんが星野に言ったとしても、どうせ「あ〜はいはい、大変だったわね」で終わる未来が容易に想像できる。


「ふんっ……いいもん。私なんてどうせ、夏の思い出をひとつも作れずにこの夏を終えちゃうんだ。いいもん……」


「はぁ……愛菜さんは、どうしたいんですか?」


「そりゃもちろん、夏らしいことしたいよ」


「夏らしいことですか……」



何も具体性がないことに頭を抱えつつどんなものがいいか自分なりに考えてみる。

もう既に8月下旬を迎えているが、夏らしいことで出来ることはなにかあるだろうか。


祭りは終わってしまったし、虫取りは小学生しか喜ばない。

あと、夏らしいと言えば、BBQとか。


いや、でも場所も確保しないといけない上に、食品の衛生管理も大変だ。

この気温の中ではすぐに悪くなってしまう。


あと、残っているとしたら……


「海水浴とか……ですかね」


「海水浴かぁ……」


「ダメですかね」


いくらシーズン中とはいえど、こんな急に言うのはよくなかったか。

割と妙案だったと思ったのだが。


「めっちゃいいね!大賛成!!」


いいんかい。

声音があまりノリ気でなさそうだったから、ダメかと思ったがどうやら好感触だったらしい。


「そうと決まれば、さっそく満華ちゃんにも話してみなきゃ!おーい!満華ちゃん!」


スマホをおいたまま、星野を探しに行ったようだ。

というか、また星野の家にいるのか。

毎日のように居座ってるように思えるけど。


以前、星野と通話してる時も言っていたが、愛菜さんの侵略が止まらないらしい。

このままだと数ヶ月後には本当に住み着いてるかもな。


そんなことを考えていると、愛菜さんが戻ってきた。


「満華ちゃんもオッケーだってさ。なんか、すごい楽しそうにしてた」


「ちょ、ちょっと!?わたしはそんな風にしてないっての!」


愛菜さんの声が耳に入っていたらしく、電話越しに抗議する声が聞こえる。

何はともあれ、海水浴に行くことは決まったらしい。

俺も海パンとか準備しなきゃな。


今年は行く予定でなかったため、当然ながら何も用意していない。ショップに今頃行って果たして満足するものは買えるのだろうか。


不安は残るが、愛菜さんと行く日にちなど細かいことを決めて電話を終わろうとしたところだった。


「あ、そう言えば。たーくんって妹さんがいるんでしょ?」


「はい、いますけど……」


麻里奈のことを話題にしたことはあまりないが、急にどうしたのだろうか。


「よかったら、妹ちゃんも一緒にどう??」


「麻里奈もですか??」


麻里奈と直接接点のない愛菜さんからこういうことを言われるのは意外だった。


「うん。いい機会だし……ダメかな??」


「ダメってことはないと思いますけど」


おそらくだが、誘ったら来るだろう。

最近、あまり一緒に出掛けることもなかったから。


「なら、誘ってみてくれない?このままだと私が恋人のデートに割り込んでる空気読めない人みたいになっちゃうから」


あぁ、なるほど。

腑に落ちた。


「わかりました。後で聞いてみます」


「くれぐれもよろしくね」


「なんで、そんなに必死なんですか。別に俺たちは全然気にしませんよ」


「二人が気にしなくても私が気にするの。私としては、当日に水着姿でたーくんを悩殺して満華ちゃんたちにジト目されてるたーくんをニマニマしながら眺めるスタンスって決めてるんだから」


「変に気を遣ってるかと思ったら全然そんなことないじゃないですか!変に場を乱さないでください」


「あれ?でも、たーくんが私の水着姿で興奮しなければ済む話だよ?」


「っ――」


「あ〜、当日が楽しみだなぁ〜!じゃあね、たーくん。妹さんによろしく!」


そう言い残して一方的に電話を終える愛菜さん。

残された俺は、だいぶ苦い顔をしていたと思う。


「精神統一でもしてから行くか……」


そんな無意識な呟きが出てしまうほどだったから。



――――――――

後日談始めます。

たくさん話は考えてあるんですがどれから書いていこうか悩んでました。

悩んだ末、時系列通りにやろうと。こうすれば、変に混乱しませんし。

新作も3万文字くらい書けてはいますが、最低でも一章は書き終えてから投稿するつもりでいます。めちゃくちゃ頑張って来週の水木辺りですかね。

それに伴い後日談も毎日投稿は厳しいのでご承知ください。




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