第19話 side満華
「そう言えば、軍団対抗リレーの練習って明日からか??」
ソファで横になってゴロゴロしていると、キッチンの方から拓実の声がした。
本当は、スッと起き上がってもいいのだが、私がまるでアイツと話したいみたいに思われるのが癪だったからダルそうにゆっくりと起き上がる。
「なに〜?なんか言った??」
我ながら、わざとらしい。
本当は一言一句しっかりと聞き取れていたのに。
「だから、軍団対抗リレーの話だって。練習は明日の放課後からだよな?」
「ああ、そのことね。多分、そうじゃない?興味ないけど」
体育祭の本番が着々と迫ってきている。
体育祭当日の日程のシナリオが完成していく中、それに沿うように体育祭の当番、出場競技なども決まってきている。
私の学校の体育祭は、全校生徒、最低でも二種目に出場しなければならないという決まりがあった。
私の場合、一つは借り物競争、そうして二つ目がさっき話に出た軍団対抗リレー。
元々、運動は得意な方ではあったが、私は出場にあまり積極的ではなかった。
しかし、学級委員という立場もあるし、何よりキャラがあるため、やる気のないような態度は許されない。
だが、軍団対抗リレーというのは、この体育祭でトリを務める競技であり、チームの優勝の行方を左右するものでもある。
当然ながら、相当プレッシャーがかかるものであり。
そんなものにわざわざ出場したくない。
応援席で黄色い声援を出しているだけ………
私の計画した予定ではそうだったはずなのに………
「興味ないのに出場させられて可哀想だな。まさか、純粋な実力主義だなんて思いもしなかったよなぁ?」
ざまぁ…w
言葉にはしていないけど、私にはわかる。
コイツは、私が軍団対抗リレーに選出されたことを面白がっていると。
「そういうアンタだって、100メートル走選抜に選ばれてるじゃない」
やらかしたのは、私だけではない。
リレーの選抜は200メートル走が選考対象だけど、100メートル走選抜は体力テストの計測タイムで選抜させるのだ。
コイツは、今年から100メートル走選抜の新競技が追加されることを知らずに体力テストで本気を出したらしくまんまと選ばれていた。
「じゅ、授業を真面目に受けてたら、選ばれただけだ。不真面目なお前と一緒にしないでもらいたい」
「それを言ったら200メートルも同じじゃない?選考レースだと知ってて手を抜く方がよっぽど悪質だと思うけど??」
「べ、別に手を抜いたりはしてない。勝手に脚の力が抜けてっただけだ」
「無意識ってこと?生粋の性悪ってことなの?」
「それは否定しないけど、お前に言われる筋合いないからな」
「煽ってきたのはそっちなんだし、因果応報よ」
「はぁ……部活の出し物もあるのに…放課後まったく準備できないなこれ……」
軍団対抗リレー同様、100メートル選抜も放課後に練習がある。
正しいクラウチングスタートの姿勢とか走り込みとかを練習するらしい。
100メートル走に練習はいらなくない?と思ったけどこの競技が午前の部のトリを飾る競技らしく出場者に強制的に練習させることによってよりハイレベルな競技にしたいらしい。
部活動の出し物と被ることもあるが基本的に部活より放課後練習が優先させられる。
だから、前日とかに練習があった時に部活の前日準備に参加できない。他の部活なら人もいるので一人や二人減ったところでどうもならないが、拓実の部活は彼を入れて二人。
一人が休むと詰むのだ。
だから、拓実は選ばれた時に色々な意味で死にそうな顔をしていた。
可哀想だとは思うけど……決まりだから仕方ない。
でも、恵梨さんの友人に頼むとかすれば問題は解決するんじゃない??
なんてったって生徒会長の妹。
人望はあるに決まっている。自分から手伝うと挙手してくれる人はたくさんいるはずなのに。
「恵梨さんの友人は誘えばいけるんじゃない?恵梨さんの」
「俺の友人には期待してないのか……賢明だけど、なんか複雑だな」
自覚があるらしく言い返してこない。
「頼める友人なんてそんなにいないでしょ?恵梨さんに頼みなさい」
私が見たのは一人だけ。いっつも滝路くんと二人でいるのだ。
「俺もそうするつもりだったんだけど、恵梨さんは生徒会長の協力も断ったらしいんだよな。なんか、これは家庭部のやつだからって……」
「へぇ…そうなんだ………」
数が多い方がいいはずなのに……そこまで部員だけにこだわる理由はなぜ……?
そこまで、拓実と二人でなんて……こだわる必要……
ふたり……?
拓実とふたりきり?
もしかして……恵梨さんって……
いやいや、そんなわけない……だって、アイツだし……
でも、もし、もしも………それが本当だったら……
「ね、ねぇ……」
「どうした……?」
「拓実は、他の人が出店を手伝うってどう思う……?」
「そうだな……取り敢えず、恵梨さんが要らないと判断してるし、それでいいんじゃないか??」
「つまりふたりでいいってこと……?」
「今のところはな」
「そっか……」
なんでだろ………ちくちくする。
別に文句なんてないのに。
ただ、アイツが恵梨さんと二人きりで出店を開く。
ただそれだけのことなのに……
それだけなはずなのに。
どうして、こんなに苦しいの……?
―――――――――――――――――――――――――――――――――
たくさんのコメントありがとうございます!
忙しくて返せてませんがちゃんと読んでます。
体育祭まであと一週間ちょい、あと二話ぐらいで当日迎えたいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます