『死刑にいたる病』 殺人鬼とシンクロしていく恐怖

 連続殺人犯の起こした事件を調査する、素人探偵の話。


 主人公は、連続殺人犯の男性から、事件の調査を頼まれる。

 彼は元パン屋で、主人公は常連だった。

 男性は「九件目の事件は自分が犯人ではない。だが、裁判で自分の犯行だと決めつけられた」と主張。

 主人公なら、真犯人を突き止められるかもしれないと、依頼してきたのだ。


 弁護士事務所にバイトとして配属された主人公は、事件の関係者を洗い出す。 

 


 事件を追っていくうちに、自分が殺人犯の息子かもしれないと考えるようになっていく。

 自分の母親が過去に虐待を受けており、殺人犯と同じ施設に入れられていたのだ。

 そこで、母は妊娠をしたという。


 その事実を知った主人公は、犯人と精神的な繋がりを感じてしまう。


 ここで注目していただきたいのは、ガラスのシーンだ。


 主人公と犯人の顔が、段々と重なっていくのだ。

 また、ガラスが抜けて主人公と犯人が手を取り合う。

 特に指を執拗に絡ませようとしてくる。


「本当に主人公と犯人は、血が繋がっているかもしれない」

 と本気で思わせてくれた。


 だが、これが実は巧妙な演出であると後にわかるのだ。

 

 終盤でもガラス越しに語り合うシーンがあるので、二人の距離感を確かめていただきたい。




「この映画は、リアルなリシアルキラーの描写より、コメディになりかねないフィクション性を強調している」

 という評論家の声があった。


 監督の意図もあったんだっけか。


 それを象徴するのが、冒頭の裁判傍聴シーンだ。


 これは、吹かざるを得ない。


「阿曽山大噴火がおるwwww」

 

 と、内心で笑っていた。


 御本人も「文春オンライン」でコラム書いてはるし。


 が、阿蘇山さんを入れたのも案外フィクション性を高めたかったのかも。


 となると、監督の思惑に見事ハマっているわけか。

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