『TITANE/チタン』 フランス版『鉄男』

 主人公は幼少期の事故で、頭部にチタンを埋め込まれたショーガール。


 彼女は頭部のケガの影響か、車に異常な執着を持ち、殺人の衝動を抑えられない。

 自分のファンを名乗る男を殺害後、車に導かれるままセックスを行う。


 おまけにバイセクシャルで、物色した女性宅で行為に及ぶ途中で相手を殺害。

 だが、女性宅はシェアハウスだった。

 証拠を自宅ごと焼き払うも、指名手配される。


 主人公は行方不明者の中で自分とそっくりな少年を発見し、なりすます。


 息子を失った消防士も、たいした確認もせずに主人公を息子と確信し、同居を始める。


 だが、車との間に子供を妊娠していた。




 自分であらすじを書いていても頭おかしくなるくらい、狂気じみた不思議な映画だ。


 

 塚本晋也監督の代表作、『鉄男』を思い起こさせた。

 あれも、鉄を体内に埋め込んだことで自我が崩壊していく話だ。


 本作は、冷徹な殺人マシーンだった女性が、無償の愛を与えてくれる消防士と触れ合うことで、人間臭さを取り戻していく。

 消防隊に配属されるが、他の隊員には冷ややかな目で見られる。

 疑いの目を向けるものも。

 しかし、消防士の手厚い愛情を注がれて、最初は抵抗していた主人公も心をわずかに許すように。


 とはいえ、身体からオイルの母乳が出て、腹もみるみる大きくなる。

 妊娠を、だんだん隠しきれなくなっていく。

 だが、車の子どもだなんて自分でも信じられない。


 腹をけってくる子どもにニヤニヤしつつも、主人公は年老いた消防士を捨てられない。

 鉄に取り憑かれつつも、人間性を失わない。

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