第3話 迷い
男は迷っていた。
男の中でその子の存在があまりに大きくなっていたからだ。
しかし最初に考えていた通り、その子のことが好きというわけではなかった。
でもこんなに仲良くなってしまったから今更男女の問題を掘り返し、関係に決着をつけたくはない。
男の中でも失いたくない気持ちが大きくなってしまったからこそ、"好きじゃない"を理由にさよならが言えなくなってしまった。
"好きじゃない"が"嫌いではない"のだ。
男が迷っている時だった。
その子は「あなたにとって私ってどんな存在なのかな?」と訊いてきた。
ずっと男が答えを探し続け、迷い、そして未だにわからない内容そのものだった。
男は答えられず、暫くの間口を開けずにいた。
男はしばらく考え、「いきなりどうしたんだよ? そんな真剣な顔で」と茶化すように訊き返した。
その子はどこか悲しげに微笑んだような表情を見せると「なんにもないよ」と言って、普段の彼女に戻った。
男は心のなかでホッと息をついた。
しかしその日以降、その子から連絡が返ってくることはなかった。
男はあの質問への答えを間違ったんだと後悔した。
そしてずっと迷ってはぐらかしていた自分自身を呪った。
あの時なんて言えば良かったのだろうか。
好きだと嘘を言えば良かったのか? それとも好きじゃないと言えば良かったのか?
男はいつまでもいつまでも結局答えがわからなかった。
そんな愚かな男のお話。
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