第20話
「えぇっ!?」
「この街を、この街に生きる人々を。そして、この街に仇を成す者も、みんな、愛してくれ」
「……あ、あー!そっちですか。うーん、いや、敵を愛するのは……さすがに」
そう言って、深刻そうな面持ちで俯くペテロ。
この年で、ギルドをほとんどひとりで切り盛りしている少女だ。
例えば、魔人に殺された両親の代わりにギルドを運営しているとか、そんな事情があってもおかしくない。
「…私は君の心にあるビューティを知っている。そのビューティならばきっと、私の言った言葉の意味がわかる日が、きっと来る」
「……はい」
「すぐにとは言わない。ただ、この街にひとつでも愛とビューティを知らせたのなら、それでいい」
私は満足して、そこから立ち上がった。
「クリストスさん?」
「この街でできることは終わった。次なる地を目指す」
「次なる地って…」
「ちょうど行き先ももらったしな」
「い、1日くらい休まれては…」
「いや、不要だよ。このステータスだ。睡眠はもうとっくに必要ない」
私の胸には、引き続き使命感の炎が灯っている。世界を愛で包む、ラブ・ラッピング作戦の炎だ。
「…行かれるんですね」
「ああ、行ってくる」
まずは聖都。事が終わったらまたこの街に戻り、あの魔人を探して話をしよう。
「やることは山積みだが、まずは手元の問題から」
宴の音に後ろ髪を引かれる思いだが、立ち止まっている時間が惜しい。
「クリストスさん、待ってますね」
「ああ」
何年経っても、帰る故郷があるというのは心強いものだ。どこへ行っても、心はきっとどこにもいかない。
「さぁ行こう。聖都ヒエロソリュマへ」
私は、誰へでもなくそう宣言していた。
「行ってらっしゃい、クリストスさん」
全然聞こえてたわ。
何か恥ずかしくなってきた。
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