第4話
「いらっしゃ……なんだいあんた」
「こんにちは、ビューティ」
露店のおばちゃんに声をかけてみた。
商売をしている人から声をかけられるなんて久しぶりだ
笑い方なんて忘れてしまったな。こうだったか。
「び、びびゅ、びゅビューティですね?」
「ひいぃ!!警備員さーん!!」
鎧に身を包んで剣で武装している警備員がやってきた。
「どうしました」
「この人、変なんです」
じ、と警備員が私を見つめる。
大きなガタイをした強面の警備員へ、私は多分にっこりと微笑んだ。
「びびびゅびゅ、ビューティだな?」
「……あぁ」
そして警備員は頷いて、露店のおばちゃんにこう言った。
「白魔道士は、みんなこうですよ」
私はうんうんと頷いた。
白魔導士はみな私のように清廉潔白で、世界を愛しているということだろう。
「理解できないわ」
おばちゃんはくたびれたように首を振った。
「それはいけない」
私は思わずおばちゃんに詰め寄り、肩を掴んだ。
「世界はビューティ。それを知らないのはノットビューティ。私が、愛を教えてしんぜよう!露店のおばちゃん!!!んんっ、ビューティビューティビューティビューティビューティ……」
「ひぃぃいいいいい!!!?」
警備員が私の背中を掴んで、宙ぶらりんにさせてきた。
「警備員さん、警備員さーん!」
「大丈夫、大丈夫です。白魔道士なら害にはなりません」
「そうだ、大丈夫だ。受け入れるんだ、世界の愛を!」
そのまま、私は愛を伝えられないまま露店から引きずり出された。
「もう誤解されるようなことをするなよ」
と、警備員は簡単な敵を倒した後の武闘家のように、手をパンパンと払った。
「あんたには、立派な四肢がついてるんだからな」
警備員はそう言い残し、去っていった。
その言葉が、私の耳にどうにも残った。
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