第4回 従者枠1 (現代ドラマ)
「わたしをお嫁さんにしてください」
俺は今、プロポーズされている。
それも、10歳の小学生に。
俺は18歳の大学生で確かに結婚ができる年ではあるが、問題はそこじゃない。
相手は近所に住む小学生の女の子で、名前はみな。
同年代の子より大人っぽく、あまり気が合わず友達が少ないと聞いている。
少し前から一緒に遊ぶことが多くなったが正直なぜこんなことになっているのかわからない。
相手は子ども。だから、はぐらかせばこういうときだいたい覚えてないとか子どもの言ったことだからと普通は乗り切れる。
だが、今回は違う。これでは、乗り切れない。
なぜなら、彼女にあらかじめ釘を打たれていたから。
数分前に遡る。
「ねえ、お願いしたら聞いてくれる?」
少女は俺に不安そうな顔でそう言った。
「俺にできることならなんでも」
その言葉を聞いて、少女の顔がぱあっと明るくなった。
「じゃあじゃあ、あれ買ってあれ」
少女が指を指した先にあったのは駄菓子屋。
駄菓子屋自体を買ってくれと頼んでるのかと一瞬思ったが、さすがに子どもの思考ではならないと思い俺は好きそうな駄菓子をいくつか買って渡した。
少女はまだ物足りないような顔をしていた。
「他にあるか?もっと良いものあるでしょ」
俺はついそう言ってしまった。
無茶なお願いが飛んでくるとはつゆ知らず。
少女は言う。
「今から言うお願いをもしお兄さんが叶えてくれなかったら、私はお兄さんを殺します」
そして、今に至る。
「えっと、なんでそうなったの?」
回想をしてもなお理解出来なかった俺は少女に状況を訊いた。
「わたしがお兄さんのこと好きだからです」
あれだよね。子どもの言う好きってLIKEであってLOVEではないやつだよね。
「もちろん。らぶの方の好きって意味ですよ?」
この子、俺の思考読んだのかな?怖いんだけど。
「みなちゃん、まだ10歳だから結婚とかできないよ」
「じゃあ、できる年になるまで一緒にいてくれませんか?」
それは結婚を前提に付き合ってくださいという告白かな?
「どうしますか?死にますか?」
俺はとんでもない二択を迫られている。
仮にこの子と結婚を選んだ場合に社会的に死ぬことになる。
一方これを回避するために断れば物理的に死ぬことになる。
少し考えた俺はこう答えた。
「じゃあ、今すぐに結婚はできないから従者みたいに住み込みで働くのはどう?」
社会的に死ぬ方を選んだ。
すべての物事は命あってのことだから。
それにこの子に罪を犯させたくはなかった。
俺は一生この子からは解放されないんだろうなぁ。
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