第3回 幼馴染風枠(現代ドラマ)

「ねぇ、たかし!今日はどこいく?」

 僕の名前はたかし。高校1年生。

 こっちは、彼女というわけではなく自称幼馴染のありさ。

 自称というのは、本当は小学5年からの付き合いなのにありさはさも幼稚園から一緒ですみたいな雰囲気で絡んでくる。

 さらに、実際友達にも僕たちの関係を幼馴染と言っている。だから、自称だ。

「どこにも行かないよ。さっさと家に帰りたい」

「えー、そんなこと言わないでよー。私たちでしょ?」

 ねーねーと突っかかってくる。

「いや違うし」

 さっと彼女の言葉を否定し、帰ろうとする。

「じゃあ、勝手についていく」

 勝手に勝手についていく宣言をしたありさ。

 正直ここまで家路を邪魔されると鬱陶しくなってくる。

 本当に僕たちの間には何もないのだ。

「好きにしろ」

 とりあえず、勝手についてくるだけなら問題はなさそうなので許可はするが絡んできた瞬間に消えてもらえばいいと考えた。

 僕は黙々と家へと向かう。

 それからずっと空気を読んで同じように黙々と僕の後ろについてきていた。

 あんなにうるさかったありさが嘘のように絡んでくることはなかった。



 そして、平和に僕の家まで帰ってくることができた。

 ありさはというとただ、後ろにいるだけ。

 少し妙だったが気にすることなく家へと入った。

「おっじゃましまーす」

 入ったあとに後ろからそう聞こえた。

 僕は後ろを振り向いた。

 そこにはありさがいた。

「ちょ、なんでうちに入ってきてんだよ」

「いいじゃん、ついてっていいって言ったじゃん」

「それは帰り道だけ!ありさは自分の家に帰りなよ」

 そう言って彼女の肩を持ち、彼女を反転させお帰り願う。

 すると彼女は急に僕を手を振り払い、涙目の顔をこちらに向けた。

 そして、玄関前で彼女はこう言った。


「あんたは本当に私の幼馴染じゃないってことくらいわかってるわよ!私がぼっちじゃ何されるかわからないじやない。でも、あんたといればそれを回避出来た。都合が合わなくてもあんたのせいにできた。あんたみたいなのが幼馴染なんてて言われても腐れ縁だからって笑っていられた」

 僕は急にこんなことを言われ、理解が追い付かなかった。

 それでも、彼女は涙を零しながらささやくように言葉を続ける。

「でも、もうだめ。一緒に居られない」

 そう言って、彼女はどこかへ走り去った。

 そのまま彼女はこれ以降、僕の幼馴染のふりをしなくなった。

 それどころか関わることすらなくなっていった。

 僕は何か大きな物を失った気がした。

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