第2話 一人がいいの?二人がいいの?
登場人物 二人目 会社員25歳「6階さん」
★★
私は会社員で、お客様からの問い合わせの多い部署に勤めている。担当制で夜遅くまで会社に残らなくてはいけない。まぁでも、電話がなければスマホを眺めているか雑誌を読んだりしてそこにいるだけなんだけど。
それでもこの会社を選んだのは、社員がほとんど女性だから。私は女性だけど女性が恋愛対象だから。変に男性に口説かれる環境の方が気を遣って疲れる。
今は恋愛はしていない。そもそも、どうやったら女性と付き合えるんだろう?
最近、ちょっとしたことに気づいた。6階にあるオフィスから外の通りを窓から見ると、21時くらいにたまに陸橋にいる人がいる。ラフな服を着た女性だ。いつもちょっと周りを気にしながら缶ビールを取り出して飲んでいる。
「あ、今日もいる。この辺に住んでいる人かな。」
シルエットがなんとなく私の好みの人なんだ。顔は遠くてそんなによく見えないけれど。
「陸橋さん、こんばんは。」
見かければいつの間にかそう独り言で挨拶するようになっていた。
たまにこっちを見ているのかと思ったことがある。でもいつもじゃない。あとで気づいたけれど、あの人はお月見をしているんだなと思った。たまに私がいるビルの上に月が出ているんだろう。私を見ているわけじゃない。そうよね、私をみているわけない。私はずっと見ているのにな。
そう思うと、なんとなく「私をみてくれれば良いのに。」と感じるようになってしまった。
「こっち向いて。こっちだよー。」
「知らない人にそんな風に思われているなんて、気づいてないね、陸橋さん。」
陸橋さんはたまにイヤホンで音楽を聴いている。誰もいないと思って体がノリノリの時がある。
「かわいいなぁ。」
「隣で一緒にお月見したいな。」
だけど私が帰る頃にはいつも陸橋さんは先にいなくなっている。
「あ、なんか。会いたい気持ちがこみ上げてきちゃったな。」
いつもこんなことを考えるようになってしまって、本当にあそこに会いに行ってしまおうかと思い始めた。
待ち伏せしちゃおうかな。夜勤じゃない日なら、、先にいればおかしくないよね?
あそこで、二人で並んでみたい。顔をよく見てみたい。迷惑かな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます