【GL】二人がいいの 陸橋さんと6階さんの話

葉っぱ

第1話 一人がいいの

 登場人物 一人目  会社員27歳「陸橋さん」


 ★


 職場から自宅まで電車で片道40分、混み合う中で息を最小限に抑えてつり革に掴まる。ただでさえ仕事で疲れているのに、通勤でさらに人混みの雑音に気分が滅入る。


 比較的、都心に住んでいる。25歳で転職して、自宅から山手線で真反対の職場を選んだ。


 山手線は緑だけど、自然の緑にはあまり触れていない。


 自宅に戻るのはいつも20時は過ぎる。仕事の定時は18時。なぜか定時で帰らずに仕事をしているフリをする、みんな。やってます感を出したいのだろうか。


「もっと効率よくやろうよって。」


 自宅に戻って軽く食事を済ませると、いつも缶ビールや甘めのお酒を1本飲む。そんなにお酒が好きなわけではないけど、息抜きがちょっと欲しいだけ。


 どこにも行く予定なんてない。恋人もここしばらくいないし、友達と遊ぶとしても週末じゃないと疲れるし。


 でも私はさっと楽な服に着替えて外に出る。3日に2回くらい、気まぐれで行く場所がある。高層ビルとまではいかないが比較的大きめのビルが建ち並ぶ大通りまででる。そこにある陸橋が好き。


 時間的に人が少なくて割と静か。陸橋にはほぼ誰も来ない。缶ビールを忍ばせるように持ち歩き、陸橋に上がってそこで飲む。車のランプがキラキラしていて綺麗。星も少しは見えるし、特に月があればじっと見ている。毎日のリセットに良い。


 人疲れだよね。この一人の時間が良いの。別に病んでるわけでもないけどさ。病むようなこともない。ただ楽しいこともそんなにないだけ。


「あ、今日って満月?」


 月が丸い。いつもより大きく見えるし。スマホで検索してみると、やっぱり今日は満月だった。なんちゃらムーンって書いてあったけど、そこまで気にはしない。


「はぁ~、綺麗だなぁ~。」


 15分、長くても30分。ただそこにいるだけ。外の空気を吸って、キラキラしたものを眺めて、気分がリセットされたら家に帰る。


 ゆっくりお風呂に入って、テレビを見て、また明日に備えて寝るだけ。


「満月は完了のときだっけ?そうね、このルーティンも完了して、もう少し楽しい日常が欲しいよ。」



 やっぱり、恋かなぁ~?


 私は女性が好きなのよ。だからちょっと出会う機会がないというか。出会ってビビってきて、そこから始まるってあまりない。大体、相手の話題は男の話だったりして。


「次に出会うなら、ずっと一緒に居られる人が良いな。」 




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3話あります。

今日から3日間、18時にアップします。

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