第55話 絶対零度、ぷるんコーンスピナー
「「「グアアアア!!!」」」
ハイエナっぽいモンスター三匹は俺に襲いかかる。
「っ!」
いくら武器を持っている俺でも三匹に一気に責められるとなると打つ手がない。
なので俺は後ろに下がってしまった。
「がああ!!」
「ぐるるる!!」
「あああ!」
俺の逃げる姿を見たモンスター三匹は目を細め、口角を吊り上げながら唾を垂らす。
どうやら俺が逃げたことで自分より俺を下だと判断したらしい。
「いひひひ」
「ひひひひ」
「ひははは」
こいつらは奇声をあげて、俺を嘲笑っている。
不気味だ。
とても不気味だ。
俺は鑑定を発動させた。
ーーーー
名前:異世界ハイエナ
説明:異世界に生息するハイエナ。群れを成して行動することを好む。他のモンスターの子供を狙って食べることを好む。
レベル:37
属性:土
ーーーー
「……」
燃えるミミズと比べたら大したことないが、レベル6の俺からしてみれば相当強い。
「ぷりゅん……」
冷気を放ち続けるぷるんくんは俺を心配そうに見つめる。
ミスリルソードという立派な武器を持っているにも関わらず俺の足は動いてくれない。
すると、
「があああ!!」
異世界ハイエナたちのうち一匹が俺に体当たりしてきた。
「うあっ!」
俺はあっけなく倒れてしまう。
そしたら残りの二匹の異世界ハイエナも俺の上に乗っかり前足で俺を殴り始める。
「うっ!」
幸い、防御膜のおかげでダメージを受けることはない。
「ぷるん!!!!!」
燃えるミミズを倒すためのスキルを使おうとしているぷるんくんは目を大きく開けて叫んだ。
強くなるとぷるんくんに向かって啖呵切ってたのに、こんな有様か。
「うひひひひ!!!」
「ぶへへへへ!!!」
「うえへへへ!!」
「……」
「ひひひひひ!!!」
「へへへへへ!!!」
「えへへへへ!!!」
「……」
『パシリならパシリらしく虚栄なんか張るな。Fランクのモンスターもろくに倒せないくせに』
『そうだ!くっそ貧乏庶民風情が身の弁えろっつーの〜』
「……」
クソ……
『クズの上に嘘までつくか?本当に死んだ方がマシかもしれんな。ちょっと可哀想だから飼い殺しって感じでパシってやったのに、マジで潰すぞ。お前なんか潰してもこの学校見向きもしないからよ』
ハイエナどもめ……
ぷるんくんと一緒に強力なモンスターを倒さないといけないのに、俺はこんな雑魚にやられっぱないか。
そんなの……
俺が絶対許さない!
俺は力をこめて異世界ハイエナ一匹を蹴り上げた。
2メートルほど飛んだやつのことが心配になったのか中間二匹が俺から離れる。
そして、三匹は
「「「ぐるるるる!!!」」」
殺気を漂わせ、牙を向けながら俺に突っ込んでくる。
俺を見下しての行動だ。
自分は強くて、俺は弱い。
そんな固定観念が奴らを支配している。
だとしたら
少なくとも、雑魚は自分の手で倒せるほどの人間にならないとな。
ぷるんくんと花凛に格好いい姿を見せるんだ!!
「はああああ!!!」
俺はミスリルのソードを握りしめ、大きく振るう。
「きゃああん!」
「くへえええ!」
すると、二匹の異世界ハイエナは俺の攻撃を受けて倒れてしまった。
ミスリルのソード。
実に軽く切れ味も抜群だ。
もう動かない二匹を見て残りの一匹が俺を睨み、
口角を吊り上げ、ぷるんくんの方へ走る。
どうやらスキルを使おうとするぷるんくんを攻撃するらしい。
怒りが込み上げてきた。
俺が殴られるのは構わないが、
ぷるんくんを苦しめる奴は
誰であろうと俺が絶対許さない!
「ぷるんくんに触れるな!!!」
俺はぷるんくんを攻撃しようと躍起になっている残りの一匹を追いかけ、剣のフラー(平べったいところ)で奴の頭を思いっきり叩いた。
「きゃふん!!」
倒れた異世界ハイエナに俺は告げる。
「調子に乗るなよ」
俺の言葉を聞いた異世界ハイエナはやがて立ち上がり、身震いする。
そして
「ひい!!ひいいいいい!!」
大声で不気味な音を出す。
すると、五匹の仲間が俺のところへやってくる。
「ぷりゅん……」
ぷるんくんは心配そうに言うが、俺はぷるんくんを見て口を開く。
「ぷるんくん、心配するな。安心してスキルに集中してくれ。俺が……ぷるんくんを守る!」
「ぷ、ぷりゅりゅん……ぷるん!」
ぷるんくんは目を潤ませながら頷く。
「よし……やろうか」
それからと言うもの、俺はハイエナどもを倒し続けた。
レンさんたちも死に物狂いで燃えるミミズがぷるんくんを攻撃できないようにしている。
そして時間が経ち、
「ぷるるるんん!!」
どうやらスキルを使うための準備が整ったようだ。
「ぷるんくん……」
ぷるんくんの後ろには冷気が漂う光りが浮かんでいるが、やがて小さな点となり、ぷるんくんはその点を燃えるミミズのところへ投げる。
「ぷるっ!」
その点は燃えるミミズの上で爆発した。
爆発と同時に凄まじい風が吹き、地面はあっという間に凍りついた。
この広い荒野は辺り一面氷である。
砂漠だったここに、まるでシベリアやエベレスト山脈を彷彿とさせる寒波が襲う。
寒い。
この寒い中、
目の前には
100メートルを悠に超える燃えるミミズが凍っている。
燃える表面には真っ白な氷に覆われており、レンさんを含む戦士たちはいつしか地面に降り立ち、この物々しい光景を見ながら驚愕している。
「ああ……」
「馬鹿な……」
「こんなのありかよ……」
「俺たちをずっと苦しめてきた燃えるミミズが凝ってしまった……」
「あり得ない……」
現実をまだ受け入れてない戦士たち。
俺は早速鑑定してみることにする。
ーーーー
スキル名:絶対零度
説明:対象に絶対零度に匹敵するほどの温度で凍らせることができる。水属性最上位スキル。レベルが高いほど凍らせられる面積が増え、威力が増す。スキルを使うのに時間がかかる。
ーーーー
「絶対零度……すごい……」
と、俺が言っていると、足に柔らかい感触が伝わってくる。
俺が下を向くと、ぷるんくんが手で俺の足を突いていた。
「ぷるんくん?」
「ぷるっ!」
ぷるんくんは俺を見上げながら自分の額にツノを生えさせた。
「つ、ツノ!?」
「ぷるるん!」
ぷるんくんはドヤ顔を浮かべ、額に生えたツノに魔力を流した。
すると、ツノはミスリルになる。
「ミスリルのツノ!?」
ぷるんくんはうんうんと頷いたのち、凍りついたミミズの方へ歩く。
そして
ぷるんくんはジャンプをし
「ぷるっ!」
スライム大砲を使い高く飛び上がる。
やがてミミズの頭と同じ高さになると、
「ぷるるるるるるるるるる!!!!!!!!!」
ぷるんくんは回転する。
縦方向に高速回転するぷるんくん。
ぷるんくんのツノとミミズが接触する。
ぷるんくんの高速回転するミスリルのツノはミミズを切断してゆく。
「ぷるるるるるるるんん!!!」
「一体……どういうスキルだろう……」
「あんな攻撃は初めてみる……」
「ぷるんさま……」
ミミズを上から切断するぷるんくんに、レンさんを含む戦士たちは敬意を表している。
真っ二つになったミミズ。
俺は……
着地したぷるんくんを指差して感極まって叫ぶ。
「あれは……ぷるんコーンスピナー!!!!!!!!!」
「「「ぷるんコーンスピナー!?!?」」」
絶対零度によって凍りついた燃えるミミズは、ぷるんコーンスピナーをもろにくらい、倒れた。
燃えるミミズの体からは真っ二つになった巨大な円形のコアが転がり落ちた。
「た、倒した……」
レンさんは死んだ燃えるミミズを見て感情が込み上げたように顔を顰める。
そして高らかに宣言するのだ。
「長年、俺たちをさんざん苦しめてきたこの憎き燃えるミミズを!!!!!!ぷるん様とタイシ様、そしてええ!!誇らしいエルドラドの戦士である我々が力を合わせてえええ!!!倒したあああ!!!!」
レンさんは右手を突き上げる。
レンさんの目からは一糸の涙が頬を伝い、地面に落ちる。
その光景を見た他の戦士たちも涙を浮かべ、レンさんと同じく右手を突き上げ、
「「「オオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」」」
ここに猫族は13人しかいない。
だけど、この雄叫びはまるで500人の歓声に勝るとも劣らない。
本当によく頑張ってくれたと思う。
悦に入っている彼らを見ていると、ぷるんくんが俺の方へやってきた。
まだミスリルのツノが生えたままた。
ぷるんコーンくん。
俺がぷるんコーンくんにサムズアップすると、一つ不思議な点を発見することができた。
ぷるんコーンくんは口に何かを咥えている。
「ぷるんくん?その口にあるものは何?」
と俺が小首を傾げていると、ぷるんコーンくんは俺の方へ行き、手でその小さなものを握って俺に丁寧に渡した。
俺はそれをもらって念入りに観察する。
タネのような見た目で全体的に赤い。
俺は早速鑑定を使ってみる。
ーーーー
アイテム名:火の種
説明:火属性を極めた上級モンスターを倒したらごく稀に出てくる種。
効能:食べたものに火属性が付与される
ーーーー
「なっ!?」
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