第32話 気合い入れろ!!そして、思わぬ人からの電話
翌日
夢の中
『たいちゃん!偉いよ!華月高校に合格できるなんて!!』
『父ちゃんは大志のことが誇らしいよ!』
『父さん母さん!俺……俺頑張ったよ!』
名門校華月高校に合格した時は本当に嬉しすぎた。
自分の努力が報われたのもそうだが、この喜びを分かち合える大切な人の存在が俺の心を満たしてくれた。
普段は厳しい父さんと母さんだが、この時の二人は俺の全てを受けれてくれた。
抱きしめてくれた。
背中をさすってくれた。
俺は嬉しすぎた。
だが、
『父さん……母さん……』
俺は親の遺影写真を見て、絶望に打ちひしがれながら泣いていた。
そして、向こうには
花凛と彼女の家族が幸せそうに語っている姿が見えてきた。
「……」
目が覚めた。
心が痛い。
でも、
「ん……」
布団によってあったまったぷるんくんの柔らかい感触が俺のお腹に伝わる。
俺はぷるんくんをひとなでして昨日のことを思い出す。
昨日は西山先輩に勝ったり花凛といっぱい話したな。
いろんな表情の花凛。
彼女はずっと俺を助けてくれたんだ。
幸せをいっぱい味わってくれ。
あと、昨日のぷるんくんすごかったな。
商店街を歩いてた時、豚骨ラーメン店で創業20周年記念大食いチャレンジをやっていた。
モンスターは挑戦できないが、あの時の店長さんは40センチほどのぷるんくんをなめていたため、挑戦させてくれた。
結果はぷるんくんの圧勝。
店長さんは呆気に取られたが、スライムがラーメンを食べる姿に惹かれた人々が店に殺到してた。
店長さんは「大出血サービスだあああ!!!」とか言って、ぷるんくんがお腹いっぱいになれるまでラーメンをくれた。
ラーメンを吸引するぷるんくんの姿もとてもかわい可愛かったな。
人々に囲まれてラーメンを食べるぷるんくんの姿はぷるんくんコレクションにガッチリ追加しておいた。
今はすやすや寝息を立てて俺のお腹の上で寝ているぷるんくん。
俺はぷるんくんの十字傷を優しく撫でたのち、スマホを取り出してnowtubeを立ち上げた。
すると、おすすめ動画に俺の目を引くものがある。
『Eランク探索者がAランクモンスターのアイテムを企業に販売!?窃盗罪で逮捕』
動画の内容は、俺は初めて高原さんのとこに行った際に聞いたニュースと似ていた。
要するに、ランクの低い探索者が高価なアイテムを盗んで、それを業者に売り飛ばすと。
だから、底ランクの探索者がハイランクのモンスターからしか得られないアイテムを持っている場合は要注意だと。
「……俺は正当なやり方でやっているのにな」
改めて高原さんには感謝しかない。
このお兄さんは俺を疑うことなく信じてくれている。
でも、ダンジョン協会はSランク以上のモンスターに関する依頼は取り扱ってない。
やるとしたら、ダンジョン関連企業しかないけどな。
でも、Fランクの俺なんかが行っても追い返されたり、不利な条件での奴隷契約を持ちかけてくるのが一般認識だ。
俺がもし、Aランクで人脈や権力があれば話は別だ。
今の状態でレッドドラゴンの鱗とか業者に出しても、きっと不審がられる。
世の中はそういうものだ。
ランクを上げようにも、問題だらけだ。
昇級試験は年に2回。
しかもFからAランクに一気に昇級できない。
順繰りにFからE、EからDみたいな感じでやるしかない。
昇級試験はいろんな科目が存在するため数日かけて行われるわけだから、試験期間中には金が稼げない。
ぷるんくんを主人にして、この子を養う義務を負っている俺としては割に合わない。
なので、高原さんのところに行ってAかBランクの依頼の中で金がいっぱい稼げそうなやつをこなすのがベストだ。
俺はすやすや寝ているぷるんくんを今度はベッドの真ん中にそっと置き、布団を被らせてベッドから降りる。
そして収納ボックスを開いた。
収納ボックスに手を伸ばした俺は最上級ダンジョン松茸を取り出した。
もうこれを食べれば4本しかの残らないのか。
だが、
俺は迷いなくそれをパクつく。
「うおおおおお!!!おいしい!!力も漲ってくるうう!!!!」
すげー効果だ。
美肌、滋養強壮、疲労回復に効果があるから、もし売れば結構金になるんだろう。
最上級ダンジョン松茸はSSダンジョンでしか入手できないため、ネットを漁っても情報が出てこない。
俺がちょっとした優越感に浸っていたら、ぷるんくんを覆っている布団が揺れ出した。
やがて、布団から抜け出したぷるんくんは眠たそうに俺を見ている。
「あ、ごめんよぷるんくん。大声出しちゃって」
「ぷりゅ……」
相変わらず眠いぷるんくん。
なんか俺だけ食べるのはずるいな。
なので、俺は早速収納ボックスからもう一本の最上級ダンジョン松茸を取り出した。
そしてそれをぷるんくんめがけて、
「ぷるんくん!これ食べな!!」
「ぷる!?」
ピッチャーのように振りかぶって最上級ダンジョン松茸をぷるんくんに投げた。
最上級ダンジョン松茸は凄まじい勢いでぷるんくんの体に飛ぶ。
ペチャ!
ぷるんくんは俊敏に最上級ダンジョン松茸を体内に入れた。
吸収される最上級ダンジョン松茸。
それと同時に、
「ぷるううううううううううん!!!!!!」
眠たそうにしていたぷるんくんが勢い余って俺の前にやってきてぴょんぴょん跳ねる。
なんか光沢も出てる気がする。
「おお!!ぷるんくん!!力が漲ってくるだろ?」
「ぷりゅうううううん!!」
「今日もいっぱい稼ぐぞおおおお!!!」
「ぷるん!!!ぷるんぷるん!!!」
どうやらぷるんくんは『私、がんばるううう!!』と言っているようだ。
ぷるんくんは勢いよく数回飛んだのち、いきなり俺のお腹にペチャっと引っ付いた。
そして、
ぐううううううううううう
「あ、ご飯作るね」
「ぷりゅん!」
いくら美肌、滋養強壮、疲労回復の効果があるとはいえ、お腹は空くようだ。
X X X
俺とぷるんくんは一生懸命依頼をこなした。
上級ダンジョン草の採取依頼がほとんどだったが、危険なBランクのモンスターの討伐をしたり、Aランクのオーガキングを倒して牙は買い取ってもらったりと。
あと、日本のいろんな店を巡り味探訪したり、俺が直接作ってあげたりと。
本当にやりがいのある時間を過ごした。
金はいっぱい稼いだけど、なかなか美味しい肉を持つモンスターに巡り会えなかったので、日本の食べ物を主に食べた。
美味しいお店に行ったり、俺が直接作ったりと。
ぷるんくんに美味しいものを食べてもらいたいという一心で、食事代に糸目をつけることなく金をいっぱい使った。
でも、昔みたいな失敗はしない。
俺はぷるんくんの主人だ。
お金は計画的に使わないと。
そんなこんなで、数日が過ぎた。
「依頼の報酬53万円な」
「ありがとうございます!」
「臼倉!」
「ん?」
「予めそっち系の人たちにはこっぴどく警告はしておいたから問題はないと思うけどよ、もし変な業者に声かけられたら絶対俺に言うんだぞ。絶対な」
「は、はい!」
「じゃな!スライムくんも!」
「ぷるん!」
上級マナ草の買取代金を高原さんから受け取った俺はぷるんくんと前回のラーメン屋で夕食を済ませたのち買い物をして家に帰った。
中に入ってからは早速ぷるんくんとお風呂に入る。
「ぷるんくん!今日は桃の炭酸風呂だあああ!!!」
そう唱えて俺は桃の香りがする発泡入浴剤数個を入れた。
すると、炭酸が俺たちの体を覆う。
「んんんんん!!!!!」
ぷるんくんは目を『><』にして気持ちよさそうにし炭酸風呂を楽しんでいる。
風呂を済ませた桃の香りを漂わせる俺とぷるんくんはベッドで横になった。
たまに怖い夢を見てたり謎のもどかしい気持ちを感じるが、この生活も悪くない。
いや、むしろ昔と比べたら天国すぎる。
毎度毎度いうが、俺にはぷるんくんがいる!
さっぱりした状態で眠ろうとした瞬間、
電話がかかってきた。
「え??だれ?」
知らない人からの電話だ。
俺は怖くなった。
でも、出ないわけにはいかない。
「もしもし」
『臼倉くん、元気?』
電話を開けてきたのは女性だった。
「え?どなた様ですか?」
『ふふ、私よ』
いや、おれおれ詐欺じゃあるまいし。
ん?
もしかしてこの艶かしい声は……
「もしかして彩音さん?」
『ふふ、いつも私の娘がお世話になってます』
「い、いいえ!むしろ世話になってるのは俺ですよ!」
『大志くんって呼んでいいかしら?』
「はい!」
『大志くん、私明日退院するの』
「おお!おめでとうございます!」
『ありがとう。でね、早速だけど、私と主人で大志くんの家にお邪魔していいかしら』
「え、ええええ!?!!!?」
『ごめんね。もっと早く言いたかったのに……病院でちょっとした問題があったの。予定は大志くんに合わせるわよ』
「なななななんで、こんなむさ苦しいところに!?」」
俺が問うと、
「大志くんのことが知りたいからよ」
追記
次回はご対面
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