第15話 ダンジョンでの食材
悲壮感漂う表情の俺は昭和時代を思わせる古いママチャリを走らせ、SSランクのダンジョンに向かっている。
前かごに入っているぷるんくんもいつにも増して気合いが入っているようだ。
自転車の揺れによってモチモチしたぷるんくんの体も一緒に揺れる。
やがてダンジョンに到着した俺とぷるんくん。
中に入る前にぷるんくんは俺にいくつものスキルを使った。
ざっくり説明すると以下の通りだ。
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防御膜(最上)
説明:攻撃を防ぐ効果がある。性能はレベルの高さに比例して増加し、自分の属性と同じ属性スキルの攻撃なら他の属性スキルよる攻撃を受けるより1000倍ほどよく防いでくれる。無属性最上位スキル。
殺身成仁(最上)
説明:相手が受けるダメージを自分に受けさせる効果がある。最上であるため、殺身成仁にかかった相手の受けるダメージの99%を自分が受けることになる
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たとえ防御膜が破れてモンスターから俺が攻撃されたとしても、そのほぼ全てのダメージをぷるんくんが受けるわけだ。
申し訳ない気持ちもあるが、いつか俺も強くなって、ぷるんくんと一緒にダンジョンで無双しようと心の中で決めた。
「それにしてもやっぱり緊張する」
俺はダンジョンを見回しながら小声で言う。
ここはモンスターが現れない入り口にしか照明がなく、奥に入るにつれて未開の地と化す。
ところどころダンジョン内部の魔力が集まってできた光るボールのようなものが俺たちを微かに照らす。
「ぷるん……」
俺の隣で移動しているぷるんくんは俺と距離を詰めて歩く。
ぷるんくんは目力を込めて周りを警戒してくれた。
目の上の『\ /』にもっと力が入っている。
隣にぷるんくんがいることに安堵する俺に、ヨモギのような明るく光る草が視界に入った。
「あれって上級マナ草に似てるな」
知りたくなったので、俺は草のある隅っこに移動して鑑定を使ってみる。
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名前:最上級マナ草
説明:スキルを使用するための魔力を大幅に回復させることができる。上級マナ草より20倍以上の効果がある
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「に、20倍だと!?す、すごい……」
この前の上級マナ草の買取価格は一本あたり4000円だった。
単純計算だと、この草一本には8万円以上の価値があるということか……
ていうかこの草って近くに何本か生えているし……
前回来た時は端っこに生えている草なんか気にする余裕もなかったが、鑑定が使える今となっては調べ放題だ。
俺は近くに生えている最上級マナ草を数本摘んだ。
「めっちゃ光ってる……」
嘆息を漏らし、俺はこの草を収納ボックスに入れた。
5本摘んだから40万ってところか。
ダンジョン協会が買い取ってくれるかはわからないが、とにかく癌を治す花を探すついでに使えそうな薬草などがあれば素早く確保しておこう。
俺はまた周りを見回した。
そしたら青く光るキノコが見えてくる。
「おお……あれはなんだろう」
ひょっとしたら食べられるものかもしれない。
プリンくんの食欲を考えると、食材は大いに越したことない。
俺は早速光るキノコのあるところへ行って鑑定をかけてみる。
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名前:ダンジョン猛毒キノコ
説明:SSランクのダンジョンに生える猛毒キノコ。フグの毒であるテトロドトキシンより5000万倍強い。
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「ひいいいっ!危ないキノコじゃん!」
俺は怖くなり後ずさる。
「ぷるんくん!これは食べちゃダメなキノコだから気をつけた方がいいよ!」
俺は隣にいるぷるんくんに注意した。
だがぷるんくんは別に怖がる様子もなく、ダンジョン猛毒キノコをじっと見つめては
「ぷるっ」
迷いなくそれを体で飲み込んだ。
「ぷるんくん!!!!」
俺はびっくり仰天してぷるんくんを両手で持ち上げた。
「今でも遅くない!早くキノコを吐き出すんだ!」
俺はありったけの力でぷるんくんを上下左右に揺らした。
いくら最強スライムだとしても、フグの毒より5000万倍強い毒が体内に入ればやばいことになるんだろう。
だけど、
「ぷるん!!」
「ぷるんくん?無事なの?」
「ぷるん!ぷるん!」
気のせいかもしれないが、ぷるんくんは前より元気な姿だ。
不思議に思い、テイムしたモンスターの状況を示す鑑定を使ってみることにした。
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ぷるんくんの毒耐性が上がりました
名前:ぷるんくん
レベル:777
年齢:6歳
HP:299,999/300,000
MP:700,000/700,000
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「毒耐性が……上がったと?まさか、それを狙ってわざと食べたの?」
「ぷるっ!」
ぷるんくんはドヤ顔で頷いた。
おお……
しかも299,999だったHPがすぐ300,000になったしよ。
どうやら俺はぷるんくんをみくびっていたようだ。
俺は安堵のため息をついて、ぷるんくんを下ろしてあげた。
そしたらぷるんくんは俺を手招いて前に進む。
歩くこと数時間。
小さな洞窟の穴が見えており、そこを進むとある場所が現れた
「すごい綺麗……」
色とりどりの球状の光たちが宙に浮かんでおり、松っぽい木々を照らしている。
俺があまりにも美しい光景に見惚れていたら、ぷるんくんが松っぽい木に近寄って何かを加えて俺の方にやってきた。
微かに褐色の光を放つ傘が開いてないキノコである。
ん……
なんか小さなキノコを加えたぷるんくんの姿が妙に可愛いが、俺はそのキノコにも鑑定を使ってみた。
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名前:最上級ダンジョン松茸
説明:SSランクのダンジョンで生える最上級松茸。美肌、滋養強壮、疲労回復の効果があり、味が非常に良い。
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「おお……これは食べられるやつか……しかも松茸……」
松茸は高すぎるから一度も食べたことがないんだよな……
貧乏な生活を思い出して苦笑いしていると、ぷるんくんは手を生えさせ、最上級ダンジョン松茸を手に取り、俺に差し出した。
『このダンジョンには主人が食べられるキノコもいっぱいあるよおおお』と言っている気がした。
なので俺はそれを受け取り、一口食む。
「っ!!な、なんだこれは!!!美味しいいいいい!!!ちょ、本当に美味しいだろ……美味しすぎて語彙力がおかしくなった!!なんだこの香りは!!」
味だけじゃない。
なぜか力が漲る気がしてきた。
これまで結構歩いたので足が少し疲れたけど、これを食べた瞬間、ダンジョンに入る前より足を含め体が元気になった気分だ。
松っぽい木の周辺を見ていると、ぷるんくんがくれた最上級ダンジョン松茸が随所で見られる。
ぷるんくんが教えてくれた癌を治す花がある場所まで行くのにどれくらいかかるかわからない。
ぷるんくんに聞いても、時間の感覚が人間と違うのか、満足のいく返事をもらうことはできなかった。
なので、俺は今後に備えてこの最上級ダンジョン松茸を採取することにした。
「それにしても、モンスターが一度も現れなかったな」
そう。
不思議とモンスターが俺たちを襲うことはなかった。
ぷるんくんがわざとモンスターのいない場所だけを狙って俺を案内してくれているのかな。
ぷるんくんは6年間ずっとここで過ごしてきたからな。
だいぶここに地理には詳しいはず。
そんなことを思いながら俺は素早く最上級ダンジョン松茸を採っていく。
でも、急がないといけないので、最上級ダンジョン松茸は10本くらい採って早速ぷるんくんのいるところに戻った。
「ぷるんくん、もういいよ。行こうね」
「ぷる……」
「ぷるんくん?」
普段ならぷるんと跳ねて反応してくれるはずだが、今のぷるんくんは殺気を漂わせて俺の後ろを見つめる。
気になり、俺も振り返ったら
そこには
25メートルほどの巨大な水牛っぽいモンスターが怒り狂った顔で俺を見つめていた。
「な、なんだあれ……あ、」
あの水牛っぽいやつは見覚えがある。
「キングバッファローだ!」
「モウウウウウウウウ!!!!!」
昔、俺が迷子になってここにやってきた時、ぷるんくんはこのキングバッファローに狙われていた。
当時の俺はぷるんくんを抱えて必死に走ってなんとか逃げおおせたが、
そのキングバッファローと再会したわけである。
このSSランクのダンジョンには多くのキングバッファローがいる可能性がある。
だけど、こいつは6年前にあったキングバッファローと酷似していた。
「鑑定」
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名前:キングバッファロー
レベル:400
属性:地
HP:400,000/400,000
MP:30,000/30,000
スキル:体当たり、一撃必殺、ハイスピード
称号:暴虐の限りを尽くす牛の王
説明:SSダンジョンに生息するモンスター。非常に乱暴であり、敵と見做した対象には追いかけて強力なツノで倒さないと気が済まない体質。肉は非常に美味しい。
ーーーー
俺は足が震えてきた。
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