第四ノ怪「てんてん」

ある秋の終わりの寒い日に、灰色のコートを着た、四十代位の一人のサラリーマンが家路いえじを急いでいた。

男性が、近道で公園を通り抜けようとすると、公園の滑り台の陰で女の子がまりを付いていた。


「てんてん、てんまりてんてまり」



赤いワンピースを着た、女の子は歌いながら毬を付く、背丈から見て年齢は小学四年生位だろうか。しかし、滑り台が邪魔になっていて、顔が良く見えない。


もう夕方になっていて、だいぶ寒さもこたえる。

男性は、女の子を心配して一声掛けた。



「君、もう遅いから帰りなさい。お母さんが心配してるよ」

すると、女の子は何も答えずに毬付きを止めた。


女の子は、付いていた毬を拾い上げ、手に持った。

男性の方に向かって歩いてくる。

しかし、歩いて来た女の子には、頭が無くその毬はその女の子の生首だった。


女の子の生首はこちらを見て、「てんてん」と歌いながらケタケタ笑っていたと言う。

男性は、顔面が真っ青になってギャッと、短い悲鳴を上げて一目散に逃げだしたが、その時の記憶だけが抜け落ちていた。




-了-



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

おひさしぶりの怪談ばなしでした。

お読みくださり、ありがとうございます。


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