第五ノ怪「ずるずる~深夜の怪~」

 




 私は、深夜二時自分の部屋で、熟睡していた。

 すると、ドアを叩く音がした。

 私は目を覚まし、ドアの方を見る。

 すると、お母さんの声が聴こえて来た。



「ちょっと、ここを開けてちょうだい」

「なぁに~……こんな夜中に、もう明日でいいでしょ」

 と返すと、お母さんは大人しく階段を下りて行った。





 朝起きて、私は昨日のことをお母さんに聞いてみた。

「昨日、夜中に私の部屋に来たでしょ?夜中に来ないでよ。もう~」

 と少し、呆れ気味に言う。


 すると、驚くことにお母さんはこう、言った。

「えっ?私昨日、寝てたわよ」


「え……」

 私の顔からサーッと血の気が引いて行った。


「――じゃあ、あれは誰だったの?」

 

  そんなことがあってから、私は夜が来て、眠るのが怖くなった。

 今日の深夜も、“あれ”が来るのだろうか?

 目的は一体、そう考えると恐ろしくて居てもたってもいられなくなり、私は近所の神社へ出かけ、参拝をして厄除やくよけの御守りを貰って来た。



 気休めかもしれないけれど、何もないよりかはましかもしれない。





 ■





 そして、深夜。

 私が眠れない夜を過ごしていると、階段を上がる音が聴こえて来て、私の部屋の前まで来た。


「来たッ!」



 私は、心臓がドキドキと脈打ち、御守りを握りしめて祈り始めた。

 すると、お母さんの声が聴こえて来て……

「ここを開けてちょうだい。お話がしたいのよ」

 今度は、私は一言も返答を返さなかった。


 心の中で、帰って!この家からでてって!と強く叫びながら、御守りをさらに強く握りしめ祈る。

 

 するとそいつは、ドカンとドアを蹴り私が、ビクッと肩を震わせあまりの恐怖で泣き出しそうになっていると、お母さんではない声で一言。



『チッ……俺と同じにしてやろうと思ったのに』


 

 地獄の底から聴こえるような、野太い声でそいつは、そう吐き捨てると世にもおぞましい音を立てながら階段を降り、玄関から家を出て行った。



 奴は、それからもう、この家には戻ってこなかった。

 ただ、私はあの最後に聴いた音が事あるごとに思い出して、耳から離れなくなったんだ。


 衣擦きぬずれではない、何かもっと、嫌な何かを引きずるような音。


 ずる、ずるずる……ずるずるずる、と。



 終わり



 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


 おひさしぶりの怪談でした。

 ここまでお読みくださり、ありがとうございます。

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